2017年以降インデックス投資環境の改善が劇的に進みました。つみたてNISA制度の開始(2018年)も大きいですが、魅力的な資産クラスに超ローコストで投資できる、質の良い選択肢が増えました。その結果、米国株式、先進国株式、全世界株式に低コストで、少額から手軽に投資できるようになりました。
ではそれらのうち、どれが自分に一番合っているか判断に迷っている人もいることでしょう。これはむちゃくちゃ難しい問題です。
比較対象指数の選定
米国株式/先進国株式/全世界株式の比較をするのに、対象指数を決めないと収拾が付かなくなります。そこでこの記事の趣旨にふさわしい3指数(商品)を選びました。
米国株式インデックス
人気と商品性を考えると、ベンチマークはS&P500かCRSP USトータル・マーケット・
NYダウやNASDAQ100に連動する良い商品もありますが、この記事では米国株式に集中投資する商品として、スリム米国株式(S&P500)を取り上げます。
楽天全米株式とスリム米国株式(S&P500)の比較は次の記事で行っています。
先進国株式インデックス
この記事で取り上げるならスリム先進国株式になります。ニッセイ外国株式、たわら先進国株式と読み替えてもらっていいです。
全世界株式インデックス
楽天全世界株式登場前は、日本を含む全世界株式は不人気で売れないとされてきました。わずか数年で人々の好み・意識・流行は一変し、現在では日本を含む全世界株式の株式に時価総額比で投資する商品が人気です。
この記事ではMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動する、スリム全世界株式(オール・カントリー)を取り上げます。
楽天全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)の比較は次の記事で行っています。
投資対象地域と投資比率
次は投資対象地域とその比率です。
構成はシンプルです。どれだけ地域分散させるか?の三択です。
- 先進国株式=米国株式+米国と日本を除く先進国株式
- 全世界株式=先進国株式+新興国株式+国内株式
この比率は、時価総額比で変わります。絶好調の、成長が著しい地域は比率が上がり、低迷している地域は下がります。
リターン比較
比較期間を長く取りたいので、次の基準価額データを使います。
- 米国株式はIVVトータルリターンの運用コストを増量して生成した、仮想スリム米国株式(S&P500)を使います。
- 先進国株式は、eMAXIS先進国株式(本物)を使います。
- 全世界株式はACWIトータルリターンの運用コストを増量して生成した、仮想スリム全世界株式(オール・カントリー)を使います。
比較期間はeMAXIS先進国株式の設定直後を避けた、2009年11月16日から2021年3月31日までです。
まとめて比較
まとめて比較すると、米国株式の圧勝であることが分かります。
赤のラインが米国株式、緑のラインが先進国株式、青のラインが全世界株式です。直近10年程度は米国株式は絶好調で、他の地域にも投資した場合よりも高パフォーマンスでした。
米国株式と先進国株式の比較
次は米国株式と先進国株式の比較です。
青のラインは米国株式ー先進国株式です。平坦な時期もありますが、おおむね右肩上がりで推移しています。先進国株式は時々差を広げられ、それを縮めることができずに差が蓄積しています。
先進国株式と全世界株式の比較
次は先進国株式と全世界株式の比較です。
青のラインは先進国株式ー全世界株式です。右肩下がりの時期もあり、圧倒的な差はありません。2016年以降は互角か、わずかに先進国株式の方が有利でした。
米国株式集中投資か全世界株式に分散投資か
過去10程度の米国株式の好調さが今後も続くと考えて、米国株式に集中投資するか、教科書的な推奨にしたがって全世界株式に分散投資するかは、とても難しい判断になります。自分の投資期間において、どちらが良い結果を生み出すかはその時になってみなければ分からないからです。
先進国株式か全世界株式か
2017年9月に楽天全世界株式が登場するまでは、先進国株式は圧倒的な人気を誇っていました。現在では全世界株式の方が勢いがあり(資金流入額が大きい)、純資産総額で逆転されるのも時間の問題です。
先進国株式と全世界株式の間には、大きなパフォーマンス差はありません。よって投資対象地域の好みで選択すればいいと思います。僕は個人的な好みから、先進国株式を選択しました。
次は先進国株式と全世界株式の、投資対象地域とその比率です。
考え方は人それぞれだと思います。
- インデックス投資の教科書で推奨されている通り、日本と新興国も含めた全世界に幅広く投資したい。
- 分散投資が良いとは言われるけど、米国と日本を除く先進国への投資で十分だと感じる。
- 新興国は中国の比率が高いので、投資する気になれない。
誰にでも適用できる正解はないですね。
人気はスリム米国株式(S&P500)の圧勝
次はスリム先進国株式、スリム米国株式(S&P500)、スリム全世界株式(オール・カントリー)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。
赤のラインがスリム先進国株式、緑のラインがスリム米国株式(S&P500)、青のラインがスリム全世界株式(オール・カントリー)です。スリム米国株式の人気は圧倒的です。オール・カントリーは資金流入額を急増させており、ラインが大きく反り返っています。
結論
次に該当する方は、全世界株式がいいと思います。
- 米国株式集中投資より、全世界の株式に時価総額比で投資する方が好みに合っている。
- オール・カントリーや楽天全世界株式のパフォーマンスで十分満足できるので、米国株式集中投資に伴う高いリスクは避けたい。
- どちらかと言えば、無難な選択肢とされている方が安心できる。
- どの地域が成長するかは分からないので、新興国と日本にも投資したい。
次に該当する方は、先進国株式がいいと思います。
- 米国株式に集中投資するのはリスクが高すぎると感じるけど、新興国と日本にも投資することで、米国への投資比率を56%程度まで下げたくない。
- 米国+日本を除く先進国への投資で十分だと感じる。
次に該当する方は、米国株式がいいと思います。
- S&P500またはVTIへの投資が最適解だと思っている。
- 米国以外の地域に投資することで、パフォーマンスが劣後することには耐えられない。
- 過去10年程度の、米国株式が絶好調だった時代が続かないとしても、米国株式の未来に賭けたい。
まだスッキリしない場合は、腹落ちするまで調査するのがいいでしょう。
「世界分散」は誰にでもいつの時代でも有利な投資方法であることを保証してくれません。だから自分が生きている時代において、できるだけ後悔する可能性が低い投資方法を考えるべきです。でもそれは簡単ではありません。何年かいろんなものに投資してみて一番しっくり来るものを選べばいいかも知れませんが、その何年かとその後の10年、20年が同じ保証もありません。