インデックス投資

eMAXISシリーズの売上は今もeMAXIS Slimシリーズの運営を支えています

eMAXISシリーズが登場したのは2009年10月です。同じマザーファンドを買うだけなのに信託報酬が数分の1しかないスリムシリーズが登場したのは2017年2月でした。(商品によって登場時期は異なります。)その後、スリムシリーズは頻繁に信託報酬を引き下げましたが、eMAXISシリーズの信託報酬は変わらずです。

次は現在の税抜き信託報酬比較です。両シリーズに設定されている、同じマザーファンドを買うものだけを載せています。

現在の税込み信託報酬比較表

比率で言うとスリムシリーズは高いものでもeMAXISシリーズの42.5%、最安の先進国株式は15.5%です。これだけ差があるのに、基準価額の変動に関しては、受益者は同じリスクを負います。普通に考えればスリムシリーズを買った方がいいですよね。

スリムシリーズが登場した時、eMAXISシリーズの信託報酬を下げないで新シリーズの信託報酬を安くするという方針に、既存のeMAXISシリーズの受益者は失望と怒りをおぼえたようです。でもだからと言ってスリムシリーズは意地でも買わないと思うでしょうか。それはないでしょ。

eMAXISシリーズの受益者は、売却してスリムシリーズに乗り換えないまでも、新規投資はスリムシリーズに変更し、eMAXISシリーズはガチホするのが賢明でしょう。株価が暴落して含み益が減った時は、売却を伴う乗り換えのチャンスです。

ですから、eMAXISシリーズの受益者権数(総口数)は急激に減らないものの、基本的にそんなに増えるわけはないと思いませんか。スリムシリーズに超廉価版があるのに、まだeMAXISシリーズの総口数が増える(資金流入が継続する)としたら、コスト意識の低い人が賢明ではない買い物をしていると思いませんか。

現実はかなり違います。良く、同じ資産クラスに投資するインデックスファンドで、信託報酬が大幅に安い商品が登場すると既存商品を「死んだ」とか「終わり」とか言う人がいますが、この世はそんなに単純ではありません。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。また、一覧表の数値の間違いを訂正しています。

資金流出入額の累計の推移

資金流出入額の累計の推移を見ると、人気の変化が分かります。資金流出入額の累計は基準価額の変動の影響を受けません。資金流入額ー資金流出額がプラスということは、購入口数が解約口数を超えていることを意味します。

以下、グラフの赤のラインはeMAXISシリーズ、緑のラインはスリムシリーズです。

バランス(8資産均等型)

バランス(8資産均等型)

eMAXIS版の資金流入は頭打ちですが、資金流出が続いてもいません。

TOPIX

TOPIX

eMAXIS TOPIXは短期売買のおもちゃにされているようで、資金流出入が激しいです。2017年以降は資金流出傾向ですが、それでもまだ買われることがあるのは不思議です。スリム版への資金流入には違和感はありません。

日経平均

日経平均

eMAXIS 日経225は短期売買のおもちゃにされているようで、資金流出入がとんでもなく激しいです。スリム国内株式(日経平均)にもその傾向があります。

僕はeMAXIS日経225がいまだに売り買いされていることが理解できません。短期売買だから信託報酬差なんて気にしていないのでしょうか。

国内債券

国内債券

eMAXIS版は2018年以降資金流出傾向ですが、一定の水準で止まっています。

国内リート

国内リート

eMAXIS国内リートも売買が激しいです。スリム国内リートを含めて他にローコストな選択肢が複数あるにも関わらず、まだ買われていることに驚きます。

新興国株式

新興国株式

スリム版登場前から頭打ちになりました。でもスリム版登場後は資金流入が止まったことは納得できます。でも資金流出が続いているわけでもありません。ほとんどの受益者は、トータルコスト差を気にしながらもガチホしているということでしょうか。

先進国株式

先進国株式

スリム版の人気の高さは圧倒的です。eMAXIS版はスリム版登場前から減少を始めますが、その後下げ止まり、わずかに増加もしています。まだ買う人がいるなんて、と思ってしまいます。また、資金流出が続いていないのは、ガチホ戦略の人が多いためでしょうか。

先進国債券

先進国債券

eMAXIS版はスリム版登場前から資金流出傾向です。でもある水準で流出が止まっています。

先進国リート

先進国リート

eMAXIS版は2017年頃から資金流出傾向でしたが、不思議なことに2019年以降も買われています。スリム版は2019年10月に設定されましたが、順調に資金を集めています。

全世界株式(除く日本)

全世界株式(除く日本)

2010年頃は、全世界株式と言えば国内株式を含まないのが当たり前だったというのが、「eMAXIS全世界株式」というネーミングから伺えます。これは先進国株式+新興国株式でベンチマークはMSCI ACWI ex Japanです。

スリム版登場前から頭打ちになりましたが、現状維持を続けています。まだ買われてもいます。いや、買うならスリム版の方がいいと思いますよ。

米国株式(S&P500)

米国株式(S&P500)

米国株式(S&P500)は、eMAXISシリーズとしては最初にスリム版が設定され、SBIバンガードS&P500の驚異的な低信託報酬にも対抗して圧倒的な人気を獲得しました。スリムシリーズで一番売れています。

そして2020年12月にeMAXIS版が税抜き信託報酬0.30%で設定され、多くの人を驚かせました。まだ0.23億円しか売れておらず、グラフでは認識できません。この、eMAXIS S&P500の登場は、eMAXISシリーズとスリムシリーズの統合は、近い将来にはないですよ、というメッセージだと僕は理解しています。

売上は

純資産総額と信託報酬のうちの三菱UFJ国際投信の取り分から、年間の売上を計算しました。純資産総額の単位は億円、売上の単位は万円です。

eMAXISシリーズとスリムシリーズの売上比較表

この表から興味深い事実が分かります。

  • スリムシリーズの純資産総額はeMAXISシリーズの2.8倍もあります。
  • にもかかわらず、売上はeMAXISシリーズの4.87億円に対して、スリムシリーズは2.77億円しかありません。

スリムシリーズがいかに「薄利多売」の儲けの少ない商品であるかが良く分かります。そして、もうあまり売れなくなったとは言え、eMAXISシリーズを売らないでいてくれる受益者の存在は、三菱UFJ国際投信にとって、そしてスリムシリーズの受益者にとって、ありがたい存在です。

eMAXISシリーズ全体で1兆円突破

スリムシリーズを含めた、eMAXISシリーズ全体の純資産総額合計が、1兆円を突破しました。そのうち7,262億円(2020年1月15日時点)はスリムシリーズです。

あと50年後には

おそらくeMAXISシリーズの既存受益者は寿命の制約により解約してしまうでしょう。今でも買ってくれているコスト意識が低い受益者も、世代交代で死滅しないまでも激減するでしょう。結果、純資産総額は売上が得られないほど減少し、繰上償還だってあるでしょう。

eMAXISシリーズの売上がスリムシリーズより多いのも、永くは続かないということです。

三菱UFJ国際投信の選択肢

スリムシリーズにあるeMAXISの超廉価版の年間の売上総額が2.77億円しかないのは、スリムシリーズがいかに利益の出ない商売かを示しています。でもeMAXISシリーズの売上も大したことはなく、三菱UFJ国際投信を支えているのは別の商品群です。

でも、いまだにeMAXISシリーズを保有してくれている、あるいはまだ買い続けてくれるありがたい受益者から得られる売上は、間違いなくスリムシリーズの運営を支えているはずです。スリムシリーズ単独では完全な赤字でしょうから、事業体として成立させるためにもっと大きなくくりで見ているはずです。

三菱UFJ国際投信は、利益が上がらなくても信託報酬を下げ続けて他社との競争に勝ち残るか、超ローコスト投信の市場で2位以下になるのを受け入れるかの二択しかないのです。そして、おそらく1位が市場のほとんどを占有してしまうでしょう。

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