国内ETFでNASDAQ100指数に投資したい人にとって、MAXISナスダック100【2631】は良い選択肢だと思います。その為替ヘッジ版が、MAXISナスダック100為替ヘッジあり【2632】です。
トータルコストは2631より高いですが、為替ヘッジありを好む人は納得して負担できる水準だと思います。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
MAXISナスダック100ヘッジあり
為替ヘッジのないMAXISナスダック100【2631】と同日の2021年2月24日に設定されました。ティッカーシンボルは2632です。2631との違いは為替ヘッジの有無だけです。
信託報酬は税抜0.20%とeMAXIS NASDAQ100の0.40%より安いですが、信託報酬以外にもコストがかかります。
引用:目論見書
- マザーファンドは2631同じ(つまりeMAXIS NASDAQ100とも同じ)です。
- 配当金の扱いも2631と同じです。
- 為替ヘッジに必要なコストを除くと、運用コストは2631と同程度になると思われます。
なお、MAXISナスダック100はETFなので、証券会社を選ばないと売買手数料がかかります。楽天証券なら無料です。
MAXISナスダック100ヘッジありのトータルコスト
法令により、投資信託は運用報告書の公開が義務付けられているそうです。そして、運用報告書には信託報酬以外のコストについて記述されるため、正確さはともかく、いわゆる隠れコストを算出することが可能です。ところが、ETFにはその義務がないため、MAXISナスダック100ヘッジありの運用報告書は存在しないとのことです。
運用報告書の代わりになるのは決算短信ですが、知りたい隠れコストが明確な形で表現されていません。三菱UFJ国際投信に伺った内容から推測した方法で計算すると、隠れコストは0.0828%になりました。そのうちの0.044%程度は、目論見書に書かれている次のコストだと考えています。
- 受益権の上場に係る費用
- 年間上場料
- 対象指数についての商標の使用料
この計算は怪しいですが、2631の運用コストがeMAXIS NASDAQ100より年率0.11%ポイント高いと思われることから、同程度の運用コスト+為替ヘッジのコストであると思って良いでしょう。(このあと、2631と2632のトータルコスト差を実績データから計算しています。)
配当金の扱い
目論見書には分配方針についてこうあります。
引用:目論見書
配当金はMAXISナスダック100のベビーファンドから分配されますので、それだけMAXISナスダック100の基準価額が下がります。2631については、eMAXIS NASDAQ100とリターン比較することではっきりと認識できました。ところが2632は為替ヘッジがかかっているのでeMAXIS NASDAQ100と比較することができません。
2632はこれまで1回決算を行い、配当金を出しています。配当金の利率を計算したものが多いか少ないかは、何と比較するかで変わるでしょう。でも三菱UFJ国際投信は、計算期間における配当金全額を分配するとあります。そして、それはファンド内で再投資されてキャピタルゲインの恩恵を受けている純資産から分配されているので、たとえ少ないと感じても損しているわけではありません。
為替ヘッジの効果
次は2631と2632の、2021年3月10日から2022年11月30日までのリターン比較です。
赤のラインが2631、緑のラインが2632です。この比較期間だと為替ヘッジのない2631の方がリターンが高いです。
次は同じ期間におけるドル円の推移です。
この期間で最大37%上昇しています。為替ヘッジはこの変化を相殺しようとするため、円安の恩恵を受けることができません。(逆も然りなんですが。)
次はQQQ(NASDAQ100指数に連動するETF)のドルのままのトータルリターンと2632トータルリターンを比較したものです。グラフのスケールは同じです。
青のラインが右軸上がりなのはQQQの方が低コストだからなのと、2022年5月以降は為替ヘッジコストが上がっているためだと思います。
でも青のラインにうねりは見られないので、2632の為替ヘッジはしっかり効いています。
2631と2632のトータルコスト比較
QQQと相対比較することで、2631と2632のトータルコストを比較します。内容はマニアックながら、説得力抜群です。
2632トータルリターン
次は円換算していないQQQトータルリターンと、2632の配当金に国内課税することなく再投資した、2632トータルリターンの比較です。2632の設定直後を避けた、2021年3月10日から2022年11月30日までです。
青のラインはQQQトータルリターンー2632トータルリターンです。
- 青のラインが右肩上がりなのは、QQQの方が低コストだからです。
- 青のラインに為替の影響によるうねりが見られません。為替ヘッジはバッチリ効いています。
- 2022年5月以降、2632の運用コストが上がっていますが、おそらく為替ヘッジコストによるものでしょう。
次はQQQトータルリターン(ドルのまま)の運用コストを年率0.60%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインは直近を除いてほぼフラットになりました。おそらくですが、為替ヘッジコストの影響が大きいと思っています。
2631トータルリターン
同じ比較を2631で行います。次は円換算したQQQトータルリターンと、2631の配当金に国内課税することなく再投資した、2631トータルリターンの比較です。比較期間は同じです。
青のラインはQQQトータルリターンー2631トータルリターンです。傾きが2632のものよりずいぶん小さいです。
次はQQQトータルリターン(円換算後)の運用コストを年率0.28%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインはほぼフラットになりました。
2631の方が低コスト
QQQとの運用コスト差がこれだけありました。
- 2632(為替ヘッジあり):年率0.60%ポイント、でも2022年5月以降は大きく上昇
- 2631(為替ヘッジなし):年率0.28%ポイント
よって、2632のトータルコストは2631より年率0.32%ポイント高かったと推測されます。このコスト差のいくらかは、為替ヘッジコストだと思われますが、最近は差が開いています。
為替ヘッジは魔法ではないので、応分のコスト負担が必要ですね。
売れ行きは
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産価額は98億円です。少ないですね。
短期売買目的での利用も多いようです。次は2631もプロットしたものです。純資産総額は162億円です。
緑のラインが2631(為替ヘッジなし)です。どちらも市場から一定の評価を得ているようですが、資金流入は頭打ちです。
それでも、ともにeMAXIS NASDAQ100と同じマザーファンドを利用していることから、一粒で二度も三度もおいしいETFと言っていいでしょう。
評価:国内ETF好きな方には良い選択肢
NASDAQ100指数に長期投資するなら、iFree NEXT NASDAQ100かeMAXIS NASDAQ100が(利便性が高くて)いいと思います。
ETFのメリット・デメリットを分かった上で国内ETFが好き、そしてNASDAQ100指数に為替ヘッジをかけて投資したい人には、2632はとても魅力な選択肢に見えるのではないでしょうか。