米国株式

MAXIS米国株式(S&P500)ヘッジあり【2630】の運用コストと評価

国内ETFでS&P500種指数に投資したい人にとって、MAXIS米国株式(S&P500)【2558】は良い選択肢だと思います。その為替ヘッジ版が、MAXIS米国株式(S&P500)為替ヘッジあり【2630】です。

トータルコストは2558より高いですが、為替ヘッジありを好む人は納得して負担できる水準だと思います。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

MAXIS米国株式(S&P500)ヘッジあり

為替ヘッジのないMAXIS米国株式(S&P500)【2558】に約13ヶ月遅れの2021年2月24日に設定されました。ティッカーシンボルは2630です。2558との違いは為替ヘッジの有無だけです。

信託報酬は税抜0.078%とスリム米国株式の0.088%より安いですが、信託報酬以外にもコストがかかります。

引用:目論見書

  • マザーファンドは2558と同じ(つまりスリム米国株式とも同じ)です。
  • 配当金の扱いも2558と同じです。
  • 為替ヘッジに必要なコストを除くと、運用コストは2558と同程度になると思われます。

なお、MAXIS米国株式はETFなので、証券会社を選ばないと売買手数料がかかります。楽天証券なら無料です。

MAXIS米国株式のトータルコスト

法令により、投資信託は運用報告書の公開が義務付けられているそうです。そして、運用報告書には信託報酬以外のコストについて記述されるため、正確さはともかく、いわゆる隠れコストを算出することが可能です。ところが、ETFにはその義務がないため、MAXIS米国株式の運用報告書は存在しないとのことです。

運用報告書の代わりになるのは決算短信ですが、知りたい隠れコストが明確な形で表現されていません。三菱UFJ国際投信に伺った内容から推測した方法で計算すると、隠れコストは0.1494%になりました。そのうちの0.02%程度は、目論見書に書かれている次のコストだと考えています。

  • 受益権の上場に係る費用
  • 年間上場料
  • 対象指数についての商標の使用料

この計算は怪しいですが、2558の運用コストがスリム米国株式より年率0.09%ポイント高いと思われることから、同程度の運用コスト+為替ヘッジのコストであると思って良いでしょう。(このあと、2558と2630のトータルコスト差を実績データから計算しています。)

配当金の扱い

目論見書には分配方針についてこうあります。

引用:目論見書

配当金はMAXIS米国株式のベビーファンドから分配されますので、それだけMAXIS米国株式の基準価額が下がります。2558については、スリム米国株式とリターン比較することではっきりと認識できました。ところが2630は為替ヘッジがかかっているのでスリム米国株式と比較することができません。

MAXIS米国株式はこれまで1回決算を行い、配当金を出しています。配当金の利率を計算したものが多いか少ないかは、何と比較するかで変わるでしょう。でも三菱UFJ国際投信は、計算期間における配当金全額を分配するとあります。そして、それはファンド内で再投資されてキャピタルゲインの恩恵を受けている純資産から分配されているので、たとえ少ないと感じても損しているわけではありません。

為替ヘッジの効果

次は2558と2630の、2021年3月10日から2022年5月31日までのリターン比較です。

2558と2630の、2021年3月10日から2023年5月31日までのリターン比較グラフ

赤のラインが2558、緑のラインが2630です。この比較期間だと為替ヘッジのない2558の方がリターンが高いです。円安効果ですね。

次は同じ期間におけるドル円の推移です。

同じ期間におけるドル円の推移グラフ

この期間で最大37%上昇しています。為替ヘッジはこの変化を相殺しようとするため、円安の恩恵を受けることができません。(逆も然りなんですが。)

次はVOO(S&P500種指数に連動するETF)のドルのままのトータルリターンと2630と比較したものです。

VOOのドルのままのトータルリターンと2630と比較したグラフ

青のラインに段差があるのは、2630の配当金を無視しているから、右肩上がりなのはVOOの方が低コストだからです。

でも青のラインにうねりは見られないので、2630の為替ヘッジはしっかり効いています。

2558と2630のトータルコスト比較

VOOと相対比較することで、2558と2630のトータルコストを比較します。内容はマニアックながら、説得力抜群です。

2630トータルリターン

次は円換算していないVOOトータルリターンと、2630の配当金に国内課税することなく再投資した、2630トータルリターンの比較です。2630の設定直後を避けた、2021年3月10日から2023年5月31日までです。

円換算していないVOOトータルリターンと、2630トータルリターンの比較グラフ

青のラインはVOOトータルリターンー2630トータルリターンです。

  • 青のラインが右肩上がりなのは、VOOの方が低コストだからです。
  • 青のラインに為替の影響によるうねりが見られません。為替ヘッジはバッチリ効いています。
  • 2022年後半以降は、2630の運用コストが上がっています。為替ヘッジコストによるものかも知れません。

次はVOOトータルリターン(ドルのまま)の運用コストを年率0.45%ポイント増量したものとの比較です。

VOOトータルリターン(ドルのまま)の運用コストを年率0.45%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインは2022年後半以降を除いてほぼフラットになりました。為替ヘッジコストの負担が大きいのだと思います。

2558トータルリターン

同じ比較を2558で行います。次は円換算したVOOトータルリターンと、2558の配当金に国内課税することなく再投資した、2558トータルリターンの比較です。比較期間は同じです。

円換算したVOOトータルリターンと、2558トータルリターンの比較グラフ

青のラインはVOOトータルリターンー2558トータルリターンです。傾きが2630のものよりずいぶん小さいです。

縦軸のスケールを拡大します。

円換算したVOOトータルリターンと、2558トータルリターンの比較グラフ、縦軸のスケールを拡大

次はVOOトータルリターン(円換算後)の運用コストを年率0.14%ポイント増量したものとの比較です。

VOOトータルリターン(円換算後)の運用コストを年率0.14%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。これはまぐれじゃできないです。

2558の方が低コスト

VOOとの運用コスト差がこれだけありました。(2022年後半以降を除きます。)

  • 2630:年率0.45%ポイント
  • 2558:年率0.14%ポイント

よって、2630のトータルコストは2558より年率0.31%ポイント高かったと推測されます。このコスト差のいくらかは、為替ヘッジコストだと思われます。そして、日米の金利差が大きくなった2022年後半以降は、やむを得ないとは言え、2630はコスト的にはより不利な状況にあります。

売れ行きは

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産価額は321億円です。

2630の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

人気は微妙ですね。

次は2558もプロットしたものです。純資産総額は389億円です。

2558もプロットしたグラフ

緑のラインが2558です。2558の方がやや人気です。ともにスリム米国株式(S&P500)と同じマザーファンドを利用していることから、一粒で二度も三度もおいしいETFではないでしょうか。

評価:国内ETF好きな方には良い選択肢

為替ヘッジはありませんが、長期投資を前提とするならスリム米国株式の方が良いと思います。

ETFのメリット・デメリットを分かった上で国内ETFが好き、そしてS&P500種指数に為替ヘッジをかけて投資したい人には、2630はとても魅力な選択肢に見えるのではないでしょうか。

ただし、経済状況によっては高い為替ヘッジコストを負担することを覚悟しておくべきですね。

おすすめの関連記事

-米国株式

© 2023 河童のインデックス投資 Powered by STINGER