最低限の金融リテラシーがないと、金融機関にカモにされたり、相対的に損する可能性の高い商品を買うハメになったりするリスクが高くなります。ではその最低限の金融リテラシーを身に付けるにはどうすればよいか、と聞かれても「これです」という解を持っていませんでした。
が、見つけました。「やってはいけない! 老後の資産運用」というタイトルの書籍です。
著者はファイナンシャルプランナーで、投資信託を運用している会社の社長が書いたような本とは視点が丸っきり異なります。
本書に書かれている「やってはいけない」ことを守れば、損する可能性が高い、あるいは相対的に不利な条件の金融商品を避けることができると思われます。
本書であげられている避けるべき商品、サービスはどれも納得の行くものです。
更新情報
全力解説シリーズに昇格させました。
難しいのは「やっていいこと」
やってはいけないことを明示するのは(意見の相違はあるとしても)難しくありません。難しいのは、やっていいことを示す方です。資産形成に限った話であっても、読者それぞれで状況が異なるため唯一の最適解など存在しないからです。少なくとも次の条件を考慮する必要があるでしょう。
- 年齢、家族構成、収入、支出。
- 現在の保有資産。
- リスク許容度。
- リスク選好度。
- インデックス投資の経験の有無。
でもそれを言い出すと話が発散するからでしょう、著者はつみたてNISAで選択できる全世界株式に投資する4本のインデックスファンドを取り上げています。バランスファンドではなくて全世界株式を選択したところを僕はすごいと思いました。難点があるとするなら近い将来避けられないはずの暴落時に、全世界株式はバランスファンドより大きく下落するので、その下落幅に耐えられるかどうかです。でもバランスファンドだって十分血の気を失うほど下がるでしょうから、そこは五十歩百歩とも言えます。
その書籍のメインテーマは「やってはいけないこと」で、「やっていいこと」には最小限のページしか割いていません。よって、つみたてNISAの中から自分にあった商品を選択する話は別の情報源から学んで下さいということになるでしょう。
つみたてNISAで選択できる全世界株式インデックスファンド
その書籍では次の4本を紹介していました。
- SBI全世界株式
- ステートストリート全世界株式
- スリム全世界株式(オール・カントリー)
- 楽天全世界株式
現在ではオール・カントリーの対抗馬である、たわら全世界株式も候補になりますね。
SBI全世界株式
ベンチマークへの忠実度を気にしないのであれば、SBI全世界株式を選択してもいいでしょう。僕はベンチマークに忠実な運用がインデックスファンドのキモだと信じているので、SBI全世界株式はおすすめしません。
ステートストリート全世界株式
税抜き信託報酬が0.48%と高コストです。ベンチマークが同じでよりローコストなスリム全世界株式(オール・カントリー)の方がいいです。
たわら全世界株式
ベンチマークはオール・カントリーと同じですが、不人気で売れていません。

スリム全世界株式(オール・カントリー)
日本を含む全世界株式に投資したい場合、運用コストと人気で考えると、おすすめは楽天全世界株式かオール・カントリーの二択になります。
楽天全世界株式
オール・カントリーの方が低コストですが、VTを間接的に買っている楽天全世界株式が好きという場合は、楽天全世界株式一択でいいです。
楽天全世界株式とオール・カントリーのどちらが良いかは、人によって答えが変わります。
つみたてNISAから始めるのが良い
つみたてNISAの「指定インデックス投資信託」はクソ投信が除外されていることもあり、まずここをスタート地点にするのが良いです。
そしてつみたてNISA口座はネット証券で開くのがおすすめです。
僕は楽天証券、SBI証券、auカブコム証券に特定口座を持っていますが、営業の電話がかかってきたことは一度もありません。銀行で定期預金や仕組預金を利用すると、満期前に営業電話がかかってくるのは、あるあるです。
次に投資する商品選択ですが、信託報酬が0.5%を超えるものは問答無用で除外していいでしょう。
いきなり株式100%インデックスで良いか
難しいのはそこからです。本当に自分にあった商品がどれなのかを判断するには、商品について知る以前に自分のことを知る必要がありますが、おそらくインデックス投資の経験なしでは分からないでしょう。
数年経験して基準価額の変動で含み益が大きく変わることや、たまには含み損になることは、経験してみないと実感できません。特に含み損になった時にどう感じるかは経験しないで想像しても無意味です。
僕はインデックス投資で最も重要なのは商品(投資対象)選択だと信じています。次は積み立て投資の継続で、(出口戦略発動時を除いて)絶対に売却しないで買い持ちすることです。現実に起こり得る問題は、次の暴落時に狼狽売りしないかです。3割、4割下がるのは当たり前だと思った方がいいわけですが、それに耐えて買い持ちできるかどうかが運命を分けます。
全世界株式インデックスなどの株式100%インデックスは、長期投資だとバランスファンドよりも高いリターンが期待できます。が、基準価額の変動率が高いため、株式の値動きに慣れていない人はバランスファンドから始めた方がいいかも知れません。
リストの続き
やってはいけないことリストには続きがあります。
- 暴落時に狼狽売りしないこと。
それも含めて資産形成を成功させるのに必要な知識が「金融リテラシー」なのです。
おすすめの関連記事