先進国株式インデックスの指数と言えばたいていはMSCIコクサイです。そうでないのは珍しいです。ニッセイ外国株式もスリム先進国株式ももちろん、指数はMSCIコクサイです。さらに、スリム全世界株式(オール・カントリー)の先進国株式部分もMSCIコクサイです。
そんなに人気の高いMSCIコクサイって何なの?という方のために、やさしく解説しました。
MSCIコクサイはベンチマーク(指数)
MSCIコクサイは、MSCI社(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル社)が作成しているベンチマーク(指数)です。毎営業日更新されます。三菱UFJ国際投信のような運用会社は、MSCIコクサイに連動するマザーファンドについて、指数に連動するように株式を売買します。
次はスリム先進国株式の目論見書からの引用です。スリム先進国株式は専用のベビーファンドを持っていますが、ベビーファンドは直接株式を売買するかわりに、マザーファンドを売買します。
引用:目論見書
MSCIコクサイ指数に連動させつつ、運用コストも低く抑えるという大変な作業を毎営業日しているのはマザーファンドです。ベビーファンドは、それと比べたら大したことはしていません。ちなみに、eMAXIS先進国株式もつみたて先進国株式も同じマザーファンドを利用する、専用のベビーファンドを持っています。
MSCIワールド
MSCI社は独自の基準で、日本を含む23カ国を先進国と定義しています。この数は固定ではなく、変化します。この先進国の大型株、中型株を投資対象にした指数が、MSCIワールドです。時価総額の上位85%を占めます。
引用:MSCIハンドブック
MSCIワールドから日本を除いたものが、MSCIコクサイです。
日本で先進国株式と言えばMSCIコクサイ
日本の先進国株式インデックスは、MSCIコクサイの寡占状態です。先進国株式インデックスは、つみたてNISA適格のものだけでも17本ありますが、うち16本はMSCIコクサイをベンチマークにしています。
どうして日本を含まないMSCIコクサイを採用した商品がたくさん組成されたのか、その理由は不明です。そして不思議なことに、日本を含むMSCIワールドを採用した商品を僕は知りません。少なくとも、つみたてNISA適格商品にはありません。
MSCIワールドではなくてMSCIコクサイが重用されたのは、もしかしたら、MSCIワールドの国内株式部分がMSCIジャパン指数だったからかも知れません。ちなみに、スリム先進国株式(オール・カントリー)の指数である、MSCI ACWI(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス)の国内株式部分はMSCIジャパンです。
MSCIコクサイの詳細
以下、グラフと表の作成には次のETFの保有銘柄データを参照しました。
- MSCIコクサイはiシェアーズMSCIコクサイETF(TOK)
- S&P500はiシェアーズS&P500米国株ETF(1655)
業種別投資割合
次は業種(セクター)別投資割合です。これを見ても僕は「だから何?」としか思えないのですが、良くも悪くも時価総額比で変わります。
つまり、好調なセクターが上位に来るということです。
国別投資割合
MSCIコクサイは22カ国に投資しますが、現在71.5%は米国です。
香港までの上位10カ国で95.6%を占めます。
この投資割合は時価総額比で算出されています。株価が上昇している国は時価総額比が高くなるので、投資割合も上がります。
次はeMAXIS先進国株式の2017年10月以降の、米国株式比率の推移です。
日本を除いた先進国の中で、米国株式が好調なら比率が増え、不調なら下がります。
国別組入銘柄数
MSCIコクサイは現在1,287銘柄に投資しています。次は国別の組入銘柄数です。
上位10カ国で89%を占めます。
組入上位30銘柄の保有比率
次は組入上位30銘柄の保有比率です。上位には馴染みのある銘柄が並んでいます。ALPHABETはGoogleのことです。7位にはあのテスラがいますね。
上位30銘柄で29%を占めます。31位以降、0.44%以下の銘柄が1,200以上続くわけです。僕の印象は「幅広い銘柄に分散されている」です。
S&P500との比較
MSCIコクサイの71.5%を米国株式が占めています。銘柄数は625です。この米国株式部分は、現在圧倒的な人気を誇るS&P500種指数とどう違うのでしょうか。
S&P500は約505銘柄に投資します。MSCIコクサイとS&P500が共通して投資しているのは471銘柄です。次はそれら上位30銘柄の投資割合を比較したものです。MSCIコクサイの比率は米国株式に占める比率に換算してあります。
微妙な違いがありますが、大きな違和感はないです。こんな感じで、MSCIコクサイの米国株式部分の92.4%に、S&P500の98.9%が入っています。つまり、MSCIコクサイにはS&P500がほぼ丸ごと入っていると言えます。
MSCIコクサイにしかない米国株式銘柄
MSCIコクサイにしかない米国株式銘柄は153あります。MSCIコクサイの米国株式の7.6%です。次はその上位20銘柄です。
米国株式好きな人がピクッと反応する銘柄もありますね。でも比率は低いです。
S&P500にしかない銘柄
S&P500にしかない銘柄は36あります。S&P500の0.7%です。次はその上位20銘柄です。
比率はとても低いです。
全世界株式とMSCIコクサイの関係
全世界株式には日本を含むものと含まないものがあります。2010年頃は日本を含まない方が人気が高く、eMAXIS全世界株式は「除く日本」でした。でも現在は日本を含む方が圧倒的な人気を獲得しています。そのひとつがスリム全世界株式(オール・カントリー)です。どちらもMSCI社の指数を採用しています。
- オール・カントリーはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス
- 除く日本はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(除く日本)
次は現在の地域別投資比率です。
どちらも先進国株式部分はMSCIコクサイです。新興国株式部分はMSCIエマージング・マーケットです。オール・カントリーの国内株式部分はMSCIジャパンですが、この指数は日本ではマイナーな存在で、一般販売されている国内株式インデックスで、MSCIジャパンに連動するものを僕は知らないです。
指数のライセンスフィー
MSCIコクサイに連動した商品を販売する運用会社は、MSCI社に指数の使用料(ライセンスフィー)を支払います。これについてはいろんな話がありますが、良く聞くのは「安くはない」というものです。少なくとも、運用会社は信託報酬のうちの運用会社の取り分から得た売上より、最終的にはMSCI社に支払う使用料を捻出しなければなりません。MSCI社の指数はタダでは利用できないのです。
次はKenzさんのブログ記事からの引用です。
運用会社がある指数をベンチマークとするマザーファンドを運用していて、信託報酬のことなるベビーファンドが複数ある場合、マザーファンドの純資産でなく、ベビーファンドごとに指数のライセンスフィーがかかることも初めて知りました。
まとめ
- MSCIコクサイにはS&P500がほぼ丸ごと入っています。
- MSCIコクサイの米国比率は現在71.5%ですが、これは米国と他の地域の経済状況で変化します。
- MSCIコクサイは日本を除く22の先進国に投資しますが、上位10カ国で95.6%を占めます。
- 全世界株式(除く日本)、全世界株式(オール・カントリー)の先進国株式部分はMSCIコクサイです。