先進国リートインデックスの信託報酬も低コスト化が進み、スリム先進国リートは税抜き0.20%です。でも不思議なことにリターンは高コストなはずのFunds-i 外国REITと変わりません。
NEXT FUNDS外国REITはFunds-i 外国REITのETF版と言える存在ですが、税抜き信託報酬はたったの0.17%です。ということは、スリム先進国リートよりも低コストでしょうか。
NEXT FUNDS外国REIT(2515)
野村アセットマネジメントが運用しているNEXT FUNDS外国REIT(2515)は、S&P先進国REIT指数(除く日本)に連動する国内籍ETFです。
- 設定されたのは2017年12月11日。
- 信託報酬は税抜き0.17%。
- 売買単位が10株なので、ざっくり1.05万円の倍数で買えます。
- 年4回、分配金が出ます。国内籍ETFなので、分配金への二重課税が自動的に調整されます。
Funds-i 外国REITのETF版と言えますが、信託報酬が激安です。
運用コスト
NEXT FUNDS外国REITは、信託報酬以外に次の費用がかかります。
引用:目論見書
これら信託報酬以外の費用がいくらなのかは、運用報告書に記載された費用明細から計算できます。ところが、NEXT FUNDS外国REITは運用報告書を作成しません。決算書を見ても僕にはこれらの費用を計算することができません。(正しい計算方法が分かりません。)
でも、同じマザーファンドを利用するFunds-i 外国REITとリターン比較することで、おおよその運用コストを推測できます。
Funds-i 外国REITとの比較から運用コストを推測
次はNEXT FUNDS外国REITの設定直後を避けた、2017年12月25日から2021年4月2日までの、Funds-i 外国REITとの比較です。
赤のラインがFunds-i 外国REIT、緑のラインがNEXT FUNDS外国REITです。青のラインはリターン差で、Funds-i 外国REITーNEXT FUNDS外国REITです。
青のラインが階段状になっているのは、NEXT FUNDS外国REITが年4回分配金を出すことで基準価額が下がるためです。コロナショック前はその様子がくっきり観測できましたが、コロナショック後は価格変動が激しくて分からなくなっています。
運用コストを推測するためには、NEXT FUNDS外国REITが分配金を出していない期間を比較する必要があります。
次は2019年6月28日から9月6日の、この目的に都合の良い期間を切り出したものです。
青のラインはNEXT FUNDS外国REITーFunds-i 外国REITです。右肩上がりなので、期待通りNEXT FUNDS外国REITの方が低コストです。
次はNEXT FUNDS外国REITの運用コストを年率0.38%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインは真っ平らになりました。
次は2019年10月2日から12月6日を切り出したものです。
期待通り右肩上がりです。
次はNEXT FUNDS外国REITの運用コストを年率0.38%ポイント増量したものとの比較です。
段差を無視すると青のラインはほぼフラットになりました。
NEXT FUNDS外国REITの推定トータルコストは
次はFunds-i 外国REITの運用報告書から計算したトータルコストす。
NEXT FUNDS外国REITはFunds-i 外国REITより年率0.38%ポイント低コストと推測されるので、推定税込みトータルコストは0.2956%になります。これはスリム先進国リートより低コストです。
でも運用報告書から計算したトータルコストは(特にリートでは)あてにならないので、ごまかしの効かない基準価額データの比較で判断すべきです。
スリム先進国リートとの比較
NEXT FUNDS外国REITが分配金を出した日をまたがず、コロナショックによる暴落の真っ最中を避けた期間で比較します。次は2019年12月9日から2020年2月20日までの比較です。
青のラインはNEXT FUNDS外国REITースリム先進国リートです。右肩上がりなのでNEXT FUNDS外国REITの方が低コストです。
次は2020年6月8日から9月6日までの比較です。
変動していますが、NEXT FUNDS外国REITの方が低コストと言えそうです。
次は2020年9月7日から12月4日までの比較です。
厳しく見たとしても互角、まあNEXT FUNDS外国REITの方が低コストですね。
分配金利率
次はNEXT FUNDS外国REITの分配金利率(税引前)の推移です。
年4回分配されるので、年率換算すると3%程度になります。
インデックスファンドとどちらが有利か
ここからマニアックな話になります。そういうのはいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。
分配金への課税の違い
話を単純にするために、NEXT FUNDS外国REITの運用コストがFunds-i 外国REITと同じだとします。するとリターンは投資対象資産から得られる配当金(それを出すと分配金と呼ばれています)への課税の違いから生まれます。
ここで、NEXT FUNDS外国REITは年4回もらえる分配金を全額再投資できるとしましょう。ETFは取引価格の倍数でないと買えないから、という話はここでは無視します。
- NEXT FUNDS外国REITは配当金への二重課税が自動調整されるため、課税上有利な分配金を再投資できます。再投資で元本が増えます。
- Funds-i 外国REITは、保有する資産から得られた配当金に国内課税することなく再投資します。再投資で元本は増えず、売却時に利益に対して20.315%課税されます。
この2つは大きく違います。さて、どちらが有利でしょうか?
もうわけが分からなくなった人もいると思います。それは僕の説明が下手くそだから、というのもありますが、ややこしい話なのです。
シミュレーション条件
次の条件でシミュレーションしました。
- Funds-i 外国REITの期待リターンを年率5%とします。
- 投資対象資産から得られる配当金の税引き前利率を年率3%とします。
- NEXT FUNDS外国REITは配当金の課税がFunds-i 外国REITより10%有利だとします。
- NEXT FUNDS外国REITから年4回出る分配金を、端株対応で(全額無駄なく)再投資できるものとします。
- 投資期間を2020年から20年間とします。
- 課税口座で100万円一括投資し、Funds-i 外国REITは追加投資なし、NEXT FUNDS外国REITは分配金の再投資のみ、とします。
- 売却時の、税引き後評価額を比較します。
少々無理のある条件ですが、配当金への課税の違いがリターンにどう作用するかは分かります。
シミュレーション結果
青のラインはFunds-i 外国REITーNEXT FUNDS外国REITです。
NEXT FUNDS外国REITの圧勝です。
次はNEXT FUNDS外国REITの方がFunds-i 外国REITより年率0.1%ポイント高コストである場合のシミュレーション結果です。
12年後ぐらいに拮抗し、その後Funds-i 外国REIT有利に変わります。
シミュレーションが示唆すること
- 投資信託とETFの運用コストが同じで、二重課税が自動調整されたETFの分配金を100%再投資できるなら、ETFの方が有利です。比較期間が長くなると投資信託が有利に変わりますが、20年では追い付けません。
- スリム米国株式(S&P500)とMAXIS米国株式のように、ETFの方が高コストな場合、投資信託に逆転されるまでの期間が短くなります。
- スリム先進国リートとNEXT FUNDS外国REITのどちらが有利か、という視点では、運用コストはNEXT FUNDS外国REITの方が安いので、分配金の再投資を効率良くできるなら、NEXT FUNDS外国REITの方が有利と言えます。
- 分配金を再投資しないで消費してしまう(他の目的に使う)場合も、NEXT FUNDS外国REITは悪い選択肢ではありません。
売れ行きは
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は69億円です。
純資産総額は物足りない気もしますが、NEXT FUNDS外国REITに興味を抱く人が気にする水準ではないでしょう。
評価:ETFが好きな人には良い選択肢です
運用コストはスリム先進国リートより安いです。そして次のような人には良い選択肢です。
- 投資信託よりETFが好みである。
- ETFのデメリットを分かった上で、メリットを活かしたい。
- 分配金を再投資して資産形成しようと思っていない。