現在、米国株式と並んで高い人気を獲得しているのが、日本を含む全世界の株式に、時価総額比で投資するインデックスファンドです。中でもスリム全世界株式(オール・カントリー)と、楽天全世界株式が飛び抜けています。
同じ組成であっても人気を獲得するのが簡単でないことは、ステートストリート全世界株式、たわら全世界株式が証明しています。そんな中、ニッセイアセットマネジメントは違うアプローチで全世界株式を組成しました。3地域の投資割合をGDP比で決めるというものです。
更新情報
第一期運用報告書の内容を反映させています。
ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)
2020年6月29日に税抜き信託報酬0.104%で設定されました。スリムシリーズの全世界株式3兄弟と同率です。
ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)は、日本を含む全世界の株式に投資しますが、3地域の投資割合は時価総額比ではなくて、GDP比です。次は設定当時の比率です。
引用:目論見書
この比率は年1回見直されますが、ファンドマネージャーの意思ではなくて、IMFが作成している公的なデータに基づいて変更されます。そして、次のように変更されています。
3地域の指数(ベンチマーク)はこうなっています。
- 先進国株式:MSCIコクサイ
- 新興国株式:MSCIエマージング・マーケット
- 国内株式:TOPIX
これらの指数は時価総額比です。でも3地域の比率は時価総額比ではなくて、GDP比です。なんか不自然な感じしますよね。
GDP比を採用した理由
これは僕の推測ですが、大きくは外していないと思っています。
つみたてNISAの指定インデックス投資信託で適格認定を受けるためには、指定された指数に連動させる必要があります。人気が高いのは先進国株式、新興国株式、国内株式が時価総額比となるものですが、それだと国内株式をTOPIXで組成できません。3地域均等型のように、何%の固定比率で行きますならいいのですが、時価総額比にするなら次のどちらかしかありません。
- (VTと同じ)FTSEグローバル・オールキャップ・インデックスを採用する。
- (オール・カントリーやたわら全世界株式と同じ)MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスを採用する。
どちらも、国内株式はTOPIXではありません。MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスを採用するには、MSCIジャパン指数に連動するマザーファンドが必要です。三菱UFJ国際投信も、アセットマネジメントOneもわざわざ本気出して新設しました。本気出さずに国内株式をTOPIXで代用する、でも固定比率にしない苦肉の策が、GDP比率への連動でした。
つまり、GDP比を採用したのは、国内株式を(すでにマザーファンドがある)TOPIXで済ませたかった、それでもつみたてNISA適格にしたかったからだと思われます。
また、本気出してMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスを採用して、オール・カントリーと直接戦うのは得策ではないという判断があったのかも知れません。
オール・カントリー、VTとの違い
オール・カントリー、VTの地域別投資比率は時価総額比で、指数を算出している会社は違いますが、その比率はほぼ同じです。が、GDP比だと新興国株式の比率が3.2倍程度もあります。
新興国への投資比率を高めたい人には都合が良いですが、僕には人気が出る組成と思えないです。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。スリム全世界株式(オール・カントリー)と比較しています。
ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)は隠れコストが高いです。
次は隠れコストの明細です。高さが目立つ項目を赤字にしています。
保管費用が高いのは、新興国株式の比率が高いからだと思われます。「その他」がどうして高いのかは分かりません。
同じマザーファンドを利用する商品から推測
これは2020年12月に、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)の運用コストを推測したものです。そんな怪しい話はいいやって方は、ここまで飛ばしてください。
次の3商品は、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)と同じマザーファンドを利用しています。
これらをGDP比で合成すると、トータルコストは0.3788%になります。
次は、これら3商品の基準価額データをGDP比で合成し、毎月リバランスした結果と、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)のリターン比較です。
青のラインはリターン差ですが、ほぼフラットです。ということは、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)のトータルコストは0.3788%程度ということになります。
第一期運用報告書から計算したトータルコストは0.3158%でした。僕の予想よりは安かったですね。
リターン比較
オール・カントリーとのリターン比較
次はニッセイ世界株式(GDP型バスケット)の設定直後を避けた、2020年7月15日から2021年1月15日までの、スリム全世界株式(オール・カントリー)とのリターン比較です。
青のラインはリターン差で、ニッセイ世界株式ーオール・カントリーです。ほぼ互角で推移していましたが、2021年はニッセイ世界株式が伸びています。
楽天全世界株式とのリターン比較
次は楽天全世界株式とのリターン比較です。
この比較期間では互角です。
eMAXISシリーズをGDP比で合成
オール・カントリーとGDP型バスケットのリターンはどう違うのか、過去データを使ってシミュレーションしました。それはいいやって方はここまで飛ばして下さい。
eMAXISシリーズの3商品の基準価額データをGDP比で合成し、毎月リバランスした結果を使って、2018年からリターン比較します。次はニッセイ世界株式(GDP型バスケット)と合成結果の比較です。
青のラインはニッセイ世界株式ー合成結果です。右肩上がりなのは、合成に使ったのがeMAXISシリーズでトータルコストが高いためです。
これを踏まえて、オール・カントリーと同じMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動する、ステートストリート全世界株式と比較します。赤のラインがステートストリート全世界株式、緑のラインが合成結果です。青のラインはステートストリート全世界株式ー合成結果です。
2018年からリターン比較
ステートストリート先進国株式の方が高パフォーマンスだった期間が長いです。
2019年からリターン比較
コロナショックによる株価暴落前は、ステートストリート全世界株式の方が高パフォーマンスでした。株価暴落後は互角です。
2020年からリターン比較
不人気です
次はニッセイ世界株式(GDP型バスケット)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は3.09億円です。
日本を含む全世界株式インデックスの人気の高さが、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)を組成する動機になったはずです。それからすると、この資金流入は期待外れと言えるでしょう。
同じ組成の、先輩にあたるグローバル株式ファンドもプロットしました。
営業努力もあるのでしょう、グローバル株式ファンドの方が売れています。でも商品内容は、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)の方がいいです。
評価:GDP比が好みなら良い選択肢です
3地域の投資割合をGDP比で決める組成が好みなら、つまり、日本を含む全世界株式に投資するけど、(現状だと)新興国株式への投資割合を高めたいなら、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)は良い選択肢です。グローバル株式ファンドも同じくGDP比の全世界株式インデックスですが、トータルコスト、組成内容を考えるとニッセイ世界株式(GDP型バスケット)の方が良いです。
ただし、現在の資金流入の少なさは気になります。また、一般的には時価総額比が高く評価され推奨される傾向が強いと思われるので、ニッセイ世界株式(GDP型バスケット)がオール・カントリーや楽天全世界株式のような人気を獲得するのは無理だと、僕は思っています。そのことは、ニッセイアセットマネジメントも分かった上で組成したはずです。