インデックス投資

【徹底比較】スリム先進国株式とスリム米国株式(S&P500)のどちらがおすすめですか?

先進国株式(MSCIコクサイ)に投資するなら、運用コストと人気で判断するとスリム先進国株式かニッセイ外国株式の二択になります。僕は別の要素も考慮するとスリム先進国株式一択で良いと考えていますが、これはポジショントークと言われます。

S&P500に投資するなら、運用コストと人気で判断するとスリム米国株式かSBIバンガードS&P500の二択になりますが、僕はスリム米国株式をおすすめします。

では、スリム先進国株式とスリム米国株式のどちらが良いでしょうか。

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割れる意見

先進国株式(MSCIコクサイ)と米国株式(S&P500)のどちらが良いかについては、投信ブロガーによって立ち位置(ポジション)が異なっており、意見が割れます。

  • 過去のパフォーマンスを見ればS&P500の圧勝、MSCIコクサイで米国株式以外に投資するなんてムダ。
  • 米国一国集中投資はリスクが高すぎるから全世界の株式に幅広く投資した方が良い。

前者の主張は明確です。それに比べると後者の主張は少々あいまいです。

  • 「全世界の株式に」と言うものの、日本を含む全世界株式に時価総額比で投資するインデックスファンドの人気が高まったのは、2017年9月に楽天全世界株式が登場してからです。
  • eMAXISシリーズの時代から、全世界株式(除く日本)よりも先進国株式の方が人気でした。
  • スリム全世界株式(オール・カントリー)の人気の高さは圧倒的ですが、純資産総額ではスリム米国株式(S&P500)の圧勝です。

MSCIコクサイとS&P500の違い

  • MSCIコクサイは日本を除く22の先進国に投資しますが、71.5%は米国です。上位10カ国で95.6%を占めます。
  • MSCIコクサイは1,287銘柄に投資しています。
  • MSCIコクサイの米国株式の銘柄数は625です。MSCIコクサイとS&P500が共通して投資しているのは471銘柄です。
  • MSCIコクサイの米国株式部分の92.4%に、S&P500の98.9%が入っています。
  • MSCIコクサイにしかない米国株式銘柄は153あります。MSCIコクサイの米国株式の7.6%です。

ざっくり言うと、MSCIコクサイの7割はS&P500を丸ごと含む米国株式で、残り3割がEU、カナダ、オーストラリアなどの先進国です。

詳しい比較を次の記事で行っています。

仮想スリム米国株式

S&P500種指数をベンチマークにしているETFにIVVがあります。これの実績データを使って仮想スリム米国株式を生成しました。

  • 2001年1月5日に10,000円でIVVを買ったことにします。扱う株数は「端株数」で、1株未満の端数も無駄なく買えます。
  • 配当金が出たら米国での10%課税後のドルを再投資します。税引き後の配当金でIVVを端株数で買うのです。そうして保有株数を増やします。保有株数が増えるのは配当金を再投資した時だけです。
  • 円をドルに替える為替手数料もIVVの購入手数料もゼロとします。
  • 評価額は円換算して求めます。
  • 評価額の推移を指数化します。

こうして生成したIVVのトータルリターンはスリム米国株式の信託報酬+隠れコスト分高い(良い)ので、応分のコストを増量します。コストの増量によってリターンが劣化します。ここでは年率0.18%増量しました。

次はスリム米国株式の本物と仮想版のリターン比較です。

スリムS&P500の本物と仮想版のリターン比較グラフ

青のラインがリターン差です。ほぼフラットです。大きなヒゲは配当金の扱いの違いによるものなので無視してください。

三井住友DC外国株式インデックスファンドLとの比較

MSCIコクサイをベンチマークにしているインデックスファンドで、古くから運用されている三井住友DC外国株式インデックスファンドLと比較します。設定日である2003年1月15日から2021年3月末までの比較です。18年2ヶ月です。

仮想スリム米国株式(S&P500)と三井住友DC外国株式インデックスファンドLのリターン比較グラフ

赤のラインが仮想スリム米国株式、緑のラインが三井住友DC外国株式インデックスファンドLです。青のラインは仮想スリム米国株式ー三井住友DC外国株式インデックスファンドLです。

青のラインが右肩上がりの期間は、仮想スリム米国株式の方が高パフォーマンスです。この比較期間だと、概ね3つに分かれます。

どちらが高パフォーマンスかで期間を色分けしたグラフ

黄色の期間は先進国株式が有利でした。赤の期間は互角か、S&P500がやや有利でした。緑の期間はS&P500が有利でした。一般的に最近のパフォーマンスが良いものが人気を集める傾向があるので、S&P500インデックスだけでいいという意見が強くなるのも理解できます。

でも、先進国株式の方が高パフォーマンスの時期があったのも事実です。再度そういう未来もあり得るだろうと思うか、そうであるとしてもS&P500だけでいいと思うかは、難しいところでしょう。未来の経済状況を正確に予測するのは不可能ですからね。

eMAXIS先進国株式との比較

次はeMAXIS先進国株式との比較です。設定日である2009年10月28日から2021年3月末までの比較です。

仮想スリム米国株式(S&P500)とeMAXIS先進国株式のリターン比較グラフ

緑のラインがeMAXIS先進国株式です。S&P500の圧勝です。過去10年程度で見ると、S&P500はとても魅力的です。米国以外の先進国に投資して、わざわざパフォーマンスを劣化させることはないだろう、そう考えても不思議ではありません。

リスク

変動率(ボラティリティ)は計算式で求めることができます。次は月次で求めたリスクを年率換算したものです。

月次で求めたリスクを年率換算したグラフ

赤のラインがS&P500です。先進国株式より高いですが、その違いを気にするほどのことではないでしょう。

変動率は数値化できるリスクですが、数値化できないリスクもあります。良く言われるのが「カントリーリスク」で、特定の国・地域にのみ影響を与える事象です。S&P500への投資は米国集中を意味しますが、それで本当にいいの?米国に何かあった時に困らないの?ということです。

具体的にはどんなことが起こり得るの?についてはエグいので書きませんが、米国以外にも投資する先進国株式の方が、リスクを低くできそうです。

いや、投資対象国が増えればどこかの国で問題が発生する確率は上がるわけで、投資対象国を増やせばいいというわけでもないでしょう。が、MSCIコクサイの場合、米国に次ぐ英国の投資割合は5%程度です。そのため、米国以外で何か問題が起きても全体への影響度は大きくありません。

いやいや、それだとS&P500もMSCIコクサイも、米国で何か問題が起きたらダメじゃん、ということも言えそうです。確かにそうです。

最大下落率

次は最高値からの下落率をプロットしたものです。

最高値からの下落率をプロットしたグラフ

リーマンショックもコロナショックも、最大下落率に差はほとんどありませんでした。

米国以外にも投資する意味

次は資産の3割程度(この比率は時価総額で変化します)を、米国以外の(日本を除く)先進国にも振り向けるメリットです。

  • 経済が好調な(高いリターンが期待できる)国・地域は変化するので、投資対象国を分散した方が平均的なリターンが得られる。
  • 米国集中投資による高いカントリーリスクを避けられる。

前者は、実際のリターン比較からもその趣旨は理解できると思います。でも後者は、米国がダメになったらどっちもダメじゃん、と思いますよね。確かにその場合はどちらも厳しいことになりますが、MSCIコクサイの国別投資割合は時価総額比で決まります。米国株価が低迷すると、米国への投資割合が自然に減って、米国以外の投資割合が増えます。

MSCIコクサイの2010年9月の米国比率はたったの53.7%だったそうです。少いですね。その後70%まで増えたのは、米国が他の先進国よりも成長したからです。将来逆のことが起こらないとは断言できません。

積立シミュレーション

2010年年初から11年3ヶ月、毎月初に3万円積立投資を継続したシミュレーションです。

仮想スリム米国株式(S&P500)とeMAXIS先進国株式の積み立てシミュレーションのグラフ

税引き前利益率は先進国株式の121%に対し、S&P500は173%1.4倍です。先進国株式のリターンも素晴らしいですが、S&P500はもっと素晴らしいです。

多くの人は現在の状況が継続すると考える傾向があるので、こういうグラフを見ると先進国株式よりS&P500の方がいいと思ったとしても、不思議はないですね。

人気はS&P500の圧勝

次は先進国株式とS&P500インデックスの人気2商品の、設定来の資金流出入額の累計の推移です。

先進国株式とS&P500インデックスの人気2商品の、設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

赤のラインがニッセイ外国株式、緑のラインがスリム先進国株式です。青のラインのスリム米国株式(S&P500)は先進国株式の人気2商品をあっさり抜き去ってしまいました。紫のラインのSBIバンガードS&P500も良く売れており、スリム先進国株式を抜き去るのは時間の問題です。

米国株式が好調である限り、この傾向は続くと思われます。

結論

これから10年、20年、30年、若い人なら40年以上の長期投資になりますが、世界経済がどうなろうとも決して売却しないで買い持ちできると思える方を選択するのが良いです。余裕資金がなくて積立投資を一時的に停止するのは問題ありませんが、途中で売却すべきではありません。大きな果実を手に入れる最良の手段は買い持ちです。

スリム米国株式とスリム先進国株式で考えると、投資対象はどちらも素晴らしく、十分高いリターンが期待できます。直近10年程度の比較だとS&P500の圧勝ですが、もしもの時のことを考えると先進国株式の方が安心感があります。

結局のところ、どちらに投資した方が未来により大きなリターンを手にできるかは、未来になってみないと分かりません。そのため、リスクを取って米国に集中投資するか、少しリスクと期待リターンを減らして米国以外の先進国にも投資するかの、難しい選択となります。

僕は、後者を選択しました。たとえ結果的に米国集中投資していた方がより儲かったとしても、その判断を後悔しないつもりです。そして、S&P500への(より高いリスクを負った)投資がうまくいくことを望んでもいます。それは先進国株式への投資も決して悪くなかったことにつながるからです。

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