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NYダウ・トリプル・レバレッジの運用コストと評価

大和アセットマネジメントはiFreeシリーズでレバレッジ型ファンドに力を入れています。そして別系統の商品でもレバレッジ型ファンドを多数設定しています。その棲み分けの基準は想像するしかないのですが、iFreeシリーズは信託期間を無期限としているようです。別系統の商品はそうでもないです。

NYダウ・トリプル・レバレッジは、その名の通りNYダウ指数の3倍ブル型ファンドです。最大の問題は、信託期間が10年しかないことです。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

NYダウ・トリプル・レバレッジ(愛称:3σ:さんシグマ)

2020年3月30日に税抜き信託報酬1.0%で設定されました。高いですね。でもiFreeレバレッジNASDAQ100(2倍ブル型)が0.9%なので、腰を抜かすほど高くもないです。

ですがiFree NYダウの税抜き信託報酬がたったの0.225%であることを考えると、3倍ブル型でも0.7%程度に抑えて欲しかったですね。(根拠に欠ける算数。)

  • 株式の組入総額と株価指数先物取引の買建玉の時価総額の合計額が、原則として信託財産の純資産総額の3倍程度になるように調整することにより、通常日々の基準価額の値動きがダウ・ジョーンズ工業株価平均の値動きの3倍程度となることを目指します。
  • 売買しているのはE-miniダウ先物です。株式は売買していません。
  • 円で為替ヘッジされます。
  • 信託期間が10年しかなく、2030年3月に償還されます。
  • 購入時手数料税抜き2.0%が設定可能で、証券会社を選ばないとしれっと徴収されます。
  • 5大ネット証券を含む8社で販売されています。(意外なことに大和証券では扱いがありません。)

もちろん、つみたてNISA適格ではありません。

運用コスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。iFreeレバレッジNASDAQ100と比較しています。

NYダウ・トリプル・レバレッジの運用報告書から計算したトータルコスト表

信託報酬が支配的ですが、隠れコストは高めです。が、第一期決算期間よりは大幅に削減されています。

NYダウ・トリプル・レバレッジのトータルコスト2期比較

先物の売買委託手数料が下がりました。

なお、レバレッジをかけることで生じる金利は運用報告書には出てこないものと思われます。

トータルコストは1.374%と高いですが、受益者の期待に応えることができているでしょうか。

リターン比較

iFree NYダウとの比較

次はNYダウ・トリプル・レバレッジの設定直後を避けた、2020年4月10日から2022年10月28日までの、iFree NYダウとの比較です。

iFree NYダウとNYダウ・トリプル・レバレッジのリターン比較グラフ

赤のラインがNYダウ・トリプル・レバレッジです。青のラインはリターン差で、NYダウ・トリプル・レバレッジーiFree NYダウです。債券ファンドと株式ファンドの比較みたいです。

3倍のレバレッジであることに加えて為替ヘッジされていることの複合要因でこうなっているわけですが、単に長期保有すればいいってことが分かります。

iFreeレバレッジNASDAQ100との比較

次は同じ期間における、iFreeレバレッジNASDAQ100との比較です。iFreeレバレッジNASDAQ100は2倍ブル型です。

iFreeレバレッジNASDAQ100とNYダウ・トリプル・レバレッジのリターン比較グラフ

緑のラインがiFreeレバレッジNASDAQ100です。青のラインはNYダウ・トリプル・レバレッジーiFreeレバレッジNASDAQ100です。

結果的にはびっくりするぐらい、いい勝負でした。でも今後のことは分かりません。リスクの高さはどっちもどっちでしょうか。

iFreeレバレッジS&P500との比較

次は同じ期間における、iFreeレバレッジS&P500との比較です。iFreeレバレッジS&P500は2倍ブル型です。

iFreeレバレッジS&P500とNYダウ・トリプル・レバレッジのリターン比較グラフ

緑のラインがiFreeレバレッジS&P500です。青のラインはNYダウ・トリプル・レバレッジーiFreeレバレッジS&P500です。

しばらく互角でしたが、2021年3月以降に差が開きました。が直近では差が縮まっています。これならNYダウ・トリプル・レバレッジよりiFreeレバレッジS&P500の方が堅実と感じる人もいるのではないでしょうか。

強気相場ならいいですが

次はeMAXIS NYダウの2013年9月以降のリターン推移です。縦軸は対数です。

eMAXIS NYダウの2013年9月以降のリターン推移グラフ

コロナショックによる株価暴落の底が2020年3月24日でした。NYダウ・トリプル・レバレッジはその6日後に設定されました。NYダウを含む米国主要株式指数はその後驚異的な回復を見せましたが、2022年は金融緩和バブルの崩壊で勢いがありません。コロナショック以降が異常だったのは確かですね。

レバレッジ3倍なので強気相場ではいいですが、弱気相場またはボックス相場だと扱いが難しいと思います。

売れ行きは

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は39億円です。

NYダウ・トリプル・レバレッジの設定来の資金流出入額の累計の推移

こういう商品の「あるある」ですが、パフォーマンスがめざましくなった頃から資金流入額が増えましたが、そうでもなくなると売れなくなります。長期保有よりタイミングを見ての売買を行う受益者が多そうです。

次はiFreeレバレッジNASDAQ100とiFreeレバレッジS&P500もプロットしたものです。緑のラインがiFreeレバレッジNASDAQ100です。レバナス人気には驚かされます。

iFreeレバレッジNASDAQ100とiFreeレバレッジS&P500もプロットしたグラフ

NYダウ・トリプル・レバレッジがマイナーな商品だということが良く分かります。

評価:リスクをコントロールできる人向きの商品です

3倍ブル型商品に投資したいけど、米国籍ETFより手軽に投資できる投資信託を好む人にとって、NYダウ・トリプル・レバレッジは良い選択肢になり得ます。高コストですが、強気相場では圧倒的なパフォーマンスを発揮するので、満足度は高いでしょう。

でも株価暴落時には回復するまでに長い期間を必要とするかも知れません。そして信託期間が10年しかないので、最悪、回復する前に償還日を迎えるということもありえます。もちろん、信託期間が延長される可能性もありますが(人気が高ければなおさら)、それを前提とするのは危ないでしょう。

おそらく、長期保有ではなくて、危なくなったら利益確定して撤退するという柔軟な対応ができる人向きの商品だと思います。

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