農林中金全共連アセットマネジメントは、農中<パートナーズ>シリーズでS&P500指数連動商品を2つ販売していますが、それらは農林中央金庫専売商品です。一方、NZAMシリーズは一般販売商品で、農林中央金庫では扱っていません。
明らかにターゲット層を変えてきたわけですが、証券会社間の競争が厳しくなった現在、人気を獲得するのは容易ではありません。
NZAMベータS&P500
2020年2月13日に税抜き信託報酬0.24%で設定されました。当時すでにスリム米国株式(S&P500)とSBIバンガードS&P500の税抜き信託報酬は0.088%だったので、同じ市場で競争するつもりはないのだろうと思いました。が、そうでもないようです。
- 商品名に「ベータ」とありますが、目論見書を見る限り普通のインデックスファンドです。
- つみたてNISA適格です。
- マザーファンドは農中<パートナーズ>の2商品と同じです。
- NZAMベータS&P500は一般販売商品で、SBI証券、楽天証券、松井証券、SMBC日興証券、auカブコム証券が扱っています。
いまどき税抜き信託報酬が0.24%のS&P500インデックスファンドを新規設定しても、ネット証券利用者をターゲットにしたのでは勝ち目はないはずです。そのうち販路を銀行窓口系に広げる計画なのかも知れません。
運用コスト
まだ運用報告書が公開されていないため、公式な運用コストは不明です。でも、ごまかしの効かない基準価額データから、他の商品と比較して高いのか安いのかは推測可能です。
VOOトータルリターンとのリターン比較
次はVOOトータルリターンとの比較です。NZAMベータS&P500の設定日から2020年11月30日までです。
青のラインはリターン差で、VOOトータルリターンーNZAMベータS&P500です。設定直後にコロナショックによる株価暴落に巻き込まれました。
次は暴落の底から回復基調になった、2020年4月8日からの比較です。
運用コスト差が大きそうです。次はVOOトータルリターンの運用コストを年率0.5%ポイント増量したものとの比較です。
設定後まもなくの比較なので、運用コストが一様でないあろうことを考慮すると、この程度が適量でしょう。でもこのことから、NZAMベータS&P500の隠れコストは安くはないと思われます。
スリム米国株式(S&P500)とのリターン比較
次はスリム米国株式とのリターン比較です。
青のラインが暴れていないので、運用は安定しているはずです。でも、その傾きから高コストなはずです。
次はスリム米国株式(S&P500)の運用コストを年率0.45%ポイント増量したものとの比較です。
これは、NZAMベータS&P500のトータルコストは、スリム米国株式(S&P500)より0.45%ポイントも高いことを示唆しています。
売れていません
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額はたったの0.28億円です。
やはり売れていませんね。設定日の純資産総額が0.1億円ありましたが、これは運用側の初期投資のような気がします。
評価:買う価値ありません
つみたてNISA適格、税抜き信託報酬0.24%、運用は安定している、でもきっと隠れコストが高く、トータルコストは0.5%を超えると思われます。きっと、農林中金全共連アセットマネジメント(NZAM)の知名度は低いでしょうから、何もしないでネット証券で売れるとは思えません。
実際、販売は苦戦しています。販路を銀行窓口系に拡大したら、状況は改善されるかも知れませんが、そちらには三菱UFJ国際投信のつみたてんとうシリーズなど、別系統のライバルがいます。
厳しいようですが、NZAMベータS&P500は買う価値ありません。S&P500インデックスに投資するなら、スリム米国株式(S&P500)かSBIバンガードS&P500が良いです。