NZAMベータ米国REITは、米国のリート(不動産投資信託)に手軽に投資したい人向けの商品です。長らくSMT米国REIT一択でしたが、より魅力的な信託報酬で設定されました。運用会社は農林中金全共連アセットマネジメントですが、農林中央金庫専売ではなく、ネット証券で普通に買えます。
NZAMベータ米国REIT
2020年3月12日に税抜き信託報酬0.43%で設定されました。大先輩にあたるSMT米国REITが0.55%なので、意欲的な設定と言えるかも知れません。選択肢が豊富な先進国リートインデックスと比べると高水準ですが、モノの価格は需給関係が大きく影響します。
- 商品名に「ベータ」とありますが、目論見書を見る限り普通のインデックスファンドです。
- ベンチマークはS&P米国REIT指数です。
- 購入時手数料はありませんが、解約時信託財産留保額0.1%が設定されています。
- NZAMベータ米国REITは一般販売商品で、SBI証券、楽天証券、松井証券、auカブコム証券が扱っています。
S&P米国REIT指数はつみたてNISAの指定インデックスですが、NZAMベータ米国REITは株式に投資しないため、つみたてNISA適格要件を満たせません。そのため、NZAMベータ米国REITはつみたてNISA適格ではありません。
S&P米国REIT指数
先進国リートインデックスの多くはS&P先進国REIT(除く日本)指数を採用しています。その米国比率は約73%です。次はNZAMベータ米国REITとスリム先進国リートの月次報告書から作成した、組入上位10銘柄の比較です。
セルを灰色に塗ったものは米国以外です。残り9銘柄は重複しており、順位も似通っています。リートについても、日本を除く先進国がいいか、米国集中がいいかで判断が分かれますね。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。連動する指数が同じSMT米国REITと比較しています。
どちらも隠れコストが異様に高いですが、NZAMベータ米国REITの高さが目立ちます。トータルコストは共に1.1%を超えています。高いですね。
次は隠れコストの明細です。高い項目を赤字にしています。
売買委託手数料と保管費用が高いです。NZAMベータ米国REITは設定されて1年なので、運用コストが高くなりがちということもあるかも知れません。
リターン比較
連動する指数が異なる商品のリターン比較には注意が必要です。
SMT米国REITとの比較
次はNZAMベータ米国REITの設定直後を避けた2020年4月1日から、2021年3月12日までの、SMT米国REITとの比較です。
青のラインはリターン差で、SMT米国REITーNZAMベータ米国REITです。運用報告書から計算したトータルコストはほぼ同じです。互角か、SMT米国REITの方がリターンが高いか、というところでしょう。NZAMベータ米国REITにはもっと頑張って欲しいですね。
スリム先進国リートとの比較
次は2020年4月1日から2021年3月12日までの、スリム先進国リートとの比較です。右軸のスケールを変えています。
青のラインはスリム先進国リートーNZAMベータ米国REITです。この比較期間だとスリム先進国リートの方がリターンが高いです。
SMT米国REITとeMAXIS先進国リートの比較
次はSMT米国REITの設定直後を避けた2015年11月5日から2021年3月12日までの、SMT米国REITとeMAXIS先進国リートの比較です。
青のラインはeMAXIS先進国リートーSMT米国REITです。時期によって有利不利が変わりますが、この比較期間だと互角と言っていいでしょう。
S&P500とMSCIコクサイの比較
次は同じ期間における、iシェアーズ米国株式インデックスとeMAXIS先進国株式の比較です。S&P500種指数とMSCIコクサイ指数の比較になります。
この比較期間だとS&P500の圧勝です。でもリートは株式のような差を付けられていません。
不人気です
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は0.35億円しかありません。
資金流入は続いていますが、金額が少いです。
次はSMT米国REITもプロットしたものです。純資産総額は2.4億円です。
緑のラインがSMT米国REITです。左端が浮いているのは、設定日にそれぞれ1億円、1,000万円あったからですが、おそらく運用側による初期投資だと思われます。
SMT米国REITの極端な増減は運用側によるものかも知れません。それを無視しても、不人気です。
評価:微妙です
S&P500米国REIT指数に投資したいなら、SMT米国REITとの二択になります。どちらも高コストですが、将来への期待を込めてNZAMベータ米国REITの方がいいと思います。
でもこの指数は不人気なので、繰上償還のリスクが気になります。投資するとしても、純資産総額の推移を気にした方がいいでしょう。
S&P500米国REIT指数へのこだわりがないなら、よりローコストな選択肢が豊富な先進国リートインデックスが無難だと思います。