一般NISAの後継となるはずだった新NISAは、実施1年前に廃止になりました。非課税期間無期限のシン・NISAにとって代わられました。この記事は過去の記録として残しておきます。
インデックス投資に振り向けられる余裕資金が40万円ある場合、最優先で利用すべきは「つみたてNISA」でしょう。では余裕資金が120万円ある場合はどうでしょうか。一般NISAに120万円投資して、5年後に特定口座で運用を続けるのと、つみたてNISAに40万円投資するのを3年続けるのではどちらが有利でしょうか。これを次の記事で確認しました。
一般NISAで非課税枠が付与されるのは2023年まででしたが、2024年から新NISAが開始することになりました。一般NISAから新NISAの2階部分へロールオーバーが可能なので、これを利用すると、2020年の一般NISAの非課税期間を10年にすることが可能です。
そうなると、年間120万円の非課税枠を満たせる余裕資金がある人には、一般NISAがとても魅力的に映るかも知れません。我が家はそうです。では、現在余裕資金が120万円ある場合に、次のどちらが有利でしょうか。
- 一般NISA+新NISAで非課税枠120万円✕非課税期間10年、その後特定口座で10年
- つみたてNISAで非課税枠40万円✕3年✕非課税期間20年
これを暗算で視覚化できる高IQの人もいると思いますが、僕には無理なので専用プログラムに働いてもらいました。
どちらが有利かの判断基準
次の2つの投資方法における、税引き後評価額をグラフにプロットします。
- 120万円を一般NISAに投資します。5年経過後に新NISAの2階部分にロールオーバーします。その5年後に特定口座に移管されます。
- つみたてNISAに40万円投資するのを3年続けます。
- 一般NISAは比較期間の初日に一括投資します。
- つみたてNISAでは年初一括投資の場合、40万円一度には買えないはずですが、ここではそれができるものとします。これを3年継続します。
- 投資対象の基準価額は期待リターンを決めて数学的に生成したものを使います。
- 比較期間は2020年1月から2039年12月末までの20年間です。
- 特定口座では利益に20.315%の譲渡税がかかるものとします。(本当は、復興特別所得税は2037年末までです。)
税引き後評価額が多い方を有利とします。
新NISAにロールオーバーしない場合
最初に種明かしをします。まず一般NISAのみの(新NISAにロールオーバーしない)場合について説明します。
次は投資対象のリターンが年率5%の場合のグラフです。左端は2020年1月、右端は2039年12月末です。
緑のラインは120万円を一般NISAに、2020年年初に一括投資した場合の税引き後評価額です。5年間は非課税ですが、その後特定口座に移管されるので、それ以降は移管時の評価額を元本として利益に課税されます。
黄色に塗ったのが2年、緑に塗ったのが3年です。その後、緑のラインは特定口座なので、課税後で考えるとリターンの上昇率がそれまでより下がります。
赤のラインはつみたてNISAの3本の非課税枠の合計評価額です。黄色に塗った部分で階段状なのは40万円、80万円、120万円と元本が増えるからです。最初の5年間は一般NISAの評価額に追い付くことは不可能ですが、その後は特定口座対非課税口座となるため徐々に差が縮まります。
赤の矢印の位置でついに非課税口座が特定口座に勝ちます。その後は差が広がる一方です。特定口座では20.315%の譲渡税が重くのしかかるからです。
青のラインは税引き後評価額の差です。分かりやすく単位を円にしました。青のラインはマイナスからスタートしますが、5年後から上昇し始め、損益分岐点とも言える赤の矢印の位置で0になり、その後は増える一方です。
つまり、投資対象が数学的に生成した期待リターンのような動きをするなら(現実にはありえません)、損益分岐点を超えてホールドできるならつみたてNISAの方が有利、それより前に売却したいなら一般NISAが有利と言えます。
新NISAにロールオーバーする場合
新NISAにロールオーバーする場合です。
黄色に塗ったのが2年、緑に塗ったのが8年です。その後、緑のラインは特定口座なので課税後で考えると、リターンの上昇率がそれまでより下がります。
赤の矢印の位置でついに非課税口座が特定口座に勝ちます。この損益分岐点が(ロールオーバーがあることで)5年繰延べされました。当然そうなりますよね。
期待リターン年率3%の場合
元本120万円は20年後に税引き後で208万円程度に増えました。つみたてNISAの方が5.1万円有利でした。
損益分岐点は2035年3月です。15年以上ガチホできる自信があるならつみたてNISAでいいでしょう。
期待リターン年率4%の場合
元本120万円は20年後に税引き後で251万円程度に増えました。つみたてNISAの方が7.5万円有利でした。
損益分岐点は2035年4月です。15年以上ガチホできる自信があるならつみたてNISAでいいでしょう。
期待リターン年率5%の場合
元本120万円は20年後に税引き後で303万円程度に増えました。つみたてNISAの方が10.4万円有利でした。
損益分岐点は2035年6月です。15年以上ガチホできる自信があるならつみたてNISAでいいでしょう。
結論:15年以上ガチホできるなら、つみたてNISAが有利
若いけど余裕資金が少ないなら、つみたてNISA一択です。若くないけど余裕資金があるなら、一般NISA+新NISAによる、非課税枠120万円✕非課税期間10年は魅力的な選択肢になります。余命の関係で15年以上ガチホできる自信がない場合、または、ライフプラン上15年以内に売却したい場合、特にそうだと思います。
40万円の非課税枠をもらってから、非課税期間20年というのは長いです。来年からでも長いですが、今から20年後にもらう分のことを考えると、余命が気になるかも知れません。次のどちらが自分に合っているか、寿命のことも考えて判断するのが良いでしょう。
- 非課税枠40万円✕非課税期間20年
- 非課税枠120万円✕非課税期間10年
少額投資非課税制度として、シンプルな「つみたてNISA」のみが生き残った方が普及のためには良かったかも知れません。でも、現実は、一般NISAが形を変えて5年延命されました。新NISAは制度が複雑だとかの批判もありますが、選択肢が増えたことは大歓迎です。せっかくの非課税制度ですから、将来後悔しにくい選択をしたいものです。