日本を含む全世界株式に時価総額比で投資する際に、楽天全世界株式とスリム全世界株式(オール・カントリー)のどちらが良いか迷う人も多いことでしょう。どちらも先進国株式、新興国株式、国内株式に投資しますが、ベンチマークが異なります。
楽天全世界株式はVT(バンガード社のETF)を買うだけのインデックスファンドで、楽天VTとも呼ばれます。VTのベンチマークはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスです。
スリム全世界株式(オール・カントリー)のベンチマークはMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスです。ベンチマークが同じなら、トータルコスト、運用の安定性、純資産総額などで判断すれば良いのですが、この場合は難しいです。
その難しい悩みを解消する比較結果をまるっとお見せします。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
国別投資比率
全世界株式と言っても、ベンチマークが異なるので、国別投資比率も微妙に違います。次は2021年12月時点の楽天全世界株式とオール・カントリーの国別投資比率の比較表です。
でもこの違いから、どちらが好みだと判断する人は少ないと思われます。
組入銘柄数
組入銘柄数は大きく違っています。
- 楽天全世界株式:9,255
- オール・カントリー:2,938
楽天全世界株式の方がより多くの銘柄に分散投資していると言えますが、どちらがパフォーマンスが良くなるかは時期によって変わります。この組入銘柄数の違いは、好みが分かれるところでしょう。
トータルコスト
次は運用報告書から計算したトータルコスト(信託報酬+隠れコスト)です。楽天全世界株式の信託報酬は、VTの経費率(0.08%)を含みます。
トータルコストはオール・カントリーの方が安いです。運用報告書にある数値はあてにならないものですが、この2商品については、大きくは違っていないと考えています。これでベンチマークが同じなら、オール・カントリーが圧倒的に有利になるところですが、そうではないのでまだ決めかねるところでしょう。
過去のパフォーマンス
次はオール・カントリーの設定日直後を避けた、2018年11月15日から2022年1月14日までの、楽天全世界株式とオール・カントリーのリターン比較です。
青のラインはリターン差で、オール・カントリーー楽天全世界株式です。青のラインが上下動を繰り返していることから、時期によって有利不利が変わるものの、この比較期間だと互角と言えます。
2012年からパフォーマンスを比較
もっと長期間の比較をしたいのですが、基準価額データが存在しません。そこでVTとACWI(MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスに連動するETF)のトータルリターンの運用コストを調整することで、楽天全世界株式とオール・カントリーの仮想データを生成して比較します。
仮想楽天全世界株式の作り方
このブログでは楽天全世界株式のトータルコストを推測するのに、VTトータルリターンを利用しています。ここではVTトータルリターンの運用コストを、年率0.21%ポイント増量したものを、仮想楽天全世界株式とします。
次は楽天全世界株式の第三期以降2021年12月30日までの、本物と仮想楽天全世界株式のリターン比較です。
リターン差を示す青のラインはほぼフラットです。
仮想オール・カントリーの作り方
ACWIはiShares社のETFです。ベンチマークはオール・カントリーと同じですが、オール・カントリーとリターン比較をするとがっかりします。
青のラインはオール・カントリーーACWIトータルリターンです。オール・カントリーとACWIの共通点は、ベンチマークが同じだけなので、リターン差が多少暴れるのは当然として、この結果はひどいです。
でもせっかくですから、ACWIトータルリターンの運用コストを調整して仮想オール・カントリーを生成します。ACWIの経費率は0.32%で、ACWIトータルリターンよりオール・カントリーの方がリターンが高いです。そこで、控え目にACWIトータルリターンのリターンを年率0.25%ポイント増量したものを、仮想オール・カントリーとして利用します。
ACWIトータルリターンの運用コストを削減したので、青のラインがフラットに近付きました。
仮想オール・カントリーと仮想楽天全世界株式の比較
VTは2011年12月19日にベンチマークをFTSEオールワールド・インデックスからFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスに変更しています。(コメント欄で教えて頂きました。)そこで2012年年初から比較します。2018年11月15日以降は本物の比較結果が手元にあるので、2018年11月14日までの比較とします。
まあ互角ですね。
純資産総額
次は楽天全世界株式とオール・カントリーの、設定来の資金流出入額の累計の推移です。楽天全世界株式の純資産総額は1,509億円、オール・カントリーは4,089億円です。
赤のラインが楽天全世界株式、緑のラインがオール・カントリーです。2019年までは楽天全世界株式との差が広がる一方でしたが、2020年になってオール・カントリーが急速に資金流入額を増やし、楽天全世界株式を抜き去りました。
オール・カントリーの人気は圧倒的ですが、楽天全世界株式の人気は盤石でよく売れています。この人気の差を商品選択に強く反映させる必要はないでしょう。
三重課税問題
マニアックな話ですが、楽天全世界株式には三重課税問題があります。
三重課税問題は都市伝説ではなく、実在するものなので気にした方がいいです。でも、三重課税問題があるからダメとするのではなくて、それも含めて総合的に判断するのが良いです。
オール・カントリーのベンチマークが楽天全世界株式と同じだけど、オール・カントリーは現物株運用だから三重課税問題がないなら、オール・カントリーの方がかなり有利になりますが、ベンチマークが違うので、三重課税問題は「気にする違いのひとつ」と捉えるのがいいでしょう。
結論:好きな方を選ぶといいです
- VTまたは楽天VTという単語に心がときめくなら、楽天全世界株式でいいでしょう。その方が暴落時に心が乱れる可能性が減るからです。(オール・カントリーを選択しても買い持ちできなければ意味がありません。)
- どちらかのベンチマークに好き嫌いがあるなら、好きな方を選んで下さい。以下同文です。
- 楽天全世界株式にある三重課税問題も考慮すると、運用コストはオール・カントリーの方が低いと思いますが、ベンチマークと運用形態が違うので、過度に気にしなくていいでしょう。
- 「業界最低水準の信託報酬を目指し続ける」という売り文句が強みのスリムシリーズが好きなら、オール・カントリー一択で後悔することはないでしょう。
悩みは解消されたでしょうか。