次の記事で債券インデックスファンドの為替ヘッジ効果を確認しました。
確認することになったきっかけは、楽天バランスファンド3姉妹が債券部分を円でヘッジするからでした。株式部分は楽天VTで、為替ヘッジはありません。
債券インデックスファンドで為替ヘッジ有り無しのリターンを比較すると、とても同じ資産に投資しているとは思えない結果となりました。驚きました。
選択肢は少ないながら、債券インデックスファンド以外にも為替ヘッジ有り無しが選択できるものがあります。この記事では馴染みのある先進国株式インデックスファンドのリターンが、為替ヘッジの有り無しでどう変わるのかを確認します。
先進国株式インデックスファンドでヘッジ有りのもの
毎月分配型、ラップ口座専用、DC専用を除いてもそこそこあります。
- Funds-i 外国株式
- たわらノーロード先進国株式
- iFree 外国株式
- ステートストリート先進国株式
- つみたて先進国株式
他にもあるようでしたら教えて頂けると幸いです。(実はもう1本見つけました。それは後ほど登場します。)
この中からFunds-i 外国株式とたわら先進国株式に参加して頂きます。(残りは比較可能期間が短いなどの理由で不参加です。)
Funds-i 外国株式
為替ヘッジ有りは3年以上遅れて設定されました。為替ヘッジ有りの設定日直後を避けて、2013年5月17日から2018年8月10日までで比較します。
赤のラインがヘッジ無し、緑のラインがヘッジ有りです。債券インデックスファンドの比較ではグラフの形状があまりに違うため最初間違ったデータを比較したと思ったほどですが、先進国株式はそれらしいですね。リスク(変動率)を見事に抑えていると説明されると納得してしまいそうです。
たわら先進国株式
為替ヘッジ有りは10ヶ月ほど遅れて設定されました。為替ヘッジ有りの設定日直後を避けて、2016年10月13日から2018年8月10日までで比較します。
Funds-i 外国株式と同じですね。
Funds-i 外国株式とたわら先進国株式はベンチマークが同じです。どちらも運用は優秀であることが分かっています。(ニッセイ外国株式とは違います。)
では為替ヘッジは商品が異なっても同じ効果が得られるのでしょうか。
4本まとめてプロット
ヘッジ有りと無しで2つのグループを形成しています。重なっているラインに徐々に差ができているのはトータルコスト差によるものです。このグラフを見る限り、Funds-i 外国株式とたわら先進国株式の為替ヘッジは同じ効果を生んでいると言えそうです。
為替ヘッジ有りのリターンの差を見る
青のラインがリターンの差です。運用がひどいと、あるいは先物やETFの購入でごまかすとベンチマークとの差(乖離)が増えるためリターンの差は激しく暴れます。このスケールでこの様子なら問題ないと思います。これはFunds-i 外国株式とたわら先進国株式について、次の条件が満たされない限り得られない結果です。
- ベンチマークを忠実にトレースできている。
- 為替ヘッジが適切にできている。
こんなことはまぐれではできません。次はヘッジ無し同士の比較です。
青のラインの形状は微妙に違いますが、変化率は同じと言っていいでしょう。
積み立てシミュレーション
最初のグラフから受ける印象はこうです。
- 為替ヘッジがあるとリスク(変動率)が小さくなります。確かにその効果は認めます。
- でも先進国株式に投資するのはリターンの高さを求めるからなので、その観点では為替ヘッジは不要ではないか。
- 為替ヘッジ有りのリターンの劣後は、先進国株式に債券をいくらか混ぜた時のものに似ている気がします。
ではせっかくなので一般人のベストプラクティスである積み立て投資をした場合の比較をします。次は2013年6月から2018年7月まで毎月初に5万円積み立てた時のリターン比較です。
凡例の右側に利益率があります。ヘッジ無しの方が有利です。でもどちらが有利になるかは比較期間で大きく変わります。次からは積み立て投資期間1年をずらして比較します。
2013年8月から1年間
ヘッジ無しの方が有利でした。
2014年8月から1年間
ヘッジ無しの方が有利でした。
2015年8月から1年間
この比較期間だとヘッジ有りの方が有利でした。これはこの比較期間の騰落率の変化を見ると納得できます。
2016年8月から1年間
ヘッジ無しの方が有利でした。
2017年8月から1年間
ヘッジ無しの方が有利でした。
結論:先進国株式に為替ヘッジは不要では
比較期間が短いので確信を持てませんが、僕は先進国株式インデックスファンドに為替ヘッジは不要だと思いました。為替ヘッジがあると変動率が抑えられるので、変動率という意味でのリスクは小さくなりますが、それは僕にとって魅力的ではありません。
現実の問題として先進国株式インデックスファンドで為替ヘッジ有りが選択できる商品は限られています。スリム先進国株式にはありませんが、その姉妹品であるつみたて先進国株式にはあります。これは明らかに商品戦略から来る違いで、つみたて先進国株式には両方あった方が売りやすい、利益が出せると判断したのでしょう。僕はスリム先進国株式を選択しましたが、それの為替ヘッジ有り版は存在しませんし、為替ヘッジ有りに魅力を感じないので不満にも思いません。
続きが知りたい
最初のグラフを再掲します。
先進国株式のみ vs 先進国株式+何かの比較だとこの後差が広がって先進国株式のみが下落しても余裕で高いリターンを維持できるのですが、為替ヘッジ有り無しの場合の動きがどうなるかは知りません。この続きが知りたいのですが、それには時間が過ぎるのを待つしかないですね。でも逆に言えばFunds-i 外国株式が繰上償還されない限り待っていれば結果が分かるということです。楽しみが増えました。
比較期間の長いものを発見
僕は通常記事を公開の数日前には書いてストックしています。ストック中に気が変わっていじることも良くあります。この記事の場合はたまたま良い素材を発見したので公開前に追記しました。
日興アセットマネジメントが2001年に設定した息の長い先進国株式インデックスファンドがありました。ベンチマークはMSCIコクサイです。信託報酬税込み0.9072%、信託財産留保額0.3%という時代を感じる設定ですが、ヘッジ有り無しの両方が同一日に設定されています。
グラフを表示するボタンをクリックするのに指が震えました。
- ヘッジ無しの方がリターンの差を広げています。
- リーマンショック時にはヘッジ無しはヘッジ有りと同じぐらいまで下げています。下落率はヘッジ無しの方が圧倒的に大きいですが、それはリターンの高さの裏返しです。
- ヘッジ有りの方がリターンが高い期間もありますが、2013年以降はヘッジ無しの圧勝です。
最終結論:先進国株式に為替ヘッジは不要です
長期投資を前提にした場合の結論です。僕はこの過去17年間のデータからそう判断します。そして、先進国株式に投資したいけど為替ヘッジの有り無しの選択で迷っている人から相談を受けたら、次のように答えます。
- 長期投資を前提とするなら為替ヘッジは不要です。
- 長期投資を前提としていないなら、インデックス投資は考え直した方がいいです。
- 先進国株式に投資するならスリム先進国株式一択です。