インデックス投資の世界では「ドルコスト平均法」というキーワードが頻出します。意見は様々で、中には極端なものも散見されます。
この記事では僕のマイルドな考えを書きます。
ドルコスト平均法が有利に働く例
セゾン投信はこういう説明をしています。分かりやすいです。
引用:セゾン投信
これは基準価額の良くある変動例に、積み立てを重ね合わせたものです。この例ではドルコスト平均法は有利に働きます。
時間を分散して同じ金額分購入する方法
ドルコスト平均法とは、たとえばあるインデックスファンドを毎月、同じ金額分購入することを指します。そうです。普通の積み立てでです。
インデックスファンドを積み立てで購入する場合、購入する日と金額が固定されます。実際には購入する日は土日を避けるのでいつも同じではありませんが、金額は自発的に変更しない限り一定です。このことが売り手(証券会社など)と買い手(僕ら)の双方にメリットをもたらします。
なお、ここでは毎月積み立てるインデックスファンドを例にします。
積み立ては売り手にとって極めて都合が良い
積み立ては一度設定すると毎月自動的に繰り返されます。そして人は基本的にめんどうなことを嫌うので、一度設定すると放置しがちです。積み立てていることを忘れてしまうことすらあります。そうすると引き落とし口座に残高がある限り継続したキャッシュフローが発生します。
その結果、売り手はある程度の期間その金額での積み立てが毎月繰り返されることを期待できるのです。
積み立ては買い手にとっても都合が良いことは間違いない
インデックス投資で大きな果実(リターン)を得るためにはそれなりの投資をしなければなりません。投資金額が小さいと損益率が高くても手にできる利益の額はそれほど魅力を発揮しません。積み立てなら毎月拠出可能な金額を設定し、それが毎月繰り返されることで自動的に投資額が増えていきます。
積み立てでなくて、毎月必ず購入すると決めた場合は往々にしてこうなります。
- 毎月必ずどこかのタイミングで購入すると決めていても、すぐにめんどくさくなってやめてしまう。
- 何度か忘れてしまった月を重ねたあげく、どうでもよくなってやめてしまう。
- 頑張って毎月購入していたが、その都度基準価額を見ていてその悲しい状態に我慢できなくなって購入するのをやめてしまった。
極端なことを言うと、積み立ては設定したらそのことを忘れて(も)いいのです。
売り手のセールストークにだまされないようにしよう
ドルコスト平均法にはデメリットもリスクもあります。メリットばかりではないですし、リスクがなくなるわけでもありません。万能でもありません。
売り手は時として都合の良い説明しかしないことがあります。そういうものにだまされないようにしましょう。
ドルコスト平均法のデメリットと反論
ドルコスト平均法にはデメリットもあります。が、それだけを取り上げてメリットまで消し去る論調には賛同しかねます。
基準価額が上昇し続ける場合
基準価額が一本調子で上昇する場合は、最初にどーんと購入した方がリターンは大きくなります。確かにそうですが、それは後になってから分かることです。
- 基準価額が今後どうなるかは誰にも分からないのだから、基準価額が上層し続ける場合にはドルコスト平均法は不利だと言うのはフェアじゃないです。
- このインデックスファンドの基準価額はこれから上昇し続けるはずだと予想して最初に大きな金額を投入した場合、予想が外れると悲惨なことになります。大きな利益を期待したのに大損するかも知れないのです。
- 最初にどーんと購入するにはそれだけの金額をまとめて投入できる(高い)リスク許容度が必要です。ドルコスト平均法なら、毎月少額を様子を見ながら投入することになるので相対的に低いリスク許容度で対応できます。
基準価額が下降し続ける場合
基準価額が一本調子で下降する場合もドルコスト平均法は不利です。でもこの場合に不利じゃない方法ってなんでしょう。買わないのが一番ではないでしょうか。でもそれは予見できませんよね。そもそも怪しそうなインデックスファンドだったら積み立てようと思わないでしょうし。
この場合も後から分かることだし、基準価額が下降し続けるのは将来性がないから購入をやめるのがいいわけで、ドルコスト平均法が向いていないとことさらに言わなくて良いと思います。
また、最初にどーんと購入したら最悪ですが、ドルコスト平均法ならある程度積み立てた後で「こいつは選択を間違ったかも知れない」と考え直して積み立てを中止すれば、最初にどーんとよりも損失を少なくできます。
ドルコスト平均法が効果を発揮している実例
これは僕が個人型確定拠出年金で積み立てている「EXE-i先進国株式ファンド」の基準価額の変化です。積み立て開始時期以降を切り出しています。
引用:モーニングスター
次は年別の積み立て総額(青線)と含み益込みの金額(緑の棒)です。
2016年に入って基準価額が下がり、10ヶ月ほどその下がった状態を維持しました。結果的にはこの基準価額が下がった期間も続けた積み立てが現在の大きな含み益につながっています。
ドルコスト平均法でなくても時間分散は必須
基準価額の変動は予測できないので、あるタイミングでどーんと一気に大きな金額を投資するのは大きな賭けです。時間を分散して、投資金額を小分けにして購入するのはそもそもリスクがあるインデックスファンドには必須の対応だと思います。
時間分散する際に、できれば基準価額が下がっているところで購入できればいいのですが、そのタイミングも予見できません。なので、毎月同じ額を購入するけどタイミングは基準価額の変動を見計らって、というのには無理があります。
結局無難で長続きするのが普通の積み立てです。
結論:普通に積み立てれば良いのです
ドルコスト平均法とか言わないで普通に積み立てを続けるのがいいです。
インデックスファンドの選択を間違っていなければ、基準価額は変動を繰り返しながらも右肩上がりで成長します。上昇に遅い早いはありますが、世界経済はそうなることを前提に動いています。(過去はそうでしたが、未来もそうだと約束されていないのも事実ですが。)なので毎月コツコツ積み立ててを継続すれば、ドルコスト平均法のメリットを享受できます。
が、積立額を見直したり、中止したりする「見直し」は全く不要でもありません。
- 基準価額が異様に、そのインデックスファンドとして分不相応に高くなっている時に購入するのは不利なので積立額を減らしたりいったん積み立てを中止(売却じゃないですよ)して様子見した方がいいかも知れません。
- 基準価額が下がり続け、純資産額も減少傾向でファンドの将来に不安を感じる場合も積立額を減らしたりいったん積み立てを中止した方がいいかも知れません。
- 基準価額が下がる経済的な要因が分かっている場合は、しばらく我慢すれば回復が期待できるので追加購入のチャンスです。積み立て額を増やすとか、スポット購入を検討していいと思います。
良くほったらかしがいいと言われますが、大切なお金をリスクのあるものに投資しているのですが、そのままでいいかどうかぐらいは時々確認すべきでしょう。ただ、基準価額が変動するのは避けられないので、下がった期間が1年ぐらい続いても動揺しない(僕は逆に喜んでしまいますが)ことが肝要です。ほったらかしがいいと言っている背景には基準価額の変動を気にしないようにする意図があるのだと思います。