インデックス投資

分配金の抑制による課税の繰り延べ効果は素晴らしすぎます

株式に投資すると多くの場合配当金が得られます。たとえばS&P500種指数をベンチマークにしているVOOを自分で買った場合、ETFは必ず配当金を出さねばならないルールなので、年4回配当金がドルで口座に入金されます。その際、特定口座(源泉徴収あり)だと、配当金は米国で10%課税された後国内で20.315%課税されます。この配当金を自分で再投資するとしても、ETFは一株単位でしか買えないため、配当金の再投資効率が悪いです。また、ETFの取引価格が高い場合、そもそも配当金を再投資できるだけの金額をもらうためには、保有株数を多くする必要があります。

では、日本の良質なインデックスファンドがどうしているかと言うと、受益者のために税務リスクを負った上で分配金を抑制してくれています。たとえば、SBIバンガードS&P500はVOOから年4回もらえる、米国での10%課税後の配当金を再投資しています。そしてこれまでのところ分配金を出していません。(決算を一度もしていないから、というツッコミは我慢して下さい。)本来配当金にかかるはずだった20.315%の譲渡税はいつかかるかと言うと、資産を売却した時です。それまで課税を繰り延べできるわけです。

VOOの配当金実績

次はVOOの配当金の利率の推移です。米国での10%課税後です。

VOOの配当金実績グラフ

2014年以降は1回あたり0.4から0.5%で、年4回もらえるので年平均で見ると2%に少し足りない程度です。

VOOの配当金を再投資するのに必要な保有株数

2014年以降、配当金が出るたびにその配当金で1株再投資するためには、平均285株の保有が必要でした。(配当金は米国で10%課税、国内で20.315%課税後にドルのままで、買い付け手数料ゼロでVOOを買える場合。)

1株200ドルとすると、57,000ドル(1ドル108円なら約615万円)保有していないと、課税後の配当金で1株買えない(再投資できない)計算になります。

いやいや、配当金が出た次の積立投資のタイミングで、配当金に資金をプラスして買えばいい、という考えもできます。が、VOOは一株単位でしか買えないので、今なら16,000円の倍数にする必要があります。

SBIバンガードS&P500は配当金をどうしているのか

次はSBIバンガードS&P500とVOO取引価格(円換算後)の比較です。2019年11月1日から2020年1月31日までです。

SBIバンガードS&P500とVOO取引価格(円換算後)の比較グラフ

VOOは配当金を無視しています。青のラインはリターン差で、SBIバンガードS&P500ーVOOです。傾向として右肩下がりなのは、SBIバンガードVOOが毎営業日運用コストを純資産から天引きするためです。

赤の矢印の位置で段差ができています。これはSBIバンガードS&P500が配当金を取り込んだ(再投資した)ためです。

次は配当金(米国での10%課税後)を再投資したVOOトータルリターンとの比較です。

SBIバンガードS&P500と配当金(米国での10%課税後)を再投資したVOOトータルリターンとの比較グラフ

段差がなくなりました。これは、SBIバンガードS&P500は、VOOの保有で得られた配当金に国内課税することなく、再投資していることの裏付けです。(ただし、配当金を全額VOOの買い増しに回さないで、いくらか現金で保有している可能性もあります。)

河童証券登場

河童証券がVOOを買うだけのインデックスファンドを組成したとします。2種類あります。

  • タイプAは配当金を抑制します。SBIバンガードS&P500と同じです。
  • タイプBは配当金を年4回出します。VOOからもらえる配当金は資産に取り込まずにそのまま受益者に分配します。

AさんはタイプAに投資します。BさんはタイプBに「配当金再投資型」で投資します。どちらも特定口座(源泉徴収あり)です。AさんとBさんが将来得られるリターンにどれぐらいの差が生まれるでしょうか。

較べようとしているのは、配当金への課税の繰り延べ効果です。

控え目なシミュレーション

配当金を除く期待リターン(キャピタルゲイン)を年率5%、配当金の年利(米国10%課税前)を2%の控え目な条件でシミュレーションしました。2020年年初から2029年末までの10年間です。分かりやすくするため、AさんもBさんも2020年年初に100万円投資し、10年間ガチホしたとします。

次は評価額の比較です。

控え目なシミュレーション結果のグラフ、評価額の差

赤のラインがタイプA、緑のラインがタイプBです。青のラインはリターン差です。

評価額で見ると、10年間で6%ポイント強の差が生まれています。でもこれは売却時の課税前です。

課税の繰り延べ効果

次は売却時の課税後の手取り額の比較です。右軸のスケールを変えています。

控え目なシミュレーション結果のグラフ、税引き後評価額の差

青のラインは複利効果で弓なりに曲がっています。

10年間で1.5%ポイント程度の差が生まれています。同じ金額を投資し、同じだけのリスクを負ったのに、Aさんの方が得をしました。元本100万円に対し、手取り額の差は14,473円です。

これが課税の繰り延べ効果です。少ないですか?年平均だと0.14%ポイントです。SBIバンガードS&P500の信託報酬より高いですよ。

VOOの過去の実績

VOOが設定されたのは2010年9月です。過去10年の米国株式は絶好調でしたが、それはVOOの取引価格の推移を見ても分かります。

次はVOOの2011年年初から2020年3月末までの取引価格の推移です。取引価格なので、配当金を一切含みません。円換算しています。

VOOの2011年年初から2020年3月末までの取引価格の推移グラフ

今回の株価暴落で大きく下げましたが、利益率は174%もあります。単純に平均すると年率18.8%にもなります。2020年からの10年間が同じくらい良いと願うのには無理があるかも知れませんが、仮に期待リターンが年率8%、配当金の年利(米国10%課税前)が2%だったらどうなるでしょうか。保有期間10年です。

期待年率8%のシミュレーション結果のグラフ、税引き後評価額の差

青のラインの弓なりの度合いが上がりました。10年間で2.5%ポイントを超える差が生まれました。

課税の繰り延べが期待するのは複利効果

タイプAとBの違いは、配当金への課税を今するか後でまとめてするかしかありません。なのにどうしてこのように無視できない差が生まれるかと言うと、配当金の国内課税されなかった分も基準価額の上昇の恩恵を複利で受けられるからです。非課税口座でない限り、最後売却時に利益に課税されてしまうものの、複利効果がもたらす恩恵は圧倒的です。

次は最初に出た控え目な条件のシミュレーション期間を20年にしたものです。

控え目なシミュレーション結果のグラフ、税引き後評価額の差、期間20年

青のラインの弓なり度合いが半端ないです。10年間で1.5%ポイント程度の差だったのが、20年間だと9.0%ポイントを超えています。元本100万円に対し、手取り額の差は93,808円です。

でも、青のラインの形状を見て分かる通り、有意義な差(効果)を得るには年数が必要です。3年以下では実感できないでしょう。でも複利効果により、保有期間が長くなると大きな差が開きます。長期投資家ほどその恩恵に預かれるわけです。

分配金の抑制

投資信託にはいまだに「分配型」が生き残っているばかりか、現在でも普通に組成されています。資産形成を目的とした場合、分配型に経済的合理性はなく、つみたてNISAの適格要件には分配頻度が毎月でないもの、とあるぐらいです。いまどき分配型を組成すると聞いだだけで、そのシリーズの意図が透けて見えて嫌悪感をおぼえます。

事情があって、良質なインデックスファンドも目論見書で無分配型と主張できませんが、日本の証券会社の多くは受益者のために分配金を抑制してくれています。その結果、長期保有時に得られる、配当金への課税の繰り延べ効果は素晴らしすぎます。

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