最近NASDAQ100のパフォーマンスが半端ないです。興味を持ち始めた人も多いのではないでしょうか。NASDAQ100に投資するのに、最も手軽な商品はiFree NEXT NASDAQ100ですが、海外ETF好きな人はQQQを選択するかも知れません。
もうひとつの選択肢として、NEXT FUNDS NASDAQ-100(1545)があります。国内籍ETFです。好き嫌いは別にして、投資対象として見た時、QQQとどちらが有利でしょうか。
更新情報
NEXT FUNDS NASDAQ-100(1545)の売買単位が10株から1株に変更されました。(プレスリリース)これで圧倒的に売買しやすくなりました。
また、こちらの参照データを更新しました。
QQQ
QQQはインベスコ・パワーシェアーズ・キャピタル・マネジメントが運用している、NASDAQ100指数に連動する米国籍ETFです。
- 経費率は0.20%です。低くはありません。
- 現在の取引価格は284ドルです。ざっくり3万円の倍数でしか買えません。
- VT、VTI、VOOなどの超人気商品は、証券会社を選べば買付手数料無料で買えますが、QQQを買付手数料無料で買えるところはないと思います。
- 年4回、配当金が出ます。非課税口座でない場合、国内で20.315%課税されます。
NEXT FUNDS NASDAQ-100(1545)
NEXT FUNDS NASDAQ-100(1545)は野村アセットマネジメントが運用している、NASDAQ100指数に連動する国内籍ETFです。そのため海外ETFであるQQQよりは手軽に買えます。
- 設定されたのは2010年8月。もう10年間の実績があります。
- 信託報酬は税抜き0.45%。
- 信託報酬以外にかかるコストがあり、トータルコストはiFree NEXT NASDAQ100と同等水準だと思われます。(推定税込み0.55%程度)
- 売買単位が1株なので、ざっくり1.2万円の倍数で買えます。以前は10株だったので買いにくかったです。
- 8月決算で年1回、配当金が出ます。国内籍ETFなので、2020年から配当金への二重課税が自動的に調整されています。
QQQと1545のリターン比較
次は2016年8月16日から2017年8月20日までの、QQQの取引価格(円換算後)と1545の基準価額の比較です。どちらも配当金を無視しています。
青のラインはリターン差で、1545ーQQQです。傾向として右肩下がりなのは、1545の方がQQQより運用コストが高いからです。
赤の矢印の位置でQQQは配当金を純資産から出しています。その分リターンが劣化するので、青のラインが跳ね上がっています。次はその配当金の利率(米国での10%課税後)です。
1545は年1回決算で、緑の矢印の位置で分配金を出しています。分配金は純資産から出すので、その分リターンが劣化し、青のラインがガクっと下げっています。
配当金の出し方は、1545の方が有利です。それは年4回分配型と年1回分配型のどちらが資産形成に向いているかを考えれば分かります。(この理解、間違っているでしょうか。)
1545は配当金を全額出していない?
次は1545の配当金実績と、1545の決算期間中のQQQの配当金実績の合計を比較したものです。数値は米国課税後の配当金利率です。
理由は分かりませんが、1545が年1回出す配当金は、QQQが年4回出す配当金の合計より少ないです。QQQも1545も保有している株式から同じ率の配当金が得られている(はず)とすると、1545の方が有利になります。配当金なんか出さない方が資産形成に向いているからです。ETFは配当金を出さないといけないルールですが、出すにしても少ない方が良いのです。(受益者によってはそれを好まない人もいることでしょう。)
決算期別リターン比較
では1545の決算期ごとのQQQとのリターン比較を見ます。どちらも配当金を無視しています。
各グラフの左端は各決算期の開始日、右端は1545から配当金が出た様子を見るために8月22日にしています。グラフの階段状のトン、トン、トン、トン、ガクッとなる様子、1年間のリターン差がプラスかマイナスかに着目して下さい。コメント無し、グラフだけです。
第1期
第2期
第3期
第4期
第5期
第6期
第7期
第8期
第9期
設定日から現在までのリターン比較
次は1545の設定日から2020年9月末までの比較です。
決算期ごとの比較で見た通り、青のラインの傾向は運用コスト要因で右肩下がりであるものの、配当金の出し方と量の違いにより、配当金を無視したQQQの取引価格と1545の基準価額の比較では、1545の方が有利です。10年で10%ポイントを超える差が生まれています。これも、複利効果がなせるわざです。
でも、配当金を含めたトータルリターンで考えないと公平な比較とは言えません。
トータルリターン比較
QQQトータルリターンを生成しているのと同じ方法で、1545トータルリターンを生成しました。いわば、1545を買うだけのインデックスファンドを、コストゼロで運用した結果のようなものです。現実には存在しないもので、あくまで「トータルリターン」を比較するためのものです。配当金は米国の10%課税のみ適用されています。
QQQトータルリターンの圧勝です。ちなみに、QQQトータルリターンの運用コストを年率0.28%ポイント増量すると、青のラインはほぼフラットになりました。
たったそれだけの運用コストの差が、10年で30%近い差を生み出したのは、キャピタルゲインがとんでもなく高いNASDAQ100の複利効果です。
ここまでの比較結果から、長期投資を前提とするとQQQの方が有利に思えるのですが、まだ納得できませんよね。実はここで、より納得できる比較方法について行き詰まってしまいました。QQQと1545に実際に投資する場合、違いが大きくて同じ土俵で比較するのは無理です。
怪しいシミュレーション
このシミュレーションは怪しいです。その背景にある仕組み上の違いを理解して、自分がQQQまたは1545に投資する場合はどうなるか想像する材料にして下さい。
まず次は1545の基準価額とQQQの取引価格の比較です。2013年8月16日から2020年2月20日までを切り出しています。
1545の方が運用コストは高いのに、配当金の扱いの違いを要因とする作用により、QQQよりリターンが高いです。次は1545の運用コストを年率0.3%ポイント増量したものとの比較です。
1545とQQQの配当金の額が違うのですが、これが均一ではないので、良くやっているグラフのようにフラットになりません。ここでは仮に、1545は配当金の扱いの違いにより、期待リターンがQQQより年率0.3%ポイント高いとします。
シミュレーション条件
次の条件で2020年以降にQQQと1545に投資した場合の税引き後評価額を比較します。
- QQQの期待リターンを年率5.0%とします。
- QQQの配当金の米国課税前の利率を年率0.80%とします。
- 1545はQQQと同じだけの配当を保有株式から得ますが、年1回出す配当金はQQQの半分です。
- その配当金の扱いの違いによって、1545の期待リターンは年率0.3%ポイント改善されます。
- QQQの配当金は国内で20.315%課税されます。
- 1545の配当金は国内で10.315%課税されます。
- 配当金は再投資せず、現金で保有し、評価額に加算します。
- 100万円の一括投資で端数無くQQQ、1545を購入できたものとします。
- 比較期間は10年間です。
書いてないことは端折りました。
シミュレーション結果
青のラインは税引き後評価額の差で、QQQー1545です。
青のラインが右肩下がりなので、1545の方が有利です。10年で1%程度の差が生まれました。この差をどう評価するかはみなさん次第です。
青のラインが示しているのは、1545は配当金の扱いの違いで運用コストの高さを補い、QQQより期待リターンが大きいことが、長期投資による複利効果で増強された、ということです。
結論:どちらが有利かは人によって変わります
トータルコストは1545の方が高いのは間違いありません。が、1545は配当金の扱いの違いにより、明らかに(配当金を除いた)期待リターンを増やしています。配当金は、QQQは国内で20.315%課税されるのに対し、1545は10.315%の課税で済みます。それらをある条件でシミュレーションした結果、長期投資を前提とすると1545も悪くないことが分かりました。
配当金の再投資や外国税額控除や取引手数料や為替手数料など、考慮すべき変数が多く、ここから先は各自で判断して下さい。でも、おそらくそういうこととは違う理由で選択することになると想像しています。たとえば、QQQの方が1545よりティッカーシンボルがカッコいいからとか。