楽天バランスシリーズは株式と債券の比率が異なる3パターンで構成された、株式重視型、均等型、債券重視型が良く知られています。が、楽天証券のiDeCo口座でしか販売されていない、楽天バランス(DC年金)という姉妹品もあります。債券比率が85%もある、かなり保守的な組成ですが、意外と売れています。
楽天バランス(DC年金)
2018年5月25日に税抜き信託報酬0.157%で設定されました。投資対象は楽天バランスシリーズと同じで株式比率が違うだけですが、楽天バランス(DC年金)はその名が示す通り、確定拠出年金専用ファンドです。
一般販売されている楽天バランスシリーズ(株式重視型、均等型、債券重視型)より2ヶ月早く設定されました。楽天バンスシリーズ3商品が税抜き信託報酬0.12%+売買するETF/ファンドの管理報酬で構成されているのに対し、楽天バランス(DC年金)は0.06%+売買するETF/ファンドの管理報酬と、さすが確定拠出年金専用ファンドだと思わせる設定です。
次は税抜き信託報酬一覧です。(後述する債券ファンドの管理報酬引き下げ適用後です。)
債券比率が85%とずいぶん保守的な組成ですが、その特性を理解した上でiDeCoで買うには低コストで魅力的に見えることでしょう。
なお、楽天バランスシリーズ(株式重視型、均等型、債券重視型)はつみたてNISA適格ですが、楽天バランス(DC年金)は確定拠出年金専用なので、つみたてNISA適格ではありません。
債券ファンドの管理報酬引き下げ
楽天バランスの債券部分のファンドの「投資シェアクラス」が変更され、管理報酬が0.15%から0.10%に引き下げられました。
組成内容
楽天バランス(DC年金)の株式部分はVT、債券部分はバンガード・グローバル・ボンド・インデックス・ファンドとなっています。株式重視型、均等型、債券重視型と同じです。
引用:目論見書
株式部分は楽天全世界株式がVTを買っているのと同じです。債券部分はアイルランド籍のインデックスファンドを買います。債券部分は円でヘッジされるのが特長です。
楽天バランス(DC年金)は、債券比率が85%とシリーズ中最も「保守的」です。
株式部分は楽天全世界株式と同じなので、おかしな組成内容のバランスファンドよりよっぽど安心です。ところが債券部分は良く分かりません。目論見書に詳しい説明がないし、月次報告書には上位5地域までの配分しか載っていません。
次は債券部分の投資先上位5地域を示したものです。
出典:楽天バランス(均等型)の月次報告書
せめて先進国、日本、新興国の比率を目論見書か月次報告書に記載して欲しいです。なお、楽天バランス(DC年金)の月次報告書は楽天投信投資顧問のサイトにはありませんでした。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。債券ファンドの管理報酬引き下げ適用後です。
第二期決算期間まで高かった隠れコスト(楽天バンスシリーズ共通)が大幅に削減されています。超ローコスト投信と胸を張って言える水準です。
4タイプのリターン比較
次は一般販売されている楽天バランスの設定直後を避けた、2018年8月6日から2021年8月20日までの、4タイプの比較です。
紫色のラインが楽天バランス(DC年金)です。次は均等型と比較したものです。縦軸は対数です。
楽天バランス(DC年金)はブラック・クリスマス、コロナショック時の下落率が極端に小さいです。強気相場では株式比率の高い均等型に差を広げられますが、この緑のラインの値動きの方を好む人にとっては素晴らしい商品だと思います。
楽天全世界債券との比較
楽天バランス(DC年金)の債券部分だけに投資するのが、楽天全世界債券です。
次は楽天全世界債券の設定日直後を避けた2019年3月1日から2021年8月20日までの、楽天バランス(DC年金)とのリターン比較です。
赤のラインが楽天バランス(DC年金)です。コロナショック時の下落率は債券100%より大きいですが、保守的な組成を好む人でもこの値動きなら株式(しかも安心安定のVT)に15%投資するのも悪くないと思うかも知れません。
楽天証券のiDeCoで買えるバランスファンドは
次は楽天証券のiDeCo口座のラインナップです。こちらの比較記事からの引用です。
残念ながら楽天バンス3姉妹はありません。iDeCoは扱える商品数の上限があることが影響していると思われます。代わりに楽天バランス(DC年金)がiDeCoのために設定されたのかも知れません。でも、制約の多い中で受益者のニーズに応えるには良い対応だと思います。
なお、スリムバランス(8資産均等型)はSBI証券のセレクトプラン、松井証券、マネックス証券のiDeCo口座で扱われていますが、楽天バランス3姉妹のiDeCoでの扱いはありません。iDeCoって不自由ですね。
意外と売れています
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は115億円です。
安定した資金流入が続いています。
次は楽天バランス3姉妹もプロットしたものです。
緑のラインの株式重視型に追い抜かれましたが、楽天バランス(DC年金)は意外と売れていると言っていいでしょう。
次は直近1年間の営業日ごとの資金流出入額の推移です。
赤丸の付いた大きなトゲは、iDeCoの買付によるものです。楽天証券のiDeCoでしか買えないので、当然の結果です。
評価:保守的な組成が好きな人にはとても良い商品
楽天バランス(DC年金)は組成内容が良く、超低コストで高く評価できます。楽天証券のiDeCoで保守的な商品を嗜好する人には素晴らしい選択肢だと思います。
若いうちはリスクをとって株式100%の楽天全世界株式で運用し、解約予定の5年前になったら全額を楽天バランス(DC年金)にスイッチングして、暴落に強い(期待リターンは劣るけどダメージが小さくて済む)運用に変更するのもいい方法です。