楽天証券がいわゆる投信マイレージを事実上の終了とし、さらに追い打ちをかけるようにクレジットカード決済でのポイント付与率を下げました。新設される楽天キャッシュによる決済のポイント付与率は0.5%で、SBI証券のクレジットカード決済と同じです。ここだけ見ると、SBI証券の方が断然有利です。
そこへ遅ればせながら戦いを挑んできたのがマネックス証券です。クレジットカード決済のポイント付与率は1.1%です。攻めてますね。さらにauカブコム証券も還元率1.0%で戦いに参加しました。
ここで問題です。つみたてNISAで現実的なケースを考えた場合、次の3パターンにはどれぐらいの違いがあるでしょうか。
- 楽天証券で楽天キャッシュ決済で0.5%の還元を受ける。マイレージはない。
- SBI証券でSMBCカード決済で0.5%の還元を受ける。マイレージがある。
- マネックス証券でマネックスカード決済で1.1%の還元を受ける。マイレージがある。
- auカブコム証券でau Payカード決済で1.0%の還元を受ける。マイレージはあるけどとてもショボい。
細かい条件は無視して、単に数学的問題として考えてみました。
更新情報
auカブコム証券を追加しました。
シミュレーション方法
現実的な比較をしたかったので、次の条件でシミュレーションしました。
- つみたてNISAの利用を想定し、毎月33,333円をクレジットカード/楽天キャッシュ決済で積み立てます。
- クレジットカード/楽天キャッシュ決済でもらえるポイントを再投資します。(マネックスポイントも再投資できるものとします。)
- SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券では、マイレージサービスでもらえるポイントも再投資します。ポイントが100円相当未満でも再投資できたことにします。
- 2年目以降に再投資できるのはSBI証券とマネックス証券、auカブコム証券だけです。楽天証券のハッピープログラムでもらえるポイントはゼロとします。
- ポイントの再投資によって元本が増えるので、つみたてNISAの利用を想定しているものの、課税口座として税引き後評価額を比較します。
- 比較期間は20年です。
- 基準価額は数学的に生成したものを使います。
グラフの見方
こういうシミュレーション結果はグラフで見るのが一番です。スリム全世界株式(オール・カントリー)の場合で説明します。
SBI証券と楽天証券の比較
- 赤のラインがSBI証券の税引き後評価額、緑のラインが楽天証券の税引き後評価額なんですが、ほとんど重なっていて緑しか見えません。
- 黄色に塗ったのが1年目です。毎月33,333円+ポイント分を投資するので、評価額が急激に増えています。
- 青のラインは税引き後評価額の差(%)で、0%からスタートしています。(赤の矢印の位置)それはSBI証券のクレジットカード決済と、楽天証券の楽天キャッシュ決済のポイント還元率が共に0.5%で同じだからです。
- 青のラインはSBI証券ー楽天証券で、2年目以降は楽天証券は再投資なしなのにSBI証券はマイレージポイントを再投資するので右肩上がりで推移します。
- 約40万円だった元本はポイントの再投資と基準価額の上昇により20年間で2.7倍に増えました。
- SBI証券と楽天証券の比較だと、マイレージポイント分SBI証券が有利で、20年間で9,887円の差が生まれました。
- 楽天証券の方が利益率が高いのは、SBI証券の方が元本が(マイレージポイントの再投資分だけ)大きいためです。ここで重視すべきなのは利益率じゃなくて税引き後評価額です。
SBI証券とマネックス証券の比較
- 赤のラインがSBI証券の税引き後評価額、緑のラインがマネックス証券の税引き後評価額なんですが、ほとんど重なっていて緑しか見えません。
- 黄色に塗ったのが1年目です。毎月33,333円+ポイント分を投資するので、評価額が急激に増えています。
- 青のラインは税引き後評価額の差(%)で、-0.6%からスタートしています。(赤の矢印の位置)それはクレジットカード決済のポイント還元率の差によるものです。
- 青のラインはSBI証券ーマネックス証券で、2年目以降はSBI証券の方が再投資するマイレージポイントが多いため右肩上がりで推移します。
- SBI証券とマネックス証券の比較だと、マネックス証券が有利で、20年間で2,849円の差が生まれました。
スリム全世界株式(オール・カントリー)の場合
オール・カントリーのSBI証券のマイレージポイント還元率は年率0.0462%です。マネックス証券は0.03%です。auカブコム証券はわずか0.005%です。
SBI証券 vs 楽天証券
SBI証券の方が有利です。期待リターンが高いほど、再投資したポイントが利益を生むため税引き後評価額の差が広がります。
期待リターン4%の場合
20年後の税引き後評価額の差は6,929円でした。
期待リターン5%の場合
20年後の税引き後評価額の差は8,281円でした。
期待リターン6%の場合
20年後の税引き後評価額の差は9,887円でした。
SBI証券 vs マネックス証券
マネックス証券証券の方が有利ですが、その差はSBI証券 vs 楽天証券ほど大きくないです。
期待リターン4%の場合
20年後の税引き後評価額の差は1,983円でした。
期待リターン5%の場合
20年後の税引き後評価額の差は2,368円でした。
期待リターン6%の場合
20年後の税引き後評価額の差は2,849円でした。
SBI証券 vs auカブコム証券
最初はauカブコム証券証券の方が有利ですが、途中で逆転します。でもこれはSBI証券の有利なマイレージサービスが20年間維持されるのが条件です。
期待リターン4%の場合
20年後の税引き後評価額の差は2,030円でした。
期待リターン5%の場合
20年後の税引き後評価額の差は2,463円でした。
期待リターン6%の場合
20年後の税引き後評価額の差は2,987円でした。
スリム米国株式(S&P500)の場合
スリム米国株式(S&P500)のSBI証券のマイレージポイント還元率は年率0.0374%です。マネックス証券は0.03%です。auカブコム証券はわずか0.005%です。
期待リターンは6%のみとしました。
SBI証券 vs 楽天証券
SBI証券の方が有利です。
20年後の税引き後評価額の差は7,978円でした。
SBI証券 vs マネックス証券
マネックス証券の方が有利です。マイレージポイントの還元率が0.0374%と0.03%と差が少ないので青のラインの傾きが小さいです。
20年後の税引き後評価額の差は4,798円でした。
SBI証券 vs auカブコム証券
最初はauカブコム証券証券の方が有利ですが、17年後あたりに逆転します。でもこれはSBI証券の有利なマイレージサービスが20年間維持されるのが条件です。
20年後の税引き後評価額の差は1,359円でした。
マネックス証券とSBI証券の違い
次はスリム全世界株式(オール・カントリー)の場合に付与される累積ポイントの推移です。
マネックス証券(青のライン)はクレジットカード決済で付与されるポイントが1.1%と、SBI証券の倍以上なので立ち上がりが急です。ところがマイレージポイントはSBI証券の方が多いため、20年間での累積ポイントはほぼ同額です。
が、再投資したポイントはキャピタルゲインの恩恵を受けるため、早く再投資しているマネックス証券の方がここでのシミュレーションでは有利です。
結論
この記事の論点だと、楽天証券は選択肢から外れます。SBI証券、マネックス証券、auカブコム証券のどれが良いかは、投資対象によってマイレージポイントに違いがあるものの、超ローコスト投信で見るとマネックス証券がいいでしょう。
超ローコスト投信に限ると、auカブコム証券のマイレージポイントは0.005%と低すぎるため、クレジットカード決済で付与されるポイントが支配的です。そのためauカブコム証券よりマネックス証券の方が有利です。
SBI証券が優れているのはマイレージポイントです。これが20年以上維持されるなら、シミュレーションのように途中で逆転が可能なケースがあります。
しかしながら、クレジットカード決済で付与されるポイントも、マイレージポイントも、永続的とは思えません。早晩改悪されると思うなら、もらえるうちにもらってしまうという考えで、マネックス証券を選択するのもいいと思います。(マイレージポイントはショボすぎますが、auカブコム証券でもいいと思います。)
あるいは、そういうオマケ的なポイントに影響されるのは好まないので、UIが圧倒的に優れている楽天証券でいいやっていう考え方もあるでしょう。