米国株式

楽天全米株式(楽天VTI)の運用コストと評価

楽天全米株式はVTIを買うだけのインデックスファンドです。そのため楽天VTIとも呼ばれます。VTIを自分で買う場合に生じるデメリットを解消してくれる代わりに、楽天投信投資顧問が徴収する運用コストを負担しなければなりません。その運用コストは、信託報酬と隠れコストから構成され、毎営業日、純資産から天引きされます。

楽天全米株式の第一期決算期間の運用コストは期待外れに高かったのですが、第二期以降は大幅に削減され、低水準が維持されています。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

楽天全米株式

2017年9月29日に、税抜き信託報酬0.12%+VTIの経費率という当時の感覚では驚異的な低コストで設定されました。

  • VTIを買うだけのインデックスファンドです。VTIから年4回得られる配当金は国内課税なしでファンド内で再投資されます。
  • VTIの経費率が0.04%から0.03%に下がったことを除いて、信託報酬は設定来引き下げられていません。
  • 楽天証券と松井証券のiDeCo口座で扱われています。

楽天全米株式はつみたてNISA適格です。

運用コスト(トータルコスト)

高コストだった第一期決算期間

楽天全米株式の第一期決算期間は期待を裏切る高コストなものでした。昔はいいから現在が知りたいって方はここまで飛ばして下さい。

次は2017年9月29日から2018年7月17日(第一期決算期間)における楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較です。

2017年9月29日から2018年7月17日(第一期決算期間)における楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

青のラインはVTIトータルリターンー楽天全米株式です。赤の矢印の位置で跳ね上がっているのは、楽天全米株式の運用上の問題でリターンが劣化したためです。同じ現象は楽天全世界株式にも観測されました。

次は運用が安定してきたと思われる、2017年11月1日からの比較です。

2017年11月1日から2018年7月17日における楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

青のラインはきれいな直線で、その傾きは楽天全米株式の運用コストの大きさを示しています。

次はVTIトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較です。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天全米株式の、VTIの経費率を含んだトータルコストは税込み0.44%程度だと推測されました。ところが、第一期運用報告書から計算した数値はそれより小さく、税込み0.3021%でした。

第一期運用報告書から計算した楽天全米株式のトータルコスト表

僕が推測したトータルコストと、運用報告書から計算したトータルコストが一致しない理由はいくつか考えられるのですが、ここでは運用報告書にある数値が正しいとしましょう。

当時、楽天全米株式の受益者はこのコストの高さに大いにがっかりしました。目論見書にある次の表現から期待していたものとの差が激しかったからです。

楽天全米株式の目論見書にもある表現

引用:目論見書

この桁数の多い数値は(当時の)VTIの経費率0.04%を含んでいます。受益者の多くはこれが実際には(隠れコストを加えると)税込み0.3021%になるなんて思わなかったでしょう。「実質的に負担する」という表現から受ける印象とは大きく違います。

大きく改善された第二期決算期間

次は2018年7月18日から2019年7月16日(第二期決算期間)における楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較です。

2018年7月18日から2019年7月16日(第二期決算期間)における楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

赤の矢印の位置にある大きなヒゲは、VTIの配当金を取り込むタイミングの違いによるものです。無視して下さい。

次はVTIトータルリターンの運用コストを年率0.20%ポイント増量したものとの比較です。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.20%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天全米株式の、VTIの経費率を除いたコストは税込み0.20%程度だと推測されました。

第二期運用報告書から計算した数値はそれに近いものでした。第一期に高かった隠れコストは半減されました。

第一期運用報告書、第二期運用報告書から計算したトータルコスト表

トータルコストからVTIの経費率(0.03%)を除くと税込み0.1928%になりました。推測通りでした。

次は隠れコストの明細です。

楽天全米株式の隠れコストの明細表

売買委託手数料が大幅に削減されました。第二期は努力したということでしょう。また、印刷費用というふざけた項目を計上していた「その他」がゼロになりました。

低水準が維持されていた第三期決算期間

次は第三期決算期間が開始した2019年7月17日から2020年4月30日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較です。

第三期決算期間が開始した2019年7月17日から2020年4月30日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

赤の矢印の位置にある大きなヒゲの発生理由は不明ですが、無視していいです。また、黄色に塗った株価暴落開始後はリターン差から運用コストを推測できないため除外して考えます。

次は2019年7月17日から2020年2月20日までで、VTIトータルリターンの運用コストを年率0.20%ポイント増量したものとの比較です。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.20%ポイント増量したものとの比較グラフ2

青のラインはほぼフラットになりました。よって楽天全米株式の第三期の、VTIの経費率を除いたコストは、第二期と変わらず、税込み0.20%程度だと推測されました。

第三期運用報告書から計算した数値は第二期から削減されていました。

トータルコストからVTIの経費率(0.03%)を除くと税込み0.1790%になりました。推測値より少なかったです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの三期比較表

売買委託手数料が下がっています。でも残念なことに「その他」が増えました。うち第二期ではゼロになった「印刷費用」が0.002%計上されています。第三期の隠れコストは十分安く、それは素晴らしいですが、第二期にゼロだった「その他」が増えたのはちょっと気に入らないです。

第四期決算期間

次は第四期決算期間が開始した2020年7月16日から2021年7月30日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較です。巨大なトゲは無視して下さい。

2020年7月16日から2021年7月30日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

次はVTIトータルリターンの運用コストを年率0.16%ポイント増量したものとの比較です。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.16%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインは、2020年中はほぼフラットになりましたが、2021年の1月、2月は増量し足りないですね。楽天全米株式の第三期決算期間もこのような感じのスタートでした。

次は比較開始を2021年3月に変更したものです。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.16%ポイント増量したものとの比較グラフ、その2

青のラインはほぼフラットになりました。このことから現在、楽天全米株式は超低コストで運用されていると考えられます。

第四期運用報告書から計算した数値は第三期からさらに削減されていました。

第一期から第四期のトータルコスト一覧表

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

売買委託手数料が大幅に削減されました。

運用報告書から計算したトータルコストは0.187%です。VTIトータルリターンとの比較から推測した、楽天全米株式のVTIの経費率を除いた運用コストは0.16%でした。VTIの経費率は0.03%なので、トータルコストの推測値0.19%と一致するという、出来すぎの結果となりました。

よって運用報告書にある数値は適切なものだと思われますし、楽天全米株式の隠れコストが毎年削減されていることは高く評価します。

第五期決算期間

次は第五期決算期間が開始した2021年7月16日から2022年3月31日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較です。

2021年7月16日から2022年3月31日までの、楽天全米株式とVTIトータルリターンの比較グラフ

次はVTIトータルリターンの運用コストを年率0.15%ポイント増量したものとの比較です。

VTIトータルリターンの運用コストを年率0.15%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりましたが、2022年3月は運用コストが増えています。第5期決算期間としては、引き続き超低コストで運用されていると考えられます。

「ETFをマーケットメーカーから購入する計画はありますか?」への回答

SBIバンガードS&P500は、VOOをマーケットメーカーから購入しているので、売買委託手数料がかかっていないそうです。では、楽天全米株式や楽天全世界株式はVTIやVTを、ブローカーからではなくてマーケットメーカーから購入すれば、圧倒的なコストダウンができるはずです。

そこで、楽天バンガードHEADSで質問してみました。このサイト、質問するといつも丁寧な回答がもらえます。今回もそうでした。(改行だけ編集しています。)

ご質問の件ですが、弊社では、ETFの売買において、証券会社(ブローカー)だけでなく、流動性供給者又はマーケットメイカーと呼ばれる金融機関も活用し、最良執行の考えのもと日々の執行コストをできる限り低減するよう努めています。

発注に際しては、市場の状況や発注数量、条件面等を総合的に勘案しながら、ブローカーなのか、マーケットメイカーなのか、また、どの会社に発注するのか等を決定しております。

なお、これまで河童様がご自身のブログ内で分析されていらっしゃいます通り、基準価額には、すべてが反映されておりますので、引き続き、基準価額の動向をご確認いただけますと幸いです。

この回答、奥が深いですね。

楽天全米株式は先物を利用しています

楽天全米株式は設定されてからしばらくは、VTIとわずかな比率の短期金融資産だけで運用されていましたが、現在は株式先物を利用しています。

この取り組みは素晴らしいと思います。

SBI・V・全米株式に負けていません

2021年6月29日に強烈なライバルが登場しました。SBI・V・全米株式です。楽天全米株式と同じで、VTIを買うだけのインデックスファンドです。税込み信託報酬は0.0938%と、楽天全米株式の0.162%より0.0682%ポイントも安いです。

でも運用の上手い下手も含めた現実のトータルコストは、同等もしくは楽天全米株式の方が安いです。

人気も楽天全米株式の圧勝です。この様子だと楽天全米株式はSBI・V・全米株式に対抗して信託報酬を引き下げないと思います。

人気が衰えない楽天全米株式

次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は5,457億円です。SBI・V・全米株式もプロットしています。

楽天全米株式とSBI・V・全米株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

楽天全米株式の人気は安定しています。ラインの反り返り具合が素晴らしいです。楽天全米株式は、その安定した運用に相応しい資金を集められていると言えるでしょう。

でもスリム米国株式(S&P500)には負けています。

楽天全米株式とスリム米国株式(S&P500)の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

緑のラインがスリム米国株式(S&P500)です。ラインの反り返り具合がとんでもないですね。

評価:楽天全米株式のコストは低水準で運用も安定しています

楽天全米株式の現在のコストは低水準で運用も安定しており、人気も盤石で安心しておすすめできます。毎年隠れコストを削減できていることも高く評価しています。

米国株式インデックスに投資するにあたり、VTIとS&P500のどちらがいいかは好みの問題が大きいです。(投資信託で)VTIが良い場合、楽天全米株式とSBI・V・全米株式の二択となりますが、現状では楽天全米株式をおすすめします。SBI・V・全米株式は運用コストの低減化と販路拡大を頑張らないといけないですね。

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