現在はVTIを買付手数料ゼロで買えるのが普通になりました。そして、次の記事で現実世界での買い方での比較をしました。
この記事では毎月の予算が5万円でしたので、楽天カード決済で楽天全米株式を買う場合は、条件が良かったと言えます。
では毎月の予算が100万円の場合はどうなるでしょうか?
比較方法
次の条件で比較用データを生成します。
- VTIの期待リターンを年率6%とします。
- VTIの配当金実績から、米国での10%課税後の配当金の利率を年率1.72%とします。
- 1ドルは109円固定とします。
- 楽天全米株式の運用コスト(VTIの経費率を除きます)を0.20%とします。
このデータを使って、楽天証券で買う楽天全米株式と、SBI証券で買うVTIの税引き後評価額の差を調べます。毎月の予算は100万円です。
SBI証券でVTIを積立投資する場合の為替手数料は1ドルあたり4銭、買付手数料はゼロとします。
譲渡税の税率は20.315%です。なお、積立投資の約定日はどちらも毎月初、VTIは配当金が出た日に再投資可能ならその日に約定したことにしています。
また、VTIの税引き後評価額を円で手にするには、売付け手数料と為替手数料が必要です。これは売り方で大きく変わるため、いつものように、記事中では無視しています。
楽天カード決済で積立投資
月額5万円までですが、投資信託の積立投資を楽天カードで決済することで、1%の楽天スーパーポイントが付与されるサービスは、ありえないレベルの大盤振る舞いです。これで付与されるポイントを再投資すると、利益率が1%改善されます。
この記事のシミュレーションでは、5万円までは楽天カードで決済します。そして付与されるポイントを先取りで積立投資します。
年率0.048%のポイント還元率
楽天証券でハッピープログラムを選択している場合、どんなにローコストの投資信託であっても、毎月の保有額10万円ごとに楽天スーパーポイントが4ポイントもらえます。10万円未満の端数は捨てられますが、それを無視すると年率0.048%のポイント還元率です。
この記事のシミュレーションでは、楽天全米株式の保有資産額に応じて付与されるポイントを、付与される月に先取りで積立投資します。実際には毎月変化するポイント分ぴったりには再投資できませんが、シミュレーションではそれを正しく行っています。
楽天全米株式で再投資しない場合
再投資しない場合、10年間で0.54%の差が生まれました。
青のラインは税引き後評価額の差です。税引き後評価額の求め方はこうです。
- 楽天全米株式は、含み益に譲渡税が課税された残りです。
- VTIは、含み益(=保有株数✕株価ー元本)に譲渡税を課税した残り+ドルで口座に残っている端数です。
青のラインは、最初はプラスですが、傾向は右肩下がりで、数ヶ月でVTIに負けます。
ここで見ているのは、次の2つの差です。
- 楽天全米株式は毎月初100万円をきっちりリスク資産に投じることで、その全額がキャピタルゲインの恩恵を受けます。
- VTIは取引価格の整数倍でしか買えないので、端数が翌月に繰り延べされますが、毎月の予算が100万円なので、相対的に端数が小さくなります。そのため、機会損失の度合いが(予算5万円の場合に比べて)小さくなります。
また、青のラインにある氷柱(つらら)のようなものは、配当金が出たタイミングで再投資できたことで生じたものです。想定通りです。
楽天カード決済で付与されるポイントのみ再投資
次は楽天カード決済で付与されるポイントだけを再投資した場合です。
青のラインはわずかに上方向にシフトしました。予算100万円のうち、楽天カード決済できるのは5万円だけなので、それでもらえる1%のポイントは、予算100万円から見ると0.05%に過ぎないためです。
年率0.048%のポイントのみ再投資
次は保有資産額に応じて付与されるポイントのみ再投資した場合です。
青のラインの傾きが緩やかになりました。
保有資産額に応じて付与されるポイントは、理屈の上では、きちんと再投資すると、信託報酬を引き下げたのに近い効果が得られます。青のラインの傾きを決めているのは、楽天全米株式の運用コストですが、理屈通りに運用コストを削減したのと同等の効果が得られました。
2つの合せ技
次は楽天カード決済で付与されるポイントと、保有資産額に応じて付与されるポイントの両方を再投資した場合です。
楽天カード決済で付与されるポイントの効果は小さいので、保有資産額に応じて付与されるポイントの効果が支配的です。
比較期間を30年に拡大しました。
20年程度でVTIに負けなくなります。
毎月100万円投資できるならVTIが有利です
20年未満ならVTIの方が有利、それ以上なら楽天全米株式が有利という結果でした。が、毎月100万円の投資を20年継続するには2.4億円も必要なことを考えると、VTIを選択するのが現実的でしょう。
でも、巨額の予算、長い投資期間の割には、差の比率は小さいです。このシミュレーションでは投資元本が億単位になるので、差の金額は無視できないほど大きくなるのも事実ですけどね。