セゾン投信が運用しているセゾングローバルバランスは圧倒的な人気を誇っています。誰もが認めるキング・オブ・バランスファンドです。が、セゾン投信のもう1つの商品である「セゾン資産形成の達人ファンド」はそこまでの成功をおさめられていません。
その理由はパフォーマンスが大したことないからだと思われます。驚異的なパフォーマンスだったら、人気はそれに追随するはずだからです。
セゾン資産形成の達人ファンド
2007年3月15日に設定されました。セゾン投信が設定した税抜き信託報酬は0.53%ですが、投資対象ファンドの信託報酬を合算した実質的な運用管理費用は税込み1.35%程度です。
セゾン資産形成の達人ファンドは全世界の株式に投資するアクティブファンドです。目論見書には債券に投資することもあると書かれていますが、現在はほぼ株式のみです。
地域別投資比率は時価総額比の楽天全世界株式と比べると、米国が少なくて欧州と新興国が多いです。
出典:目論見書
運用は、僕が嫌いな(コストがかさむから)ファンド・オブ・ファンズ形式で、現在9本のファンドに投資しています。
引用:目論見書
過去にはさわかみファンドやコモンズ30ファンドと言った、独立系運用会社のアクティブファンドを投資対象にしていた時期もありました。
セゾン資産形成の達人ファンドは「指定インデックス投資信託以外」でつみたてNISA適格です。また、iDeCoナビによると、次の金融機関のiDeCo口座で扱われています。
- ゆうちょ銀行
- 楽天証券
- SBI証券(セレクトプラン)
- 福岡銀行
運用コスト不明
セゾングローバルバランスもそうでしたが、運用報告書にある隠れコストの記載内容は、信じ難いものです。
引用:運用報告書
達人ファンドは9本のファンドを売買します。それに必要な売買委託手数料も、有価証券取引税も、保管費用も計上されていません。おかしいと思いませんか。
また、9本のファンドの隠れコストもゼロではないはずです。運用報告書にある、各ファンドの費用明細にはそれらの数値も出てきます。だから計上できないのではなくて、していないのです。よって、達人ファンドの運用コスト(トータルコスト)がいくらなのかは不明です。信託報酬を合算しただけで税込み1.35%なので、それより高いことは間違いありません。
リターン比較
セゾン資産形成の達人ファンドの参考指数はMSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスです。なのでそれにふさわしい比較対象を選びました。
VTトータルリターンとの比較
VTのベンチマークはFTSEグローバル・オールキャップ・インデックスですが、時価総額比で全世界株式に投資します。次は2009年年初から2020年8月28日までの比較です。
赤のラインが達人ファンド、緑のラインがVTトータルリターンです。青のラインはリターン差で、達人ファンドーVTトータルリターンです。
この比較期間だと達人ファンドの圧勝です。高い運用コストに見合うパフォーマンスが得られていますね。
次は2015年年初からの比較です。
達人ファンドの方が高パフォーマンスですが、差がグッと縮まりました。
次は2018年年初からの比較です。
大差ないですね。
VTIトータルリターンとの比較
次は2008年年初からの、VTIトータルリターンとの比較です。
赤のラインがVTIトータルリターンです。青のラインはVTIトータルリターンー達人ファンドです。2014年までは達人ファンドの方がいくらか高パフォーマンスでしたが、その後は互角、最近はVTIトータルリターンの方が高パフォーマンスです。
次は2015年年初からの比較です。
この比較期間だと2018年までは互角、その後はVTIトータルリターンの方が高パフォーマンスです。
次は2018年年初からの比較です。
2018年以降ならVTIトータルリターンの方が高パフォーマンスですね。
楽天全世界株式とのリターン比較
僕が生成したトータルリターンは、ETFの経費率を除く運用コストがゼロの理想的なものです。そこでもっと現実的な比較もしておきます。
次は楽天全世界株式の設定直後を避けた、2017年11月1日から2020年9月4日までの比較です。
達人ファンドの方が高パフォーマンスですが、その高い運用コストに見合ったリターンではないですね。
楽天全米株式とのリターン比較
次は楽天全米株式の設定直後を避けた、2017年11月1日から2020年9月4日までの比較です。
青のラインは楽天全米株式ー達人ファンドです。米国株式100%の高いリスクを負えるのなら、わざわざ高コストな達人ファンドを買うことはないですね。もちろん、未来のことは誰にも分かりません。
Fund of the Yearの順位
セゾン資産形成の達人ファンドはFund of the Yearに何度か入賞していますが、それほど人気が高かったわけではありません。セゾングローバルバランスの方が人気でした。
売れ行きは
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は1,093億円です。
次は直近1年間の、毎営業日ごとの資金流出入額の推移です。
ほとんどの買い付けは決まった日に行われていることが分かります。これは、セゾン資産形成の達人ファンドは積立での購入を前提としているためです。スポット購入も可能ですが、手軽にはできない前時代的仕様です。ほとんどの受益者は、一度積立設定したら後はほったらかしなのでしょう。
セゾン資産形成の達人ファンドは人気を獲得するのに7年以上かかりました。同じ日に設定されたセゾングローバルバランスと比較すると人気の違いが良く分かります。
緑のラインがセゾングローバルバランスです。どちらもある時を境に資金流入量が増えていますが、それと2014年9月の日本郵政との業務提携の関連は分かりません。
2017年9月末に設定された楽天全世界株式と楽天全米株式は、圧倒的な人気を獲得しています。
青のラインが楽天全米株式、緑のラインが楽天全世界株式です。楽天全米株式には追い抜かれてしまいましたが、楽天全世界株式が追いつくのは簡単ではないようです。
ひふみとの違い
国内の中小型株に投資することで高いパフォーマンスを達成したひふみは、圧倒的な人気と資金を獲得しました。ファンドの性格、投資対象が違いすぎるので、ひふみとリターン比較するのは不適切だと正直思います。でも気になりますよね。
赤のラインがひふみ投信です。長続きしませんでしたが、他を圧倒する高いパフォーマンスを達成できないと、爆発的には売れないということです。
限られた販路
セゾン資産形成の達人ファンドは限られた金融機関でしか買えません。口座も限定されます。
SBI証券のiDeCo以外の口座で買うには、高島屋ファイナンシャル・パートナーズ経由でSBI証券に口座開設が必要です。時代に逆行する面倒くささです。
評価:セゾン投信が好きな人には良い選択肢でしょう
僕はアクティブファンドに否定的なのでおすすめしませんが、セゾン投信が(受益者との向き合い方含めて)好きなら、良い選択肢になると思います。設定来のパフォーマンスは悪くはないですし、高い運用コストを払うだけのことがある、アクティブファンドとしての役割を果たしてくれるだろうと期待できます。13年間生き残れたわけですから。
でも、現在のように米国株式が絶好調だと、楽天全米株式のような商品に勝てません。むしろその程度のパフォーマンスしか追求しないので、13年間生き残ることができたのでしょう。そう考えると、自分のリスク許容度の中で期待リターンが高く、ローコストなインデックスファンドを長期保有した方がいいのではないかと、思ってしまいます。