楽天全米株式は税抜き信託報酬0.12%+ETFの経費率という圧倒的低コスト、そしてあの憧れのVTIに投資信託として投資できることから高い人気を獲得しました。その人気に支えられ、楽天全米株式は先行者利益を堪能して来ましたが、ついに競合が現れました。SBI・V・全米株式です。
SBI・V・全米株式もVTIを買うだけのインデックスファンドですが、税抜き信託報酬を0.058%に下げて来ました。信託報酬だけ見るとSBI・V・全米株式の圧勝ですが、話はそれほど単純ではありません。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
SBI・V・全米株式
楽天全米株式に3年8ヶ月遅れの2021年6月29日に、税抜き信託報酬0.088%(VTIの経費率を含みます)で設定されました。これはSBI・V・S&P500と同率です。
- VTIを買うだけのインデックスファンドです。VTIから年4回得られる配当金は国内課税なしでファンド内で再投資されます。
- 表面的には、楽天全米株式の低コスト版と言えます。(実際の運用は違います。)
- 販売会社はSBI証券だけです。
- 現在、iDeCoでの扱いはありません。
SBI・V・全米株式はつみたてNISA適格です。
楽天全米株式との違い
楽天全米株式は2020年7月から株式先物を利用しています。それには深い理由があります。
一方、SBI・V・全米株式は株式先物を利用していません。株式先物の利用によって得られるパフォーマンスの改善がごくわずかであるとしても、楽天全米株式の方が一歩先を行っていることは確かです。
運用コスト
第一期運用報告書が公開される2022年9月頃までは、正式な運用コストは不明です。が、ごまかしの効かない基準価額データを比較することで、楽天全米株式と比べてどうなのかは分かります。
VTIトータルリターンとの比較
次はこのブログで頻繁に登場するVTIトータルリターンとの比較です。SBI・V・全米株式の設定日から2022年1月28日までです。
青のラインはリターン差で、VTIトータルリターンーSBI・V・全米株式です。赤の矢印の位置で跳ね上がっていますが、設定直後のファンドでは普通に見られる現象です。楽天全米株式はもっと強烈でした。
次は設定直後を避けた2021年7月15日から2022年3月31日までの比較です。
リターン差を示す青のラインは右肩上がりで推移するのが期待値で、その傾きがSBI・V・全米株式固有の運用コストを示しています。
次は同じ比較を楽天全米株式でしたものです。グラフのスケールは同じです。
青のラインの傾きは、SBI・V・全米株式と同じか小さいです。これは、運用の上手い下手も含めた現実のトータルコストは、信託報酬が高い楽天全米株式と変わらないか、逆に安かったことを示しています。
楽天全米株式とのリターン比較
次は楽天全米株式とSBI・V・全米株式の比較です。SBI・V・全米株式の設定直後を避けた2021年7月15日から2022年4月1日までです。グラフのスケールは同じです。
青のラインは楽天全米株式ーSBI・V・全米株式です。SBI・V・全米株式のトータルコストは、楽天全米株式とほぼ同じか、時期によっては楽天全米株式より高いです。投資信託は信託報酬だけを見て飛びついてはいけないのです。
受益者の期待通りなら
SBI・V・全米株式のトータルコストは、楽天全米株式より年率0.06%程度安いのが期待値です。次は楽天全米株式の運用コストを調整したものと、楽天全米株式そのものを比較した結果です。
青のラインは楽天全米株式ーSBI・V・全米株式の期待値です。インデックスファンドは運用の中身が大切です。
FOYの投票結果
Fund of the Yearの投票結果は、参加したブロガーの評価が高いことが伺えます。
売れ行きは
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産価額は701億円です。
設定日の純資産価額が81億円ありましたが、これは事前募集分です。そのうちいくらかは運用側の初期投資かも知れません。
ラインの形状は微妙ですが、良く売れています。
次は楽天全米株式もプロットしたものです。純資産価額は5,457億円です。
緑のラインが楽天全米株式です。反り返ったラインの形状が、人気の加速が継続していることを示しています。
次はSBI・V・全米株式の設定以降の資金流出入額の累計の推移を比較したものです。
人気を資金流出入額で判断するなら、楽天全米株式の圧勝です。この様子なら楽天全米株式はSBI・V・全米株式に対抗して信託報酬を引き下げることはしないでしょうね。
評価:無理して乗り換えるほどではありません
SBI・V・全米株式はローコストで素晴らしい商品ですが、そのトータルコストは信託報酬の安さから期待したほどではありません。現実のトータルコストは楽天全米株式と同等です。
信託報酬の安さに惹かれて、楽天全米株式より低コストだと思って飛びつくのは「間違い」です。現在の実力を理解した上で投資する分には全く問題ありません。少なくとも、楽天全米株式に投資している人が、無理して乗り換えるほどのことは(既存の投資分はガチホするとしても)ありません。
資金流出入の様子を見ても、楽天全米株式からSBI・V・全米株式に乗り換える人が多いとは思えません。これはSBI・V・全米株式がSBI証券でしか買えないこと、iDeCoでの扱いがない(楽天全米株式は楽天証券と松井証券で買えます)ことも大きく影響していることでしょう。
SBI・V・全米株式は(運用の上手い下手も含めた)運用コストの削減に努めれば、もっと高い評価を得られるはずです。また、楽天全米株式を脅かす存在になるには、iDeCoを含めて販路を拡大する必要がありますね。