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【徹底比較】SBI・V・S&P500(SBI VOO)とVOOのどちらがおすすめですか?

SBI・V・S&P500の圧倒的な利便性、配当金の再投資効率の高さを考慮すると、SBI・V・S&P500の運用コストの高さは(現在は一般に知られているより高いですが)負担する価値があると思います。はい、SBI・V・S&P500の運用コストは高いです。それに対してVOOの経費率は激安です。

ではSBI・V・S&P500とVOOのどちらがおすすめなのか、その判断材料となる現実的なシミュレーションによる比較結果をお見せします。

SBI・V・S&P500(SBI VOO)

楽天全米株式はVTIを、楽天全世界株式はVTを買うだけのインデックスファンドです。同じ運用方法で、VOOを買うだけのインデックスファンドとして組成されたのが、SBI・V・S&P500です。SBI VOOと呼ばれることもあります。

VOOの経費率を除いた税抜き信託報酬は0.58%と、驚異的な低コストで高い人気の獲得に成功しました。

SBI・V・S&P500の(運用報告書から計算した)現在のトータルコストは0.1123%ですが、これはごまかしの効かない基準価額データの推移と一致しません。異論もあるとは思いますが、この記事では0.35%とします。

なお、SBI・V・S&P500とスリム米国株式(S&P500)のどちらが良いかは別の話題になります。

VOO

ベンチマークはS&P500種指数で、全米の株式約500銘柄に投資します。経費率はわずか0.03%です。でも米国籍ETFなので、多くの制約があります。

  • 一株の取引価格の倍数でしか買えません。現在一株43,000円程度です。予算が5万円の場合、1株買えて余りが7,000円程度となります。
  • VOOを買うには円をドルに替える必要があります。その際の為替手数料は、一般的には1ドルあたり25銭です。SBI証券と住信SBIネット銀行のあわせ技で4銭です。(1銭は0.01円です。)
  • VOOは一株単位でしか買えませんから、配当金の再投資も一株単位でしかできません。また、配当金は国内課税されてしまいます。
  • 証券会社を選べば購入時手数料はゼロですが、売却時には手数料がかかります。また、売却後にドルを円に替えるのに為替手数料がかかります。
  • つみたてNISA、iDeCoでは買えません。
  • 投資信託の保有資産額に応じてもらえるポイントサービスの対象外です。

めんどくさいことがたくさんありますね。それでも、経費率0.03%は魅力的です。

SBI・V・S&P500のメリット

SBI・V・S&P500には、VOOに自分で投資する場合に比べて多くのメリットがあります。そんなことはもういいやって方は、ここまで飛ばして下さい。

なお、特定口座で売買する場合の話です。

積み立て投資における機会損失がない

毎月予算5万円で積み立て投資をしたいとします。SBI・V・S&P500なら5万円ぴったりに、無駄なく買うことができます。VOOは変動する取引価格の倍数でしか買えませんから、予算に対して必ず端数が出ます。その端数は翌月に回して、翌月に5万円+端数でVOOを買うとしても、毎月いくらかの端数が発生します。

VOOの取引価格は右肩上がりで成長することが期待されているため、基本、早く資金を投資した方が有利です。そのため、端数の発生は機会損失となります。

100円から購入できる

これも大きなメリットです。VOOは約43,000円の倍数でないと買えません。100円以上1円単位で買えるのは、ポイントの活用でも重宝します。(これができる証券会社は限られますが、できるところを選ぶべきです。)

売買時に余計な手数料が発生しない

SBI・V・S&P500は、売買そのものでは手数料が発生しません。あらゆる手数料は信託報酬に含まれており、毎営業日純資産から天引きされています。

VOOを買うには為替手数料が必要ですし、売却時に手数料がかかります。(DMM.com証券は売買手数料が無料化されていますが、別のデメリットがあります。)

配当金の再投資効率が高い

VOOを保有すると年4回、配当金が出ます。配当金は米国で10%、国内で20.315%課税されてから、ドルで口座に振り込まれます。資産形成のためには配当金を再投資するのが良いわけですが、VOOは取引価格の倍数でしか買えないため、配当金の再投資は簡単ではありません。

VOOの保有額が1,000万円程度あれば、配当金が出る都度一株再投資できると思われます。保有額が少ないうちは、配当金が出ても再投資できず、次回の積み立て時の予算に追加することになります。

SBI・V・S&P500は、原資産であるVOOから得た配当金を、国内課税しないで再投資しています。課税の繰り延べをしているのです。配当金の再投資効率はほぼ100%です。

魅力的なポイントサービスがある

残念ながら、SBI・V・S&P500は楽天証券では買えません。その理由は聞いても教えてくれません。僕は、SBI・Vシリーズが楽天証券で買える日は来ない気がしています。

SBI・V・S&P500の保有額に応じて、SBI証券なら年率0.0242%のポイントが付与されます。そのポイントはSBI・V・S&P500に再投資することも可能です。

また、SBI証券だと(キャンペーン中を除くと還元率は0.5%ですが)クレジットカード決済でVポイントが付与される素晴らしいサービスがあります。

定期売却サービスがある

SBI証券は投資信託の定期売却サービスを開始しています。無料サービスです。買うのも楽ちん、売るのも楽ちんです。

SBI・V・S&P500のデメリット

SBI・V・S&P500に対してVOOが有利なのは、保有コストの低さです。VOOを保有しているだけ(売買を配当金再投資も含めて一切しない)なら、負担するコストは激安の経費率だけです。

SBI・V・S&P500は保有コストが高い

VOOの保有コスト(売買を伴わない、ホールドしている時にもかかるコスト)は経費率0.03%だけです。SBI・V・S&P500は0.35%です。その差である0.32%ポイントだけ、SBI・V・S&P500はVOOに対してリターンが劣化します。

保有コストは資産全体にかかるため、資産額が大きくなるにしたがって(比較した場合)重く感じるはずです。

SBI・V・S&P500固有のコストを0.32%とした根拠

これはSBI・V・S&P500の評価記事からの抜粋です。

次はVOOトータルリターンとSBI・V・S&P500の、2020年11月11日から2021年6月30日までの比較です。

VOOトータルリターンとSBI・V・S&P500の、2020年11月11日から2021年6月30日までのリターン比較グラフ

青のラインはVOOトータルリターンーSBI・V・S&P500です。ラインの傾きはSBI・V・S&P500固有の運用コストを示しています。

次はVOOトータルリターンの運用コストを年率0.32%ポイント増量したものとの比較です。

VOOトータルリターンの運用コストを年率0.32%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。SBI・V・S&P500が超ローコストだと信じている人にはショッキングな結果だと思いますが、これが現実です。

現実的なシミュレーション

SBI・V・S&P500とVOOのどちらがおすすめか、その判断のために現実的なシミュレーションをしました。

  • SBI・V・S&P500は、月額予算が5万円なら、毎月初に5万円ぴったり買います。普通の積立投資です。
  • VOOは、月額予算が5万円なら、毎月初にそれをドルに替えて、VOOを買えるだけ買います。端数はドルのまま口座に残して、翌月に繰延べます。翌月は、前月の端数と新規資金の合計で、VOOを買えるだけ買います。端数は翌月に繰り延べます。
  • VOOから配当金が得られたらドル口座に入れ、端数と合わせた結果VOOを買えるならすぐに買います。すぐに買えない場合は、翌月月初の購入資金に加算されます。
  • VOOの期待リターンを年率6%とします。
  • VOOの配当金実績から、米国での10%課税後の配当金の利率を年率1.7%とします。
  • 1ドルは108円固定とします。
  • SBI・V・S&P500の運用コスト(VOOの経費率を除きます)を0.32%とします。
  • SBI証券を想定して、為替手数料は1ドルあたり4銭、買付手数料はゼロとします。

なお、VOOの税引き後評価額を円で手にするには、売付け手数料と為替手数料が必要です。これは売り方で大きく変わるため、記事中では無視しています。

比較期間3年間

SBI・V・S&P500の運用コストの重さを痛感する結果になりました。

比較期間3年間のグラフ

青のラインは税引き後評価額の差です。税引き後評価額の求め方はこうです。

  • SBI・V・S&P500は、含み益に譲渡税20.315%が課税された残りです。
  • VOOは、含み益(=保有株数✕株価ー元本)に譲渡税を課税した残り+ドルで口座に残っている端数です。

青のラインが左端で大きく暴れるのは、(計算式の)分母が小さいためで、正常です。安定した後は、最初はプラスですが、傾向は右肩下がりです。

青のラインにある氷柱(つらら)のようなものは、配当金が出たタイミングで再投資できたことで生じたものです。想定通りです。

このリターン差を生み出している主な要因です。

  • 運用コストはSBI・V・S&P500の方が高いです。
  • VOOは買い付け時に為替手数料が必要です。
  • SBI・V・S&P500は毎月初5万円をきっちりリスク資産に投じることで、その全額がキャピタルゲインの恩恵を受けます。
  • VOOは取引価格の整数倍でしか買えないので、端数が翌月に繰り延べされます。その端数はキャピタルゲインの恩恵を受けません。これが機会損失です。

僕は、この機会損失はもっと大きいと思っていたのですが、2年程度で逆転されてしまいました。

比較期間10年間

10年間で0.83%ポイントの差が生まれました。明らかにVOOの方が有利です。

比較期間10年間のグラフ

元本600万円で税引き後評価額の差が69,143円です。そう言われると、SBI・V・S&P500の運用コストが大きいと思ってしまいますよね。

SBI・V・S&P500の運用が、楽天全米株式ぐらいに低コストなものになれば、青のラインの傾きはかなり緩やかなものになります。そうなると、SBI・V・S&P500が提供してくれる圧倒的な利便性を享受するためのコストなのだと納得できると思います。

SBI証券のサービスを活用した場合

SBI・V・S&P500は楽天証券では買えないので、SBI証券のサービスを活用した場合について考えます。

三井住友クレジットカード決済で積み立て

月額5万円までですが、投資信託の積立投資を三井住友クレジットカードで決済することで、0.5%のVポイントが付与されます。(キャンペーン中は1.5%還元ですし、ゴールドカードだと倍の1%還元ですが、ここでは一般的な0.5%とします。)これで付与されるポイントを再投資すると、利益率が0.5%改善されます。(なお現在は、Vポイントで投資信託は購入できません。この記事ではVポイントを現金と等価として扱い、SBI・V・S&P500に再投資したものとします。)

シミュレーションの条件を次のように変更します。

  • SBI・V・S&P500を三井住友クレジットカード決済で毎月5万円積み立てます。
  • SBI・V・S&P500を証券口座から毎月250円積み立てます。

年率0.0242%のポイント還元率

SBI証券でSBI・V・S&P500を保有すると、年率0.0242%のTポイントが毎月付与されます。(TポイントではなくてVポイントが付与される人もいます。)

シミュレーション条件を次のように変更します。

  • SBI・V・S&P500の保有資産額に応じて付与されるポイントを、付与される月に先取りで積立投資します。実際には毎月変化するポイント分ぴったりには再投資できませんが、シミュレーションではそれを正しく行います。

三井住友クレジットカード決済で付与されるポイントのみ再投資

次は三井住友クレジットカード決済で付与されるポイントだけを再投資した場合です。

三井住友クレジットカード決済で付与されるポイントだけを再投資した場合のグラフ

青のラインが上方向にシフトしましたが、7年程度でVOOに負けてしまいます。

年率0.0242%のポイントのみ再投資

次は保有資産額に応じて付与されるポイントのみ再投資した場合です。

保有資産額に応じて付与されるポイントのみ再投資した場合のグラフ

依然VOOの方が有利ですが、リターン差が小さくなりました。年率0.0242%のポイントの再投資による効果の評価は、人によって分かれるかも知れません。

2つの合せ技

次は三井住友クレジットカード決済で付与されるポイントと、保有資産額に応じて付与されるポイントの両方を再投資した場合です。

三井住友クレジットカード決済で付与されるポイントと、保有資産額に応じて付与されるポイントを再投資

それでも8年程度でVOOに負けてしまいます。

もしSBI・V・S&P500の運用コストが楽天全米株式なみなら

青のラインの傾きを決めている、支配的な要素はSBI・V・S&P500の運用コストの高さです。ではもし、SBI・V・S&P500の運用コストが楽天全米株式なみなら(信託報酬を除いて考えます)どうなるでしょうか。2種類のポイントを再投資した場合でシミュレーションしました。(SBI・V・S&P500固有の運用コストを0.13%としています。)

SBI・V・S&P500の運用コストが楽天全米株式なみの場合

VOOに負けなくなりました。

結論

SBI・V・S&P500の運用コストが楽天全米株式なみに下がれば、大多数の人にはSBI・V・S&P500の方が有利なはずです。が、現在はそうではないので、利便性に難がありますが、VOOの方が有利です。

つまり、SBI・V・S&P500の運用コストの高さが本来発揮できるはずのメリットを損なわせています。

そうは言っても、投資信託の米国籍ETFに対するメリットの大きさを考えると、VOOに特段のこだわりがないなら、SBI・V・S&P500が良いと思います。いずれは運用コストも下がるでしょう。

SBI・V・S&P500よりVOOが向いているのは

次の条件の多くがあてはまる場合、SBI・V・S&P500よりVOOが向いているかも知れません。

  • 1,000万円などのまとまった金額で一括投資できる。
  • 短期間に数千万円投資できる。
  • 米国籍ETFのデメリットはあまり気にならない。
  • 年4回もらえる配当金に喜びを感じる。
  • 配当金は使ってしまうのもいいと思っている。

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