スリム先進国リートは信託報酬が最安の、先進国リートインデックスです。国内リート同様、先進国リートもリターン比較に難がありますが、スリムシリーズ嫌いでなければ最良の選択肢です。
更新情報
第四期運用報告書の内容を反映させました。また、参照しているデータを最新版に更新しています。
スリム先進国リート
2019年10月31日に税抜き信託報酬0.20%で設定されました。当時最安水準だったSmart-i 先進国リートと同率です。以来、信託報酬は引き下げられていません。
ベンチマークはS&P先進国REIT指数(除く日本)です。
スリム先進国リートは、eMAXIS先進国リート(税抜き信託報酬0.60%)の廉価版です。マザーファンドは同じです。
先進国リートインデックスは株式に投資しないため、つみたてNISA適格要件を満たせません。そのため、スリム先進国リートはつみたてNISA適格ではありません。
またiDeCoナビによると松井証券のiDeCo口座で扱われています。
意味のない受益者還元型信託報酬制度
スリムシリーズは純資産総額が500億円、1,000億円を超えると信託報酬が漸減される「受益者還元型信託報酬制度」を採用しています。漸減率は商品によって異なりますが、スリム先進国リートのものは小さすぎて意味がありません。
この漸減率はスリム全世界株式(オール・カントリー)やスリム米国株式(S&P500)と同じで、シリーズ最小です。信託報酬0.20%はスリムシリーズでも高い方なので、漸減率に配慮して欲しかったですね。
次は信託報酬が漸減される様子を示したグラフです。純資産総額が500億円を超えると減り始め、1,000億円を超えると減り方が変わります。右端は2,000億円ですが、それだけ増えても0.1994%程度ですから、たったの0.0006%ポイントしか減りません。
競合商品との比較で、メリットのひとつとして宣伝されるかも知れませんが、実質的な効果は期待できません。
運用コスト=信託報酬+隠れコスト
運用コスト(トータルコスト)は信託報酬と隠れコストの合計です。次は運用報告書から計算したトータルコストです。
スリム国内リートの隠れコストは第二期になって増えました。
隠れコストが増えた要因はその他費用の「信託事務の処理等に要するその他諸費用」が上昇したためです。マザーファンドが同じeMAXIS先進国リートも同様でした。
リターン比較
先進国リートのリターン比較には、株式インデックスには見られない、理解できない現象が観測されます。そのことに注意しないで単純にある期間での騰落率を比較すると、間違った判断をしてしまいます。
eMAXIS先進国リートとの比較
次はスリム先進国リートの設定直後を避けた、2019年11月15日から2022年3月18日までの、eMAXIS先進国リートとの比較です。
青のラインはリターン差で、スリム先進国リート-eMAXIS先進国リートです。マザーファンドが同じだけあって、期待通りきれいな右肩上がりの直線です。その傾きは、トータルコスト差を示しています。
次はスリム先進国リートの運用コストを年率0.39%ポイント増量したものとの比較です。
青のラインは真っ平らになりました。このことからスリム先進国リートのトータルコストは、eMAXIS先進国リートより年率0.39%ポイント安いと思われます。ところが運用報告書から計算したトータルコスト差は0.45%ポイントほどあります。(つまり期待値よりはコストが高いということです。)この差がどこから生まれたのかは不明です。
Smart-i 先進国リートとの比較
次は2019年11月15日から2022年3月18日までの、Smart-i 先進国リートとの比較です。どちらも税抜き信託報酬は0.20%です。
青のラインはスリム先進国リートーSmart-i 先進国リートです。コロナショックによる株価暴落時に差が開いたことを除くと互角でしたが、2021年は差が開きつつあります。これならスリム先進国リートの方が有利ですね。
売れています
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は165億円です。
安定した資金流入が継続しています。
次はSmart-i 先進国リートもプロットしたものです。純資産総額は31億円です。
緑のラインがSmart-i 先進国リートです。スリム先進国リートの方が高い人気を獲得できています。
評価:スリムシリーズ嫌いでなければ最良の選択肢
トータルコスト、運用実績、人気を考えると、スリムシリーズが嫌いでなければ最良の選択肢と言えます。