米国株式に興味のない方でも、SPYという名前は聞いたことがあるかも知れません。S&P500種指数に連動するETFで、VOOやIVVと良く比較されます。それらの中では経費率が0.09%とダントツに高いです。(0.9じゃなくて0.09ですよ。それでダントツに高いってどんな世界?)
SPYDはS&P500のうち、配当利回り上位80銘柄に均等に投資します。SPYDを推している米国株式ブロガーもいます(いました?)が、SPYDを買うだけのインデックスファンドが設定されても売れないと思います。VYMを買うだけのインデックスファンドである、楽天米国高配当株式のように苦戦すると思うのです。なぜなら、トータルリターンがS&P500より悪いからです。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しました。
SPYDを買うだけのインデックスファンド
楽天米国高配当株式はバンガード社のETFであるVYMを買うだけのインデックスファンドです。VYMはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスをベンチマークにしています。年4回もらえる、少し高めの配当金はファンドが国内課税なしで再投資します。よって、配当金を手にすることを期待するのではなく、再投資されることで高いリターンを期待することになります。
SPYDを買うだけのインデックスが設定されたとしても、考え方は同じです。配当金の利率が高くても、取引価格の上昇を含めたトータルリターンが低ければ意味がありません。
VYMとSPYDのトータルリターン比較
次はSPYDの設定直後を避けた、2015年11月10日から2020年9月30日までの、VYMとのトータルリターン比較です。
赤のラインがVYMトータルリターン、緑のラインがSPYDトータルリターンです。どちらも円換算後、配当金を米国10%課税のみで再投資しています。青のラインはリターン差で、VYMトータルリターンーSPYDトータルリターンです。
コロナショックによる株価暴落前は互角でしたが、株価暴落後に命運が分かれました。次は2020年年初からの比較です。
SPYDはVYMより下落率が高かったです。底値からの回復の様子は大差ありません。
配当金実績
次はSPYDとVYMの配当金(米国での10%課税後)の利率の推移です。オレンジのラインがSPYDです。
SPYDは年平均で4%を超えていました。
VYMより高配当ですね。でも(コロナショックによる株価暴落前の)トータルリターンは大差ないので、ETFの保有で年4回もらえる配当金の額が重要という人ならともかく、配当金を効率良く再投資することで得られる「トータルリターン」を重視するなら、SPYDもVYMも似たようなものです。(ただし、ETFを自分で買う場合、配当金の再投資効率が悪くなるので、似たようなもの、とは言い切れません。)
SPYとSPYDのトータルリターン比較
次はSPYDの設定直後を避けた、2015年11月10日から2020年9月30日までの、SPYとのトータルリターン比較です。S&P500種指数の強さが認識できます。
赤のラインがSPYトータルリターンです。2017年まではSPYDが有利でしたが、2018年以降は互角になりました。2020年はSPYの圧勝です。
この様子だと、SPYDを買うだけのインデックスファンドを設定しても、トータルコストはスリム米国株式(S&P500)に勝てないでしょうし、リターンも普通になり人気が出るとは思えません。つみたてNISA適格にも(指定インデックス投資信託では)なれませんしね。
SPYとVYMのトータルリターン比較
次は同じ期間における、SPYとVYMのトータルリターン比較です。
S&P500は強いです。米国株式投資で、市場平均に勝つのが難しいと言われるのが良く分かります。
インデックスファンドが人気を獲得するのは難しい
競争力のある信託報酬で設定したものの、人気を獲得できずに低迷を続けているインデックスファンドは掃いて捨てるほどあります。むしろ、高い人気を獲得して売れているものが少ないと言った方がいいでしょう。
楽天米国高配当株式が不人気なのは、パフォーマンスが凡庸なことを考えればやむを得ないかも知れません。
一方、iFree NEXT NASDAQ100は人気急上昇中です。次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は106億円です。
不人気だった頃から良い商品なのでもっと人気が出ていいと評価していましたが、NASDAQ100の最近の(異様とも言える)好調さで資金流入が一気に増えました。
結論:SPYDを買うだけのインデックスファンドは設定されないでしょう
設定しても人気が出るとは思えないので、設定されないでしょう。でも、超絶不人気なインデックスファンドと同じ組成の商品を設定し、それも不人気だったということも実際にある業界なので、僕の予想に反して登場するかも知れません。
ボッタクリ商品でなければ、選択肢が増えることは歓迎しますが、あまりに不人気だと繰上償還のリスクが高まるのも事実です。