iDeCoは年金制度として設計されたため、制約が多くて使いづらいです。使いやすさにおいてはNISA、つみたてNISAの少額投資非課税制度にかないません。そのiDeCoですが、厚生労働省は制約のひとつを緩和する検討に入ったとのことです。(ただし、これは日経新聞の勇み足の可能性もあります。)
このニュースは(正しい場合)次の2点でとんでもなく素晴らしいです。
- これが実現されると、真の意味でiDeCoを持ち運べるようになります。
- 厚生労働省は決してくじけていません。
企業型確定拠出年金との併用
現在楽天証券のiDeCo口座で楽天全米株式に投資しているDさんがいるとします。Dさんが現在勤めている企業には企業年金がないためiDeCoの拠出可能額は月額23,000円で、米国株式の未来を信じて上限いっぱい拠出しています。
5年間で投資元本は138万円(マイナス手数料)となりました。評価額は170万円ですが、Dさんは67歳ぐらいで解約して投資成果を手にする予定なので現在の評価額など気にしていません。
ところが事情があって転職したところ、新しい企業には企業型確定拠出年金があるので、iDeCo口座は廃止して下さいと総務から言われてしまいました。iDeCo口座を廃止ですと?5年間コツコツ積み立ててきた大事な楽天全米株式はどうなるのでしょう。悲しいことに全額時価で売却され、その資金は企業型確定拠出年金に移動します。ここで追い打ちをかけるさらに2つの予想外がDさんを立ち直れないほど悲しませます。
- 移管処理中に株価調整が始まり楽天全米株式の基準価額は大きく下落、評価額が130万円に下がったところで売却されてしまった。
- 企業型確定拠出年金の投資信託のラインアップは信託報酬が1%を超えるクソ投信ばかりだった。
Dさんは転職先を決める際に企業年金の有無、iDeCoの扱いがどうなるのか確認しなかった自分をひどく責めてしまいました。
「iDeCoは持ち運べる」にある落とし穴
ネット上では良く「iDeCoは持ち運べる」と説明されていますが、これは極めて不正確な表現です。
企業年金がない場合はそのままiDeCo口座で運用できます。この場合は持ち運びとは無関係です。企業年金がある場合、iDeCoの扱いはその企業が決めます。
- iDeCoと併用可能です。iDeCoの拠出可能額は月額2万円に変わります。(セーフ)
- iDeCoへの拠出はできませんが、運用指図者にはなれます。(ギリギリセーフ)
- iDeCoとの併用はできないので、資金を移動してiDeCo口座は解約して下さい。(アウト)
2番目だと楽天全米株式のガチホはできますが、拠出はできないのでライフプランが大きく崩れます。企業型確定拠出年金のラインアップに良い投信があればまだ救われますが、一般にはひどいものが多いと言われます。運次第ですね。
3番目は最悪です。確かに資金は持ち運べますが、本当に持ち運びたいのは楽天全米株式の保有口数です。ちょうど、A証券会社の特定口座にある楽天全米株式を全口数、B証券会社の特定口座に移管するようにです。そして、企業型確定拠出年金のラインアップがクソ投信ばかりだったら、それまでiDeCoをコツコツ積み立ててきた努力をリセットされるような気分になるでしょう。
転職先に左右されないiDeCoでありたい
報道されている改善が実現すると、転職先に企業型確定拠出年金があってもiDeCo口座を維持でき、毎月2万円まで拠出可能になります。そのため、転職先を選ぶのに企業型確定拠出年金の有無や、ある場合のその企業のiDeCoへの対応を気にする必要がなくなります。
また、iDeCoの拠出可能額を除いて、働き方による制約を受けなくなります。国民年金の第1号、第2号、第3号被保険者のどれに属しても、最長20歳から始めたiDeCoの資産を保持(ガチホ+継続拠出)できます。
これは本当に素晴らしいことです。いや、現状があまりに残念なわけですが、悪いところを修正していく姿勢が大事です。
頑張れ厚生労働省
「老後資金2000万円」問題で、傲慢かつ無礼な麻生太郎財務相は官僚をひどくビビらせました。つみたてNISAやiDeCoの課題改善はもう望めないという声も聞かれました。でも報道が事実なら、厚生労働省は決してくじけていません。今回の案件は財務省の顔色を見なくてもできそうな内容ですが、それでも高いモチベーションなくしては進められないはずです。僕は高く評価します。
それからついでで申し訳ございませんが、iDeCoの拠出可能年齢を65歳に引き上げる件もよろしくお願いします。
僕は間に合いませんが、6歳若い妻には間に合って欲しいのです。応援しています。