商品に流行り廃りがあるのは、投資信託も同じです。近年はレバレッジ型ファンドが人気でいろんな資産を対象にした商品が組成されました。
S&P500 4倍ブル型ファンドはレバレッジ型ファンドとしては最後発の商品ですが、S&P500種指数に4倍のレバレッジをかけます。正気ではないですね。
更新情報
参照しているデータを最新版に更新しています。
S&P500 4倍ブル型ファンド
2022年2月17日に税抜き信託報酬1.13%で設定されました。高いですね。そして別途、投資対象である債券の経費がかかりますが、それがいくらかは公表されていません。印象悪いです。
- 運用会社はT&Dアセットマネジメントです。
- VAULT Investments plcが発行する円建パフォーマンス・リンク債券(担保付円建債券)への投資を通じて、日々の基準価額の値動きがS&P500種指数の値動きの4倍程度となることを目指します。
- 為替ヘッジされません。
- 信託期間がたったの3年しかなく、2025年2月に償還されます。
- 購入時手数料税抜き3.0%が設定可能で、証券会社を選ばないとしれっと徴収されます。
- 現在はSBI証券だけが扱っています。
もちろん、つみたてNISA適格ではありません。
いろいろと好ましくないことが多い印象です。でも投資するかどうかは受益者が判断すべきことです。
運用コスト
第一期運用報告書が公開される2023年4月頃までは、公式な運用コストは分かりません。
リターン比較
スリム米国株式(S&P500)との比較
次はレバレッジをかけていない、S&P500種指数に連動する商品であるスリム米国株式(S&P500)との比較です。S&P500 4倍ブル型ファンドの設定直後を避けた2022年3月1日から9月22日までの比較です。
緑のラインがS&P500 4倍ブル型ファンドです。スリム米国株式(S&P500)はまあ横ばい(わずかに上昇)ですが、S&P500 4倍ブル型ファンドは54%以上も下落しています。
iFreeレバレッジS&P500との比較
次はレバレッジ2倍のiFreeレバレッジS&P500との比較です。
iFreeレバレッジS&P500も下落幅が大きいですが、S&P500 4倍ブル型ファンドよりは(当然のことですが)小さいです。強気相場では逆の結果が期待されるので、この比較結果だけでS&P500 4倍ブル型ファンドの良し悪しは判断できません。
スリム米国株式(S&P500)の4倍ブルとの比較
次はスリム米国株式(S&P500)の日々の値動きを4倍にしたものとの比較です。
赤のラインがスリム米国株式(S&P500)の4倍ブルです。え?何でこうなるの?
このグラフだと人間の脳は錯覚を起こすので、リターン差を示す青のラインを見るのが良いのですが、青のラインがフラットに近い状態が期待値です。比較期間の前半で大きく差が開いているのは、S&P500 4倍ブル型ファンドの値動きが期待通りでないからです。
次は比較開始を2022年4月15日に変更したものです。
青のラインはそれらしくなりました。S&P500 4倍ブル型ファンドは4倍のレバレッジを実現するのに、高い信託報酬、債券の経費率、レバレッジをかけるための金利負担が必要なので、単純に値動きを4倍にしただけのものよりはパフォーマンスが悪くなります。
逆に言えば、この差はS&P500 4倍ブル型ファンドの運用コストの高さを示唆しているわけです。そして設定から4月中旬頃まではその運用コストがとても高かったと推測できます。(いや、今でも十分高いかな。)
売れ行きは
販売しているのはSBI証券だけだし、パフォーマンスから考えても売れてはないだろうと思っていたのですが、ところがどっこい、買われています。
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は5.81億円です。
流石に頭打ちになってきました。現在の相場でS&P500 4倍ブル型ファンドに投資するというのは正気ではないですね。まともな判断能力のある人は買わないと思います。
評価:おすすめしません
S&P500種指数にレバレッジをかけたい場合、iFreeレバレッジS&P500は良い選択肢だと思います。為替ヘッジありなのが大嫌いって方もいるとは思いますが、組成内容に好感が持てます。
一方のS&P500 4倍ブル型ファンドは、レバレッジの倍率が高すぎると思いますし、そもそも信託期間が3年しかない時点で長期投資に向いていません。一般の方は投資しない方がいいでしょう。
なお、相場を読みながらギャンブルを楽しむ感覚で利用する分にはいいと思います。