次の記事で特別法人税の復活はありえないと書きました。
その記事に頂いたコメントです。
仮に特別法人税が復活したとしても特定口座よりは有利なのだから始めない理由がない
では現在iDeCoを利用している人がいて、2020年4月から特別法人税が復活した場合にどうなるか計算しました。
比較方法
- 2017年3月からiDeCoに毎月23,000円拠出しています。
- 拠出時の所得控除は所得税5%、住民税10%の合計15%とします。
- 2020年4月から特別法人税が復活した場合と、未来永劫復活しなかった場合で計算します。
- 年齢制限により拠出は2021年12月で終了し、以降2028年末まで運用(ガチホ)します。総拠出月数は58です。
- 特別法人税復活後、毎月1回総口数が(1.173%÷12)だけ減らされます。ガチホ中もです。
- 特定口座の場合についても計算します。
- iDeCo加入時の手数料2,777円も勘案します。
- iDeCoの拠出額23,000円から手数料167円が減額されて対象インデックスファンドが購入されます。
- 特定口座の場合は拠出額23,000円そのままで対象インデックスファンドが購入されます。
- 対象インデックスファンドのリターンを年率5%から1%まで変えたもので比較します。
- 拠出終了後は毎月64円手数料がかかるものとします。これは別精算とします。
- iDeCo口座、特定口座ともに月初に対象インデックスファンドを買うものとします。
- 2029年1月に全額払い出します。手数料は440円とします。
- iDeCoは税制上有利とされる一時金で受け取ります。
iDeCoの受取時の税率
一時金を選択すると「退職所得」になり、課税所得は次の式で計算されます。
課税所得=(資産額ー退職所得控除額)÷2
退職所得控除額は加入期間20年までは年40万円、21年目以降は年70万円ですので、総拠出期間58ヶ月の端数を切り上げで(切り上げのはず)5年×40万円=200万円です。この記事では課税所得はどれも195万円以下なので所得税率は5%としています。
年率5%の場合
基準価額が年率5%で成長するインデックスファンドです。複利効果で弓なりに曲がっています。
次は58ヶ月間23,000円拠出した後、7年間ガチホした時の元本と評価額の推移です。
複利効果により年率5.5%です。
次は問題の特別法人税が2020年4月に復活した場合です。リターンが年率4.2%に劣化します。
明細です。
利益率だけ並べました。
特別法人税が復活しても特定口座より有利です。
年率4%の場合
ここからは表だけです。
利益率だけ並べました。
特別法人税が復活しても特定口座より有利です。
年率3%の場合
利益率だけ並べました。
特別法人税が復活しても特定口座より有利です。
年率2%の場合
利益率だけ並べました。
特別法人税が復活しても特定口座より有利です。
年率1%の場合
特別法人税が復活すると評価額は元本を下回ります。
それでも所得控除が大きいのでトータルでの利益率は余裕でプラスです。
利益率だけ並べました。
特別法人税が復活しても特定口座より有利です。
結論
ここで扱った条件だと、所得控除を最低水準の15%と仮定しても、iDeCo口座特別法人税ありの方が、特定口座よりも有利なことが分かりました。この計算方法が気に入らない人もいるでしょうし、特別法人税の復活リスクを大きいと考えてiDeCoの利用を勧めない立場の人はなおさらそうかも知れません。
僕は特別法人税は復活しないと考えているので、特別法人税が復活してもiDeCoを利用すべきとの立場は取りません。特別法人税はリターンを大きく劣化させるとんでもなく大きなリスクであることは確かです。また、条件が変われば比較結果の印象も変わるでしょう。
これは僕の感想ですが、iDeCoについて評価する際に拠出金全額が所得控除になることを適切に扱っていない投信ブロガーが多いと思います。好き嫌いは別にして、適切な計算結果で損得を判断すべきです。
ブロガーは僕も含めて自分のポジションのバイアスがかかった記事を書く傾向があるので、一般の読者の方はひとつの記事をうのみにしないで幅広く情報収集して自分なりの判断をしてください。