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スリム全世界株式(3地域均等型)の運用コストと評価

スリム全世界株式(3地域均等型)はスリムシリーズの中では不人気です。設定されてから4年になりますが、純資産総額は51億円しかありません。スリムシリーズなら何でも売れるわけではないことを証明しているかのようです。

でも安定した資金流入があり、その良さを分かっている人に買い支えられているようです。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

スリム全世界株式(3地域均等型)

2018年4月3日に設定されました。税抜き信託報酬0.142%で設定されましたが、その後2回引き下げています。すべて同率への対抗値下げですが、どちらも対抗したのは日本を含む全世界株式インデックスでした。次はその履歴をまとめた表です。

信託報酬引き下げ履歴表

三菱UFJ国際投信は、スリムシリーズの全世界株式3兄弟(除く日本、3地域均等型、オール・カントリー)の信託報酬を同じにしており、他社の「全世界株式インデックス」に対抗する時はまとめて値下げしています。

なおiDeCoナビによると、松井証券のiDeCo口座で扱われています。

賛否両論あったスリム全世界株式(3地域均等型)の組成

スリムシリーズ第一弾が設定されてから7ヶ月後に登場した楽天全世界株式は、あのVTがインデックスファンドで買えるということもあって、いきなり高い人気を獲得しました。その頃、スリムシリーズにあった全世界株式は「除く日本」だけだったので、投信ブロガーは日本を含む全世界株式に、時価総額比で投資する、楽天全世界株式の対抗となる商品を熱望していました。

ところが三菱UFJ国際投信が出した答えは違っていました。2018年4月3日にスリム全世界株式(3地域均等型)を設定したのです。そして当時、ブロガーミーティングで「時価総額比の全世界株式の予定はない」と明言して、出席者の多くをがっかりさせました

均等配分と時価総額比配分では組成意図が異なるので、単純にどちらが良いと言えるものではありません。が、受益者の多くが時価総額比の組成を嗜好し、それが人気を確かなものにした結果、スリム全世界株式(オール・カントリー)の躍進につながったのでしょう。

スリム全世界株式(3地域均等型)はスリムシリーズの中では圧倒的に不人気ですが、純資産総額を10億円集めることすらできないファンドが掃いて捨てるほどあることを考えれば、一定の需要(ニーズ)に応えられていると言えるでしょう。たとえば、スリム全世界株式(3地域均等型)の異母兄弟と言えるニッセイインデックスパッケージ(内外・株式)の純資産総額は0.51億円しかありません。

運用コスト

次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。オール・カントリーと比較しています。

運用報告書から計算したトータルコスト表

隠れコストが高めなのは、コストがかさむ新興国株式の比率が33%もあるためですね。でもトータルコストは十分低水準です。

第三期決算期間の隠れコストは、第二期よりも削減されています。

トータルコストの第二期、第三期比較表

0.021%ポイント削減されました。

3地域均等型とオール・カントリーのリターン比較

次はスリム全世界株式(3地域均等型)とスリム全世界株式(オール・カントリー)のリターン比較です。オール・カントリーの設定日直後を避けた、2018年11月15日から2022年4月28日までです。

3地域均等型とオール・カントリーのリターン比較グラフ

赤のラインがオール・カントリー、緑のラインが3地域均等型です。青のラインはリターン差で、オール・カントリーー3地域均等型です。

この比較期間だとオール・カントリーの方が高パフォーマンスですが、一方的にリターン差が広がるというわけでもありません。

次は同じ期間における、スリムシリーズの先進国株式、新興国株式、TOPIXのリターン比較です。

スリムシリーズの先進国株式、新興国株式、TOPIXのリターン比較グラフ

この比較期間では赤のラインの先進国株式が最もパフォーマンスが高く、緑のラインの新興国株式も結構頑張っていましたが、2021年4月以降は成長できていません。青のラインの国内株式はちょっと見劣りしますね。

オール・カントリーの現在の資産配分比率はこうなっています。(国内株式のベンチマークはTOPXではなくてMSCIジャパンです。)

  • 先進国株式:83.8%
  • 新興国株式:10.9%
  • 国内株式:5.2%

3地域均等型とオール・カントリーのどちらが有利かは時代によります。その組成の背景にある考え方が違うので、どちらかが絶対に良いということはありません。不人気なことを承知の上で3地域均等型に投資している人は、均等配分の意味を良く分かっているのだと思います。

売れ行き

パワハラになるので、他の商品とは比較しません。次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は51億円しかありません。

スリム全世界株式(3地域均等型)の設定来の総口数の推移グラフ

本当に不人気なファンドの場合、資金流入が減り頭打ちになったり、資金流出傾向になったりします。が、スリム全世界株式(3地域均等型)はそうではありません。スリムシリーズの1商品にしては(そして全世界株式という名前が付いているにも関わらず)資金流入量が少ないですが、一定のペースで継続しています。

コロナショックによる株価暴落後もその傾向は変わりません。肝の座った受益者が買っているということではないでしょうか。

Fund of the Yearの順位

人気ではオール・カントリーに全くおよばない3地域均等型ですが、意外なことにFund of the Yearには3年連続で18位にランクインしていましたが、2021年度は選外になりました。

Fund of the Yearの順位表

Fund of the Yearの投票者のコメント

FOYの投票者のコメントを引用します。なお、太字にしたのは僕です。

FOY2019

以下、こちらからの引用です。

  • 世界中にバランス良く分散投資できて超低コスト。全ての人にオススメできる優良ファンドだと思います。もっと評価されるべき。
  • 低コスト化の努力、一本で株式をカバーできる手軽さは素晴らしい!
  • 均等配分の定量的合理性に加え、個別ファンドの平均より低い運用管理費用を実現しているため。
  • メインで積立中。 同じシリーズの全世界株式(オールカントリー)の方が圧倒的に人気ですが、自分のアセットアロケーションにはこちらの方がフィットしているので。 また、スリム全世界株式シリーズは信託報酬同一なので、新興国株式比率の高い同銘柄は実は一番コスト低減頑張ってる商品ですよね。
  • 低コストで日本や新興国株に投資できる投資信託。
  • リスクオフで日本や新興国が大きく下げた時、うねり取りで買うのに適している。

FOY2020

以下、こちらからの引用です。

  • 全世界に投資できるファンドで最も低コスト!新興国株が3割も入ってこの安さ!コロナショックの大暴落の中でも自信を持って買い増すことが出来ました。
  • メインで利用しているファンド。自分のポートフォリオに合うのと、構成ファンドの信託報酬を加重平均すれば最も低コスト化頑張っているファンドだと思います。
  • (1)複数ファンドを保有している身としては、自動リバランスをしてくれるこのファンドの存在がありがたい。(2)新興国株式部分は、競合他社よりも三菱UFJ国際投信のものが運用効率が良いようで、信頼できる。(3)新興国株式が1/3含まれているにも関わらず、信託報酬はオールカントリーと同じでトップクラスの安さ。(4)将来的に、競合の全世界株式ファンドの信託報酬が値下がりした場合も追従してくれる(と信じている)。(5)販売から2年半あまりで約24億円と、スリムシリーズとしては寂しい売れ行きなので、応援したい
  • 子ども名義の積立は引き継ぐときの説明のしやすさを重視し、バランスファンドと決めていました。そこそこ大きめの比率で国内株式積み立てる派にはこれがベストのように思います。

評価:不人気ですが生き残れるでしょう

「均等配分の良さが分かる人は少ないのだよ」と言うと反発喰らいそうですが、そういうものです。おそらく増加率は低いものの、純資産総額は増え続けるでしょう。

それに、受益者にとって良いこともあります。

  • スリムシリーズの3商品の税込み信託報酬の平均は0.1478%ですが、3地域均等型の税込み信託報酬はたったの0.1144%です。
  • 三菱UFJ国際投信は、スリム全世界株式3兄弟の信託報酬を同じにしてきているので、将来オール・カントリーまたは除く日本の信託報酬が対抗値下げされた場合、漁夫の利を得る形で3地域均等型も安くなります。

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