世界中で疫病の感染拡大が止まらず、ついに2月21日から株価急落が始まりました。今ではそれを暴落と呼ぶことに異論を唱える人は、ほぼいないと思われます。インデックスファンドの基準価額は最高値から2、3割下落しました。
株価が短期間で大きく下落したので、ビビって狼狽売りしたという話も数多く聞いています。でも、狼狽売りは最悪の選択肢です。期待リターンがプラスの資産クラスに投資したのなら、暴落しても買い持ちを続けるべきです。そして、積立投資の設定を変更すべきではありません。買い持ちと積立投資の継続、これこそが資産形成の鍵です。
さらに可能なら、無理のない範囲で買い増し(追加投資)できると基準価額が回復した時に大きなリターンを手にできます。
さて、インデックスファンドで人気の高いスリムシリーズの受益者は、株価暴落に直面してどのような行動を取ったでしょうか。資金流出入額の累積の推移を確認しました。
以下、eMAXIS Slimをスリムと表記します。
資金流出入額の累積
参照しているデータは次の2つです。
- 基準価額の日次データ
- 純資産総額の日次データ
純資産総額は買い注文、売り注文が共になくても、次の理由で減ります。
- 毎営業日、運用コストが天引きされます。
- 配当金を出すファンドの場合、決算日に純資産が減額されます。
この記事では運用コストは無視します。スリムシリーズは配当金を出していません。
また、純資産総額は基準価額の変動の影響を受けます。前営業日からの基準価額の変化を今日の純資産総額に加味すると、買い注文ー売り注文による純資産総額の変化が分かります。この、資金流出入額の累計をグラフにプロットします。
総口数の推移との違い
受益者が資金を投入した額ー資産を売却した額の累積(合計)は、受益者の行動を基準価額の変動に影響されることなく見ることができるはずです。
総口数も基準価額の変動の影響を受けませんが、暴落で基準価額が下がると投入する資金が同じでもより多くの口数を買えてしまいます。
次はスリム米国株式(S&P500)の総口数の推移です。暴落してからの伸びが著しいです。
次はスリム米国株式(S&P500)の資金流出入額の累計の推移です。
違うものを見ているのですが、グラフの形状はほぼ同じです。特に、気になる暴落が始まった2月21日以降の様子に差があるように見えません。
右端部分を並べてみました。左が総口数、右が資金流出入額の累計です。
計算結果をCSVに吐き出し、エクセルで検算しましたが、2月14日から3月13日までの1営業日あたりの平均資金流入額は、その前月の1.9倍でした。
次は検算用エクセルに描かせた、2019年年初からの営業日ごとの資金流出入額の推移です。
この結果から、見ているグラフは正しいと思います。
スリムバランス(8資産均等型)
増加傾向に変化は見られません。暴落を気にしていないように見えます。
スリム先進国株式
暴落で、わずかながら増加ペースが上がったように見えます。
スリム全世界株式(オール・カントリー)
2020年に入ってからラインが折れ曲がるほど人気が加速しましたが、暴落でさらに加速したように見えます。
スリム全世界株式(除く日本)
暴落で、わずかながら増加ペースが上がったように見えます。
スリム国内株式(TOPIX)
暴落で増加ペースが上がりました。
スリム国内株式(日経平均)
日経平均に連動するインデックスファンドは、短期売買の対象にされることが多く、スリム国内株式(日経平均)も例外ではありません。このように、他の資産クラスと全く異なる推移をしています。
それでも、暴落で急増しています。株価が回復したらまた売られるものと予想します。
スリム新興国株式
傾向に変化は見られません。
まとめ:むしろ買い増しされているようです
この結論は、総口数の推移を観察した記事から変わっていません。
スリムシリーズに限らず、多くのローコストインデックスファンドに共通して見られる傾向は、暴落でむしろ買い増しされている、です。ただし、国内リートは、暴落前からですが、基準価額の変動に敏感で、激しく売買されています。次の記事に書いた傾向が続いています。
僕はここに掲載したもの以外にも多数の商品について、資金流出入額の累積の推移を確認しました。もっと狼狽売りされているかと思ったのですが、そんなことはありませんでした。売れていないテーマ型投信の中には、これは狼狽売りだろうと思われるものも散見されましたが、純資産総額の多い、良質なインデックスファンドでは狼狽売りはあまり見られませんでした。(あくまで僕の印象です。)
予想外でしたが、とてもいい傾向だと思います。