バランスファンドの組成は無数にありますが、8資産均等型は人気が高いです。それは純資産総額が実証しており、スリムバランス(8資産均等型)は839億円あります。(おおむね)ローコストとされるバランスファンドでは、セゾングローバルバランス、世界経済インデックスに次ぐ3位です。
ところが、8資産均等型に批判的な(頭が悪いとかダメとか言う)評価記事も散見されます。純粋にそう思って書いている場合もあれば、それがアクセス数を得られるネタだからという場合もあるでしょう。え、この記事ですか?もちろんアクセス数も狙いますよ。
高い人気
平均的な感覚でローコストバランスファンドに分類される商品だと、純資産総額の3位以下に8資産均等型が並びます。次は3位以下を8資産均等型バランスファンドだけにしたものです。
8資産均等型7商品の合計は2029億円にもなります。不人気だったらこうはなりません。逆に、それだけ束になってもセゾングローバルバランスには届かないのですが、これがバランスファンド界の勢力図です。
世界経済インデックスも(信託報酬が高めながら)頑張っていますが、じきにスリムバランス(8資産均等型)が逆転すると思われます。次は世界経済インデックスとスリムバランス(8資産均等型)の設定来の資金流出入額の累計の推移です。
緑のラインがスリムバランス(8資産均等型)です。資金流入ペースは世界経済インデックスを上回っています。まだ純資産総額で負けているのは、過去に投資された資金の含み益が大きいためです。
では、これだけ人気が高い8資産均等型のどこがダメなのでしょうか?
8資産均等型への批判
8資産均等型への批判は、感情的または非論理的なものを除くと、次の2つに集約されると思います。(根っこは同じです。)
時価総額の低い資産がオーバーウェイトになる
現在圧倒的な人気を誇るスリム全世界株式(オール・カントリー)は、日本を除く先進国、新興国、日本の株式に時価総額比で投資します。順に80%、12%、7%程度です。ところが8資産均等型は次の8資産に均等に投資します。
- 先進国株式
- 新興国株式
- 国内株式
- 先進国債券
- 新興国債券
- 国内債券
- 先進国リート
- 国内リート
ほぼ12.5%ずつになりますから、株式市場への投資配分という観点では、新興国と日本が極端なオーバーウェイトとなります。同様の考え方で、リートのウェイトが先進国と国内で全体の1/4にもなることを問題だと指摘する人もいます。
ハイリスクなリートの比率が高い
リート(不動産投資信託)のリスクは株式並に高いです。次はeMAXIS先進国株式とeMAXIS先進国リートの、設定来のリスク(月次換算)の推移です。
赤のラインがeMAXIS先進国株式です。いい勝負ですね。
次はeMAXIS TOPIXとeMAXIS国内リートの推移です。
時期によりますが、国内リートのリスクは高いです。コロナショック時にはその弱点をさらけ出すような暴落でしたので、緑のラインが突き抜けています。
均等配分は逆張りです
投資対象資産の比率を時価総額比で決めるものを「順張り」と言います。好調な資産は時価総額が増えるので、投資比率が上がります。逆に不調になると下がります。代表格はスリム全世界株式(オール・カントリー)や楽天全世界株式です。それらには、高くなりすぎたから利益確定して安くなっている資産を買い増ししよう、という考えはありません。
次はMSCIコクサイに連動する、eMAXIS先進国株式の米国比率の推移です。
米国株式が他の先進国株式より好調な時は比率が上がり、不調な時は下がっています。
比率が固定のものは逆張りです
バランスファンドで良く使われる、均等型、安定型、株式重視型、積極型、堅実型などの「型」は、投資対象資産とその投資比率を決めています。それらの多くは比率が固定です。比率を変動させません。
比率を変動させるものもありますが、バランスファンドの組成でそれをやると(多くの場合)アクティブファンドになってしまいます。比率が固定なら、投資対象資産の各指数がつみたてNISAの指定インデックスである場合、組成したバランスファンドは合成ベンチマークに連動するものとして申請することで、つみたてNISA適格になれます。
投資比率を固定にせず、かつ、つみたてNISAの指定インデックス枠で適格申請するためには、投資比率も含めた指数に連動させるか、GDP比率を元に機械的に変更するしか(基本)ありません。
で、比率が固定のものを「逆張り」と言います。順張りの逆で、好調な、値上がりしている資産を売却して、不調な、値下がりしている資産を買い増しします。これがバランスファンドにおける「リバランス」で、これをあるルールで継続的に行わないと、投資比率が崩れてしまいます。
バランスファンドの投資比率に正解はありません
全世界株式インデックスの場合、時価総額比のオール・カントリーがいいか、均等配分の3地域均等型がいいかというのは、ものすごく分かりやすい議論です。好みによってどちらが正解なのか、簡単に選択できるからです。人気で言うと、オール・カントリー(順張り)の圧勝です。
ところがバランスファンドの場合、債券や(組成によっては)リートにも投資しますが、それらの投資比率の決め方には正解がありません。
次はSmart-i 8資産バランス3タイプの株式、債券、リートの比率です。
この3タイプのうちのどれが自分に向いているかは、期待リターンと負うリスク、対象資産の好き嫌いで変わるでしょう。それと同じことが、8資産均等型にも言えます。均等配分は正解ではなくて、バランスファンドのひとつの形でしかありません。好みに合わなければ、他の、豊富にある選択肢から選べばいいだけです。
もしかしたら8資産均等型に否定的な人は、そもそも自身ではバランスファンドに投資しない人、なのかも知れません。
リターン比較
セゾングローバルバランスとeMAXISバランス(8資産均等型)の比較
次はセゾングローバルバランスとeMAXISバランス(8資産均等型)の比較です。
赤のラインがセゾングローバルバランス、緑のラインがeMAXISバランス(8資産均等型)です。青のラインはリターン差で、セゾングローバルバランスーeMAXISバランス(8資産均等型)です。
時期によって有利不利が変わりますが、コロナショックによる株価暴落前は互角と言える状態でした。
次は2020年年初から2021年3月19日までの比較です。
eMAXISバランス(8資産均等型)はコロナショック時の下落率が高いです。これはリートへの投資が裏目に出た結果です。でも、リートが好調だった頃はその恩恵をたっぷり受けてきたのも事実です。
リートを除いた6資産均等型との比較
誰が決めたのか不明ですが、8資産均等型から新興国株式と新興国債券を外したのが、6資産均等型と呼ばれています。8資産均等型からリートを外した組成に「世界6資産分散ファンド」がありますが、これはマイナーです。そして設定されたのが2018年なので、比較期間を長くとれません。
そこでeMAXISシリーズの基準価額データを使って合成した結果(毎月リバランス)と比較します。次はeMAXISバランス(8資産均等型)の本物と合成結果の、2011年10月31日から2021年3月19日までの比較です。
青のラインはほぼフラットで、それらしい結果が得られています。
次はeMAXISバランス(8資産均等型)と、リートを外した6資産均等型(合成結果、毎月リバランス)の比較です。
赤のラインがeMAXISバランス(8資産均等型)です。青のラインはeMAXISバランス(8資産均等型)ーリートを外した6資産均等型です。時期によって有利不利が変わりますが、8資産均等型はリートにも均等配分で投資するからダメとは言えないですよね。
次はセゾングローバルバランスとリートを外した6資産均等型の比較です。
赤のラインがセゾングローバルバランスです。これだと8資産均等型の方が、リートを除いた6資産均等型よりいいと思いますよね。
次は2020年年初からの比較です。前出の、コロナショック後に注目したグラフと同じスケールです。
確かにこの期間だけ見ると、リートへの投資は痛かったなと思う気持ちも分かります。
コロナショックではリートが足を引っ張りました
コロナショックにでは、リートにも相対的に高い比率で投資する8資産均等型の弱点が露呈したのは事実です。
でもリターンを押し上げるのに貢献した過去があったの事実です。
結論:嫌いでなければ問題ありません
バランスファンドの組成に正解はありません。もしあるのなら、その組成しか売れていないはずです。そして、セゾングローバルバランスはキング・オブ・バランスファンドで圧倒的な人気(純資産総額)を誇りますが、8資産均等型のパフォーマンスはいい勝負でした。コロナショック後は大きく負けていますけどね。
そして、スリムシリーズ登場前から、eMAXISバランス(8資産均等型)は人気の組成でした。もしダメな組成だったら、ローコストインデックスファンドの黎明期からそんな高い人気が出るはずがありません。その人気を引き継ぐようにして、スリムバランス(8資産均等型)は設定直後から売れました。2017年中は、あのスリム先進国株式より売れていたというのは昔話です。そして、人気の組成が分かると同じ組成の商品が登場するのが、この業界の普通の光景です。
8資産均等型は、伝統的8資産に均等に(逆張りで)投資するバランスファンドです。均等に投資するのが好みでなければ、好みの比率の組成を探して選択すればいいと思います。嫌いでないなら、問題ありません。多くの受益者に支持されている人気の組成です。