全世界株式

三井住友DC全海外株の運用コストと評価

日本を除く全世界株式に投資する際の選択肢に、三井住友DC全海外株があります。スリム全世界株式(除く日本)より売れているのですが、コストとベンチマークへの忠実度で言えば、スリム全世界株式(除く日本)の方が良いです。

なお正式名称は「三井住友・DCつみたてNISA・全海外株インデックスファンド」と長いので、このブログでは略称を使います。

三井住友DC全海外株

2011年4月18日に設定されました。元々はDC(確定拠出年金)専用ファンドでしたが、2015年9月18日に楽天証券で販売開始(一般開放)されました。税抜き信託報酬は0.25%です。当時ニッセイ外国株式が税抜き信託報酬0.39%でしたので、先進国株式+新興国株式で0.25%は驚異的だったようです。(その後まもなくニッセイ外国株式は税抜き信託報酬を0.24%に引き下げましたが、引き金になったのが三井住友DC全海外株なのは間違いないでしょう。)

隠れコストが高い

次は運報告書から計算したトータルコストです。スリム全世界株式(除く日本)と比較しています。

運報告書から計算したトータルコスト表

トータルコストで支配的なのは信託報酬ですが、三井住友DC全海外株は隠れコストが高いです。次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

保管費用の高さが目立ちます。

保管費用が高い理由

三井住友DC全海外株は先進国株式と新興国株式に投資する2つのマザーファンドを利用します。

ファンドの組成の説明図

引用:目論見書

保管費用が高いとくれば、原因は新興国株式だろうと思うわけですが、それを運報告書から確認します。次は同じマザーファンドを利用する商品の運報告書から計算した、保管費用です。

同じマザーファンドを利用する商品の運報告書から計算した、保管費用の比較表

先進国株式の保管費用は安くて当たり前です。高いと競争に勝てません。問題は新興国株式です。一般的に、高いです。スリム新興国株式の保管費用も、スリム先進国株式のものと比べると高額です。が、三井住友DC全海外株の新興国株式部分のそれは、スリム新興国株式の2.9倍もします。

次は上記保管費用を、先進国株式と新興国株式の比率(87.4%:12.6%)で按分したものです。

保管費用を各マザーファンドのものから按分した表

それらしい値になりました。よって、三井住友DC全海外株の保管費用が高いのは、新興国株式の保管費用が高額だからと分かりました。

スリム全世界株式(除く日本)とのリターン比較

次は三井住友DC全海外株とスリム全世界株式(除く日本)のリターン比較です。スリム全世界株式(除く日本)の運用が安定した、2018年4月16日から株価暴落が始まる直前の2020年2月20日までです。

三井住友DC全海外株とスリム全世界株式(除く日本)のリターン比較グラフ

青のラインはリターン差で、スリム全世界株式(除く日本)ー三井住友DC全海外株です。青のラインがきれいな右肩上がりではなくて、うねっているのはファンド内でのリバランスタイミングの違いによるものだと考えています。

運報告書から計算したトータルコスト差が0.195%ポイント程度あるので、これぐらいのリターン差が生まれても不思議ではないですね。でもこの青のライン、汚いですね。このスケールならこんなに暴れないはずです。

次はスリム全世界株式(除く日本)と野村つみたて外国株投信の比較です。グラフのスケールは同じです。

スリム全世界株式(除く日本)と野村つみたて外国株投信の比較グラフ

トータルコスト差が小さいので、青のラインの傾きが小さくなりました。そして、青のラインの暴れが少ないです。

ここからマニアックな話になりますが、そういうのはいいやって方はここまで飛ばして下さい。

悪いのは新興国株式

次はスリム先進国株式と三井住友DC外国株式のリターン比較です。

スリム先進国株式と三井住友DC外国株式のリターン比較グラフ

このスケールだと青のラインに暴れは見られません。次はスリム新興国株式と三井住友DC新興国株式のリターン比較です。

スリム新興国株式と三井住友DC新興国株式のリターン比較

ひどいですね。でもこれだけだと暴れているのがどっちなのか分かりません。次はスリム新興国株式とFunds-i 新興国株式の比較です。

スリム新興国株式とFunds-i 新興国株式のリターン比較グラフ

先進国株式同士の比較ほどきれいではありませんが、暴れは少ないです。

この比較結果から、リターン差が暴れるのは、三井住友DC全海外株の新興国株式部分に問題があるからだと断言できます。

高い先物比率

三井住友DC新興国株式は先物比率が高いことで知られていました。次はeMAXIS新興国株式との、先物比率の比較です。

三井住友DC新興国株式とeMAXIS新興国株式の先物比率の比較表

三井住友DC新興国株式は2017年頃まで先物比率が100%でした。2018年から株式を組み入れて先物比率を下げましたが、まだ高い水準です。一方、eMAXIS新興国株式はほぼ現物株運用です。(ベンチマークに忠実な運用をするには、先物比率をゼロにすることはできないそうです。)

三井住友DC新興国株式は先物比率が高い問題児で、ベンチマークに忠実な運用をしているとは言いにくいです。(あの程度の暴れなら許容するという場合は別ですが。)そして、三井住友DC全海外株はその約12%の新興国株式部分のマザーファンドが三井住友DC新興国株式と同じであるため、隠れコストが高いしリターンが暴れます。

Fund of the Yearの順位

三井住友DC全海外株が一般販売されるようになった2015年度こそ2位でしたが、その後順位を落とし、2018年度からは選外です。より低コストな商品に取って代わられたわけです。(投票対象でない年度は灰色にしてあります。)

Fund of the Yearの順位表

ところが、Fund of the Yearの順位からは想像できないほど売れています。

スリム全世界株式(除く日本)よりも売れています

12%ほど問題児を抱えている三井住友DC全海外株ですが、純資産総額は268億円あります。次は2015年年初からの資金流出入額の累計の推移です。それまでの3年8ヶ月は全く売れていませんでした。

2015年年初からの資金流出入額の累計の推移グラフ

赤のラインが三井住友DC全海外株、緑のラインが野村つみたて外国株投信、青のラインがスリム全世界株式(除く日本)です。赤の三井住友DC全海外株はいい感じに反り返っていますね。緑の野村つみたて外国株投信は追い付きそうにないです。青のスリム全世界株式(除く日本)は追い上げていますが、まだ射程圏内までは遠いです。

赤のラインは明らかに階段状になっています。購入日が決まっているからでしょうか。次は直近360日の、毎営業日ごとの資金流出入額の推移です。

直近360日の、毎営業日ごとの資金流出入額の推移グラフ

毎月1回、6億円から9億円の流入があります。ほとんどが企業型DCによる積み立てだと思われます。その根拠の話はいいやって方はここまで飛ばして下さい。

iDeCoじゃなくて企業型DCだと思う根拠

iDeCoの場合、2020年5月の購入は(海外資産の場合)22日が約定日です。ところが三井住友DC全海外株が5月に9億円以上買われた日は5月13日でした。同様に、2020年1月も22日がiDeCoの約定日ですが、三井住友DC全海外株は1月15日あたりでした。iDeCoの拠出・注文・約定ルールと一致してないので、そしてiDeCoの約定日には顕著な資金流入が見られないため、三井住友DC全海外株の大半の購入は企業型DCによるものだと考えています。

iDeCoでの扱い

iDeCoナビによると、三井住友DC全海外株をiDeCoで扱っているのは次の4機関です。

  • ジブラルタ生命保険
  • ジャパン・ペンション・ナビゲーター
  • 住友生命保険
  • 三井住友銀行(標準コース)

失礼ながら毎月6から9億円を集められるほどのネームバリューがあるとは思えません。これも、三井住友DC全海外株の資金流入のほとんどは企業型DCだと思う理由です。

ちなみに、スリム全世界株式(除く日本)はSBI証券のセレクトプランのみ対応、野村つみたて外国株投信はiDeCoでは買えません。

結論:企業型DCで買うなら良い選択肢だと思われます

つみたてNISAや特定口座やiDeCoで買うなら、より低コストなスリム全世界株式(除く日本)を選択すべきです。わざわざトータルコストが高く、ベンチマークへの忠実度が劣る三井住友DC全海外株を選択する、経済的合理性はありません。

が、企業型DCの限られた選択肢の中から、好みのアセットクラスで低コストなものを選んだ結果が三井住友DC全海外株だった場合、それは良い選択肢だと思われます。少なくとも、税抜き信託報酬が0.5%を超える商品を考えるよりはずっといいはずです。

企業型DCのラインアップは、現在の投資環境から見ると5年から10年程度遅れている気がします。その中では、三井住友DC全海外株は素晴らしい選択肢なのでしょう。

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