米国株式

楽天米国高配当株式(楽天VYM)の運用コストと評価

楽天バンガードシリーズで圧倒的な人気を獲得しているのが、楽天全米株式です。あのVTIをインデックスファンドで買えるようにしているので、楽天VTIとも呼ばれます。また、楽天全世界株式(楽天VT)も人気が高いです。

ところが同じくバンガード社のETFであるVYMを買うインデックスファンド、楽天米国高配当株式(楽天VYM)の人気はイマイチです。

更新情報

参照しているデータを最新版に更新しています。

楽天米国高配当株式

2018年1月10日に、税抜き信託報酬0.12%+VYMの経費率という当時の感覚では驚異的な低コストで設定されました。

  • VYMを買うだけのインデックスファンドです。VYMから年4回得られる配当金は国内課税なしでファンド内で再投資されます。
  • VYMの経費率が0.08%から0.06%に下がったことを除いて、信託報酬は設定来引き下げられていません。
  • iDeCo口座では扱われていません。

つみたてNISA適格ではありません

楽天米国高配当株式のベンチマークはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスですが、これはつみたてNISAの指定インデックスではありません。そのため指定インデックス投信以外でしか適格申請できません。が、指定インデックス投信以外には厳しい制約があります。特に厳しいものをあげます。

  • 純資産額が50億円以上
  • 信託設定以降5年以上経過
  • 信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が2/3以上であること

受益者保護の観点から、アクティブファンドや、厳選された指数以外に連動するものには高いハードルが設けられています。楽天米国高配当株式は設定されてからまだ4年なので、あと1年待たないと適格申請できません。

でも、そもそも楽天米国高配当株式が不人気なのは、つみたてNISAで買えないからではない、という気がします。

運用コスト(トータルコスト)

高コストだった第一期決算期間

楽天米国高配当株式の第一期決算期間は期待を裏切る高コストなものでした。昔はいいから現在が知りたいって方はここまで飛ばして下さい。

次は楽天米国高配当株式の運用が安定した2018年1月18日から2018年7月17日(第一期決算期間最終日)における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2018年1月18日から2018年7月17日における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

青のラインはVYMトータルリターンー楽天米国高配当株式です。右肩上がりで推移しており、その傾きは楽天米国高配当株式の運用コストの大きさを示しています。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.55%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.55%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天米国高配当株式の、VYMの経費率(当時0.08%)を含んだトータルコストは税込み0.63%程度だと推測されました。ところが、第一期運用報告書から計算した数値はそれより小さく、税込み0.4974%でした。

僕が推測したトータルコストと、運用報告書から計算したトータルコストが一致しない理由はいくつか考えられるのですが、ここでは運用報告書にある数値が正しいとしましょう。

でも、楽天米国高配当株式の目論見書には「実質的に負担する運営管理費用」が税込み0.2096%とあったので、受益者は大いにがっかりしました。(同じことは楽天全米株式、楽天全世界株式にも言えたんですけどね。)

なお、楽天米国高配当株式の設定直後の値動きはおかしかったです。そんなマニアックな話は要らないって方はここまで飛ばして下さい。

設定直後の謎の値動き

次は楽天米国高配当株式の設定日から約2ヶ月間の、VYMの取引価格(円換算後)の比較です。

楽天米国高配当株式の設定日から約2ヶ月間の、VYMの取引価格(円換算後)の比較グラフ

青のラインは楽天米国高配当株式ーVYMです。この期間にVYMから配当金は出ていないので、青のラインは楽天米国高配当株式の運用コスト分だけ右肩下がりで推移します。が、黄色に塗ったところは明らかにおかしな値動きをしています。マイナス側に振れてスタートすることは良くありますが、いきなり上振れしています。

でもこういう不安定な運用は、程度の差こそあれ新規設定されたファンドでは観測されるものです。

大きく改善された第二期決算期間

次は2018年7月18日から2019年7月16日(第二期決算期間)における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2018年7月18日から2019年7月16日における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

赤の矢印の位置にある大きなヒゲは、VYMの配当金を取り込むタイミングの違いによるものです。無視して下さい。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天米国高配当株式の、VYMの経費率を含むトータルコストは税込み0.48%程度だと推測されました。

でも、第二期運用報告書から計算した数値とは差がありました。(楽天全米株式のトータルコストの推測はいい感じなんですけどね。)

楽天米国高配当株式のトータルコスト比較表

第一期に高かった隠れコストは大幅に削減されました。でももう少し削減して欲しいところです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

楽天全米株式、楽天全世界株式同様に、売買委託手数料が大幅に削減されました。その他は「印刷費用」なんですが、半減されたとは言えまだ大きいです。楽天全米株式、楽天全世界株式は、第二期で印刷費用をゼロにしました。ここは、楽天米国高配当株式も本気出して欲しかったです。

さらに改善された第三期決算期間

次は第三期決算期間が開始した2019年7月17日から、株価暴落が始まる直前の2020年2月20日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。(株価暴落開始後はリターン差が乱れるので除外します。)

2019年7月17日から2020年2月20日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よって楽天米国高配当株式の第三期の、VYMの経費率を除いたコストは、第二期の税込み0.40%から0.25%程度に削減されていると推測します。現在のVYMの経費率は0.06%なので、楽天米国高配当株式のトータルコストは税込み0.31%程度と推測されました。

第三期運用報告書から計算した数値は第二期から大幅に削減されていました。素晴らしいです。

トータルコストの3期比較表

第三期のトータルコストは税込み0.2900%です。推測値にどんぴしゃりではありませんでしたが、安いのはいいことです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの3期比較表

削減幅が大きいのは「その他」ですが、これの中身は印刷費用です。楽天米国高配当株式は第一期から印刷費用がべらぼうに高かったのですが、第三期でも高いです。これは気に入らないです。

第四期決算期間

次は第四期決算期間が開始した2020年7月16日から2021年7月30日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2020年7月16日から2021年7月30日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

2月以降は運用コストが増えているように見えます。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.22%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.22%ポイント増量したものとの比較グラフ

2月以降は明らかに増量し足りなかったのですが、直近は戻しています。運用途中で何かコスト増となる要因があったのだと思われます。

それは除けば低コスト運用が維持されていると言っていいです。

第四期運用報告書から計算した数値は第三期からさらに削減されていました。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

全体的に削減されています。特に他費用の「その他」(これは主に印刷費用)が削減されたことを評価しています。

運用報告書から計算したトータルコストは0.255%です。VYMトータルリターンとの比較から推測した、楽天米国高配当株式のVYMの経費率を除いた運用コストは0.22%でした。VYMの経費率は0.06%なので、トータルコストの推測値0.28%よりはわずかに少なかったです。でも大きく外したわけでもないです。

よって運用報告書にある数値は適切なものだと思われますし、楽天米国高配当株式の隠れコストが毎年削減されていることは高く評価します。

第五期決算期間

次は第五期決算期間が開始した2021年7月16日から2022年6月30日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2021年7月16日から2022年6月30日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

う、2022年は運用コストが増えているようです。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.5%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.5%ポイント増量したものとの比較グラフ

前半は増量し過ぎですが、直近では増量不足です。この様子だと、第五期決算期間のトータルコストは増えているはずです。理由は分かりません。

人気はイマイチ

次は楽天米国高配当株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は89億円です。

楽天米国高配当株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

設定直後に立ち上がりますが、その後頭打ちになる典型的なダメパターンでした。が、資金流入は不安定ながらも継続しており、一定の人気は獲得しているようです。

でも楽天全米株式やスリム米国株式(S&P500)と比較すると人気の差は明らかです。そもそも、VYMをインデックスファンドで買えることに魅力を感じる人が少なかったのかも知れません。

VYMって本当に高配当なの?

次は2014年3月から2021年12月までの、VYMとVTIの配当金実績(米国での10%課税後)です。どちらも年4回出ます。

VYMとVTIの配当金実績(米国での10%課税後)の比較グラフ

オレンジがVYMです。確かにVTIよりは高配当ですね。次はこの期間の年平均を求めた表です。

VYMとVTIの配当金実績、年平均の表

楽天全米株式も楽天米国高配当株式も、この利率の配当金に国内課税することなく、ファンド内で再投資しています。

インデックス投資家にとって、資産形成の観点だと配当金の再投資を含めた「トータルリターン」が重要です。VYMの配当金がVTIより高くても、トータルリターンで勝てないのでは投資する意味を見出しにくいです。

楽天全米株式でいいんじゃね?

次は楽天米国高配当株式の設定直後を避けた、2018年2月1日から2022年7月8日までの、楽天全米株式とのリターン比較です。

楽天米国高配当株式と楽天全米株式のリターン比較グラフ

青のラインは楽天全米株式ー楽天米国高配当株式です。この比較期間だと楽天全米株式の方が高パフォーマンスでした。特にコロナショックによる株価暴落後は楽天全米株式の圧勝です。

でも2022年は差が縮まって来ています。

次はVYMが設定された2006年11月20日から2022年6月30日までの、VTIとVYMのトータルリターン比較です。

VTIとVYMのトータルリターン比較グラフ、VYMの設定来

青のラインはVTIトータルリターンーVYMトータルリターンです。これならVTIで十分でしょう。わざわざVYMに投資するメリットを感じないですね。

SBI・V・米国高配当株式に負け始めました

2021年6月29日に強烈なライバルが登場しました。SBI・V・米国高配当株式です。楽天米国高配当株式と同じで、VYMを買うだけのインデックスファンドです。税込み信託報酬は0.1238%と、楽天米国高配当株式の0.192%より0.0682%ポイントも安いです。

運用の上手い下手も含めた現実のトータルコストは楽天米国高配当株式とほぼ同じか、時期によっては楽天米国高配当株式より高かったのですが、直近ではSBI・V・米国高配当株式に負け始めています。

そして人気はSBI・V・米国高配当株式の方が上です。

評価:VYMが好きな人には良い選択肢

楽天米国高配当株式は低コストでVYMに投資したい人にとっては良い選択肢だと言えます。が、パフォーマンスは楽天全米株式やスリム米国株式(S&P500)に負けており、僕には魅力的な投資先に見えません。

SBI・V・米国高配当株式とどちらが有利かはまだ断定できませんが、長期的にはSBI・V・米国高配当株式になる気がしています。

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