米国株式

楽天米国高配当株式の運用コストと評価

楽天バンガードシリーズで圧倒的な人気を獲得しているのが、楽天全米株式です。あのVTIをインデックスファンドで買えるようにしているので、楽天VTIとも呼ばれます。また、楽天全世界株式(楽天VT)も人気が高いです。

ところが同じくバンガード社のETFであるVYMを買うインデックスファンド、楽天米国高配当株式(楽天VYM)は不人気です。

更新情報

第三期決算期間の運用コストを追記しました。第二期より大幅に削減されています。推測値に近かったです。

また、参照している各種データを最新のものに更新しています。

楽天米国高配当株式の運用コストを推測する方法

楽天米国高配当株式はVYMを受益者に代わって買います。その価格はVYMの終値です。また、VYMから年4回配当金が出ますが、それを国内課税なしで再投資します。

次の手順でVYMトータルリターンを生成します。

  • 2007年1月5日に10,000円でVTIを買ったことにします。扱う株数は「端株数」です。つまり、VYMの取引価格が6,100円なら1.6393株買ったことになります。
  • 配当金が出たら米国での10%課税後のドルを再投資します。税引き後の配当金でVYMを端株数で買うのです。そうして保有株数を増やします。保有株数が増えるのは配当金を再投資した時だけです。
  • 円をドルに替える為替手数料もVYMの購入手数料もゼロとします。
  • 評価額は円換算して求めます。

たとえると、河童証券がVYMを買うだけのインデックスファンドを運用して、配当金の再投資までしますが、信託報酬も隠れコストもゼロ円の場合の基準価額の推移を生成するようなものです。そのため、このトータルリターンは現実にはありえない仮想的なものです。

これと楽天米国高配当株式の基準価額の推移を比較することで次のコストの総和が推測できます。(VYMの経費率を除きます。)

  • 純資産から毎営業日天引きされている信託報酬。
  • 運用報告書に記載される、隠れコストと呼ばれる、信託報酬以外のコスト。売買委託手数料、有価証券取引税、監査費用、保管費用など。
  • 楽天米国高配当株式がコストとは認識しないものの、運用で生じたロス。たとえば純資産の一部を現金で保有したことによる機会損失。

反論歓迎です。

高コストだった第一期決算期間

楽天米国高配当株式の第一期決算期間は期待を裏切る高コストなものでした。昔はいいから現在が知りたいって方はここまで飛ばして下さい。

次は楽天米国高配当株式の運用が安定した2018年1月18日から2018年7月17日(第一期決算期間最終日)における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2018年1月18日から2018年7月17日における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

青のラインはVYMトータルリターンー楽天米国高配当株式です。右肩上がりで推移しており、その傾きは楽天米国高配当株式の運用コストの大きさを示しています。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.55%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.55%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天米国高配当株式の、VYMの経費率(当時0.08%)を含んだトータルコストは税込み0.63%程度だと推測されました。ところが、第一期運用報告書から計算した数値はそれより小さく、税込み0.4974%でした。

僕が推測したトータルコストと、運用報告書から計算したトータルコストが一致しない理由はいくつか考えられるのですが、ここでは運用報告書にある数値が正しいとしましょう。

でも、楽天米国高配当株式の目論見書には「実質的に負担する運営管理費用」が税込み0.2096%とあったので、受益者は大いにがっかりしました。(同じことは楽天全米株式、楽天全世界株式にも言えたんですけどね。)

なお、楽天米国高配当株式の設定直後の値動きはおかしかったです。そんなマニアックな話は要らないって方はここまで飛ばして下さい。

設定直後の謎の値動き

次は楽天米国高配当株式の設定日から約2ヶ月間の、VYMの取引価格(円換算後)の比較です。

楽天米国高配当株式の設定日から約2ヶ月間の、VYMの取引価格(円換算後)の比較グラフ

青のラインは楽天米国高配当株式ーVYMです。この期間にVYMから配当金は出ていないので、青のラインは楽天米国高配当株式の運用コスト分だけ右肩下がりで推移します。が、黄色に塗ったところは明らかにおかしな値動きをしています。マイナス側に振れてスタートすることは良くありますが、いきなり上振れしています。

でもこういう不安定な運用は、程度の差こそあれ新規設定されたファンドでは観測されるものです。

大きく改善された第二期決算期間

次は2018年7月18日から2019年7月16日(第二期決算期間)における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2018年7月18日から2019年7月16日における楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

赤の矢印の位置にある大きなヒゲは、VYMの配当金を取り込むタイミングの違いによるものです。無視して下さい。

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.40%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よってこの期間の楽天米国高配当株式の、VYMの経費率を含むトータルコストは税込み0.48%程度だと推測されました。

でも、第二期運用報告書から計算した数値とは差がありました。(楽天全米株式のトータルコストの推測はいい感じなんですけどね。)

楽天米国高配当株式のトータルコスト比較表

第一期に高かった隠れコストは大幅に削減されました。でももう少し削減して欲しいところです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの明細表

楽天全米株式、楽天全世界株式同様に、売買委託手数料が大幅に削減されました。その他は「印刷費用」なんですが、半減されたとは言えまだ大きいです。楽天全米株式、楽天全世界株式は、第二期で印刷費用をゼロにしました。ここは、楽天米国高配当株式も本気出して欲しかったです。

さらに改善された第三期決算期間

次は第三期決算期間が開始した2019年7月17日から、株価暴落が始まる直前の2020年2月20日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。(株価暴落開始後はリターン差が乱れるので除外します。)

2019年7月17日から2020年2月20日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較グラフ

青のラインはほぼフラットになりました。よって楽天米国高配当株式の第三期の、VYMの経費率を除いたコストは、第二期の税込み0.40%から0.25%程度に削減されていると推測します。現在のVYMの経費率は0.06%なので、楽天米国高配当株式のトータルコストは税込み0.31%程度と推測されました。

第三期運用報告書から計算した数値は第二期から大幅に削減されていました。素晴らしいです。

トータルコストの3期比較表

第三期のトータルコストは税込み0.2900%です。推測値にどんぴしゃりではありませんでしたが、安いのはいいことです。

次は隠れコストの明細です。

隠れコストの3期比較表

削減幅が大きいのは「その他」ですが、これの中身は印刷費用です。楽天米国高配当株式は第一期から印刷費用がべらぼうに高かったのですが、第三期でも高いです。これは気に入らないです。

株価暴落後の運用コストを推測

次は第三期決算期間が開始した2019年7月17日から2020年8月31日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較です。

2019年7月17日から2020年8月31日までの、楽天米国高配当株式とVYMトータルリターンの比較グラフ

株価暴落の最中は、青のラインがだらりと下がっています、これは避けられない現象です。青のラインが再び右肩上がりになった4月以降の運用コストを推測してみました。

次は2020年4月11日から8月31日を切り出したものです。

2020年4月11日から8月31日を切り出したグラフ

次はVYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較です。

VYMトータルリターンの運用コストを年率0.25%ポイント増量したものとの比較グラフ

7月までは適正量に見えましたが、8月は増量しすぎのようです。これは8月の運用コストが下がっていることを示唆しているのでいいことです。

このことから、楽天米国高配当株式の運用コストは、株価暴落の前後で変わっておらず、8月は減少していると推測できます。

不人気です

次は楽天米国高配当株式の設定来の資金流出入額の累計の推移です。右端は2020年9月11日です。

楽天米国高配当株式の設定来の資金流出入額の累計の推移グラフ

株価暴落開始後を黄色に塗ってあります。設定直後に立ち上がりますが、その後頭打ちになる典型的なダメパターンです。株価暴落で買い増しされましたが、その傾向は続きませんでした。

純資産総額は27億円しかありません。

つみたてNISA適格ではありません

楽天米国高配当株式のベンチマークはFTSEハイディビデンド・イールド・インデックスですが、これはつみたてNISAの指定インデックスではありません。そのため指定インデックス投信以外でしか適格申請できません。が、指定インデックス投信以外には厳しい制約があります。特に厳しいものをあげます。

  • 純資産額が50億円以上
  • 信託設定以降5年以上経過
  • 信託の計算期間のうち、資金流入超の回数が2/3以上であること

受益者保護の観点から、アクティブファンドや、厳選された指数以外に連動するものには高いハードルが設けられています。楽天米国高配当株式は設定されてからまだ2年8ヶ月なので、あと2年4ヶ月待たないと適格申請できません。その頃になっても、純資産総額50億円をクリアするのは楽勝ではないかも知れません。

でも、そもそも楽天米国高配当株式が不人気なのは、つみたてNISAで買えないからではない、という気もします。

VYMの純資産総額

次はバンガード社の有名なETFの純資産総額を比較したものです。

バンガード社の有名なETFの純資産総額の比較表

VTI、VOOは圧倒的です。それらと比べるとVYMの3.53兆円は見劣りしますが、あのVTより多いです。VYMが不人気ということではないでしょう。

でも、日本でインデックスファンドとして組成して、人気が出るかどうかは別の話のようです。難しいですね。

VYMって本当に高配当なの?

次は2014年3月から2020年6月までの、VYMとVTIの配当金実績(米国での10%課税後)です。どちらも年4回出ます。

VYMとVTIの配当金実績(米国での10%課税後)の比較グラフ

オレンジがVYMです。確かにVTIよりは高配当ですね。次はこの期間の年平均を求めた表です。

VYMとVTIの配当金実績、年平均の表

楽天全米株式も楽天米国高配当株式も、この利率の配当金に国内課税することなく、ファンド内で再投資しています。

インデックス投資家にとって、資産形成の観点だと配当金の再投資を含めた「トータルリターン」が重要です。VYMの配当金がVTIより高くても、トータルリターンで勝てないのでは投資する意味を見出しにくいです。

楽天全米株式でいいんじゃね?

次は楽天米国高配当株式の設定直後を避けた、2018年2月1日から2020年9月11日までの、楽天全米株式とのリターン比較です。

楽天米国高配当株式と楽天全米株式のリターン比較グラフ

青のラインは楽天全米株式ー楽天米国高配当株式です。この比較期間だと楽天全米株式の方が高パフォーマンスでした。2020年は楽天全米株式の圧勝です。

次はVTIトータルリターンとVYMトータルリターンの比較です。2007年年初から2020年8月末までです。

VTIトータルリターンとVYMトータルリターンの比較グラフ

この様子だと、VYMに投資するメリットを感じないですね。

評価:VYMが好きな人には良い選択肢ですが、人気獲得は厳しそう

運用コストは十分魅力的な水準になりましたし、VYMに投資したい人にとっては良い選択肢だと言えます。が、現在のパフォーマンスだと、楽天全米株式やS&P500インデックスファンドの方が有利なので、人気を獲得するのは厳しい気がします。

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