2019年12月は不思議な強気相場が続いていました。そんな時に、暴落したらSPXLがどうなるかをシミュレーションしました。
その記事の結論はこうでした。
そもそもS&P500種指数は暴落で大きく下がるのが必然なところ、それの3倍ブル型ですからとんでもない下がり方をします。そして、その数学的な特性上、回復するまでに長くかかる可能性があります。
現在SPXLを保有しており、不思議な株高で含み益が大きくなっている場合、大別して選択肢が2つあります。
- あまり欲を出さずにここらへんで売却し、利益確定する。暴落してから再度投資する。
- SPXLであってもガチホし、暴落をやり過ごす。暴落したら追加投資だ。
2020年3月12日に米国株式は記録的な下落をし、それは後日コロナショックと呼ばれました。では、少なくとも2月中旬までは人気絶頂だったSPXLはどうなったでしょうか。
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記事構成を変更しています。
SPXLのおさらい
Direxion社の3倍ブル型ETFです。S&P500種指数に連動し、S&P500が1%上がるとSPXLは3%上がる、に近い値動きをします。下がる時もほぼ3倍下がります。また、取引価格が上下動を繰り返す、いわゆるボックス相場の時には原理的に(数学的に)SPXLは下落します。
値動きの仕組み、特性については、2倍ブル型の投資信託であるiFreeレバレッジS&P500の目論見書に、とても丁寧な説明があります。
SPXLは米国株式を嗜好する人達には良く知られた存在です。でもSPXLはリーマンショック後に設定されたので、これまで大きな暴落を経験していませんでした。コロナショックがその初めての大きな暴落になりました。
VOOとSPXLのトータルリターン比較
VOOとSPXLのトータルリターンを比較します。円換算しています。縦軸は対数です。
2011年から
次は2011年年初から2021年7月30日までの比較です。
赤のラインがSPXL、緑のラインがVOOです。VOOのベンチマークはS&P500種指数なので、SPXLの値動きはVOOの日々の値動きの3倍になるのが期待値です。でもこの比較期間におけるSPXLのリターンは、VOOの5.5倍です。
コロナショックによる株価暴落時も、VOOに負けませんでした。この比較期間だと、SPXLへの長期投資は頭ごなしにダメと言えないですね。
2015年から
次は2015年年初から2021年7月30日までの比較です。
VOOの値動きがとても可愛く思えますね。SPXLの値動きの激しさに耐えるには強靭なメンタルが必要になりそうです。
赤の矢印がブラック・クリスマス、青の矢印がコロナショックです。ブラック・クリスマスはVOOよりわずかに勝っていましたが、コロナショックでは大きく負けました。
SPXLの長期投資は簡単でないことが分かりますね。
2018年から
次は2018年年初から2021年7月30日までの比較です。
この比較期間だと、ブラック・クリスマスで暴落し、やっとVOOをアウトパフォームできてウハウハしていたらコロナショックで大きく暴落し、でも急速に回復して今は笑いが止まらない状態でしょうか。でもきっと、次の暴落が怖いと感じていると思います。
2020年から
次は2018年年初から2021年7月30日までの比較です。
コロナショックでVOOは34%下落しました。SPXLは77%下落しました。コロナショックの底からの回復は驚くほど急速でしたが、SPXLがVOOに追い付いたのは2021年2月頃でした。
コロナショックによる株価暴落では、SPXLがVOOに負けている期間は(それでも)短かったわけですが、今後もこのように短期間のダメージで済むとは限りません。
VOOとSPXLの最高値からの下落率比較
次はVOOトータルリターンの2011年年初からの、最高値からの下落率です。
こうして見ると、2011年にもマイナス20%近い下落があったのですね。チャイナ・ショックは大したことなく、ブラック・クリスマスは一瞬でした。コロナショックでは34%下落しましたが、回復は速かったです。
次はSPXLもプロットしたものです。
レバレッジ3倍の破壊力は、株価下落時も半端ないことが良く分かります。コロナショックでは77%も下落しました。狼狽売りした人も多いでしょうね。軽い気持ちで買い始めた人は耐えられなかったのではないでしょうか。
一般論としては、長期投資に不向きです
SPXLの原資産はS&P500です。この世の終わりでも来ない限り、待っていればS&P500は暴落から見事に回復し、さらなる成長をするはずです。それを信じられないなら、どの地域であれ、株式投資などしない方がいいでしょう。
SPXLはコロナショックも見事に乗り越えました。運が良かっただけかも知れませんが、うまく使いこなせている人もいることでしょう。でもその値動きの特性から、一般論としては、長期投資には不向きと言われます。僕もそう思います。
安易に手を出して、暴落時に損切りして後悔しないよう、値動きの特性やデメリットを良く理解した上で、無理のない範囲での投資にとどめるのがいいでしょう。