つみたてNISAと一般NISAはどちらも「少額投資非課税制度」です。一般NISAは2014年に、つみたてNISAは2018年に始まりました。資産形成を目的に、税制面で大胆な優遇を行う制度ですが、この2つには大きな違いがあります。
では、つみたてNISAと一般NISAのどちらがいいのか、より自分に向いているのはどちらなのか、その判断基準について解説します。なおこの記事の内容は、令和2年度税制改正大綱で提示された、NISA制度の見直し内容に基づいています。
つみたてNISAと一般NISAの違い
そんな基本的なことはいいやって方は、ここまで飛ばして下さい。
非課税枠と非課税期間
- つみたてNISAの非課税枠は40万円、非課税期間は20年です。非課税枠は2042年まで付与されますので、2021年から利用を開始した人は、40万円×22年で最大880万円の非課税枠を手にできます。
- 一般NISAの非課税枠は120万円、非課税期間は5年です。非課税枠は2023年まで付与されます。2024年からは新NISAになり、非課税期間が5年延長されます。
ロールオーバー
一般NISAの非課税期間5年が終了した時、その時の評価額(時価)をそのまま新たに付与される非課税枠に引き継ぐことを「ロールオーバー」と言います。新たに付与される非課税枠を好きなように使う(買い付ける)か、ロールオーバーすることで非課税期間を10年に延長するかの選択が可能です。ロールオーバーしない場合は、特定口座に移行します。
つみたてNISAにロールオーバーはありません。非課税期間20年が終了すると、特定口座に移行します。
購入可能商品
- 一般NISAではほとんどの株式、投資信託、ETFが購入可能です。ほぼ何でもありです。自由度が高すぎて、良くわからないまま不適切な商品を買わされていた、ということも簡単に起こります。そういう制度です。
- つみたてNISAでは、とんでもなく厳しい適格要件を満たした商品だけが購入可能です。俗に「地雷」と呼ばれる、資産形成に不向きな商品が徹底的に排除されています。金融商品について詳しく勉強したくない場合は、つみたてNISAがいいです。
購入方法
- 一般NISAは、非課税枠が付与された年度の1年間(暦の上では少しズレています)の中であれば、非課税枠内で買い方(購入方法)は完全に自由です。任意の積み立て、スポット購入ともに制約はありません。
- つみたてNISAは、基本、積立投資のみです。ただし、多くの金融機関で「ボーナス月設定」なるものが利用でき、これを活用することで変則的な投資が可能です。たとえば、事実上の年初一括投資もできます。
つみたてNISAが向いている人
次に該当する人には、つみたてNISAがおすすめです。
- 年間の投資可能金額が40万円以下である。
- 10年から15年はガチホ(売却しないで保有し続けること)できる。
- 一般的な表現だと、若いけど投資可能金額は大きくない。
- 地雷と呼ばれる資産形成に不向きな商品かどうか、自分で見分ける勉強をしたくない。
一般NISA、新NISAが向いている人
- 年間の投資可能金額が120万円程度ある。
- 非課税期間は5年から10年以内あれば十分。
- 一般的な表現だと、若くはないけど投資可能金額は大きい。
- つみたてNISA適格ではない商品を非課税口座で買いたい。(好きなようにさせて欲しい。)
- 地雷と呼ばれる資産形成に不向きな商品かどうか、自分で見分ける勉強をいとわない。
数学的なシミュレーション
リスク資産に投資するので、数学的なシミュレーションがなじまないのは事実ですが、非課税枠と非課税期間の関係を抑えるには有効です。
一般NISAとつみたてNISAのどちらが有利か
年間の投資可能予算が40万円程度なら、つみたてNISA一択です。が、投資可能予算が120万円ある場合は事情が変わります。
結論としては、10年以上ガチホできる自信があるなら、つみたてNISAが有利です。それより早く売却する可能性が高いなら、一般NISAの方が有利です。
では年間の投資可能予算が80万円の場合に、つみたてNISA40万円+特定口座40万円の合わせ技と、一般NISA80万円ではどちらが有利でしょうか。
結論としては、8年以上ガチホできる自信があるなら、つみたてNISA+特定口座の合わせ技の方が有利です。それより早く売却する可能性が高いなら、一般NISAの方が有利です。
つまり、投資可能予算とライフプランによっては、つみたてNISA一択ではないということです。
つみたてNISAと一般NISA+新NISAのどちらが有利か
一般NISAから新NISAの2階部分へロールオーバーが可能なので、これを利用すると、一般NISAの非課税期間を10年にすることが可能です。では、現在余裕資金が120万円ある場合に、次のどちらが有利でしょうか。
- 一般NISA+新NISAで非課税枠120万円✕非課税期間10年、その後特定口座で10年
- つみたてNISAで非課税枠40万円✕3年✕非課税期間20年
これをシミュレーションで確認しています。
結論としては、15年以上ガチホできる自信があるなら、つみたてNISAが有利です。それより早く売却する可能性が高いなら、一般NISA+新NISAの方が有利です。
若いけど余裕資金が少ないなら、つみたてNISA一択です。若くないけど余裕資金が多いなら、一般NISA+新NISAによる、非課税枠120万円✕非課税期間10年は魅力的な選択肢になります。余命の関係で15年以上ガチホできる自信がない場合、または、ライフプラン上15年以内に売却したい場合、特にそうだと思います。最適解は家庭ごとに変わります。
結論:どちらがいいかは家庭ごとに異なります
40万円の非課税枠をもらってから非課税期間20年というのは長いです。来年からでも長いですが、今から20年後にもらう分のことを考えると、余命が気になるかも知れません。次のどちらが自分に合っているか、寿命のことも考えて判断するのが良いです。
- 非課税枠40万円✕非課税期間20年
- 非課税枠120万円✕非課税期間10年
最適解は人それぞれです。他人の意見を鵜呑みにせず、自分にあった計画を立てるべきです。