年金・iDeCo

【過去記事】専業主婦にはつみたてNISAよりiDeCoがおすすめかも知れません

2024年から非課税期間無期限のシン・NISAが開始されます。生涯投資可能枠が1,800万円もあるため、多くの人はシン・NISAで十分な資産形成が可能で、制約が多く使いにくいiDeCoを利用するメリットは激減しました。専業主婦でiDeCoの拠出金が全額所得控除される恩恵を受けられない場合はなおさらです。

少額非課税制度である「つみたてNISA」は、誰もが働き方に関わらず利用可能で、制度として非常に分かりやすいです。現行制度だと非課税期間は20年なので、非課税枠をもらった年を含めて20年を超えると、課税口座に払い出されます。そのため、たとえば20年間積み立て+20年間ガチホの合計40年間を「投資期間」とした場合、最初の年の投資分は非課税口座20年+課税口座20年、次の年の投資分は非課税口座20年+課税口座19年・・・、となります。

一方、iDeCoは制約が多くて使いにくいですが、専業主婦は退職所得控除をフル活用しやすいので、つみたてNISAより税金面で有利にできる可能性があります。

投資期間40年で比較

専業主婦2名に登場して頂きます。

  • 専業主婦のAさんは25歳からつみたてNISAで積み立てを開始しました。20年間積み立てたあと、20年間ガチホします。65歳で全額売却します。
  • 専業主婦のBさんは25歳からiDeCoで積み立てを開始しました。20年間積み立てたあと、45歳からは積み立て額を5,000円に減額します。60歳になるまで積み立てます。65歳で解約し、全額一時金で受け取ります。

この記事ではiDeCoで発生する手数料の話はしません。

Aさんの投資可能金額の上限は月額33,333円です。Bさんは国民年金の第3号被保険者なので月額23,000円です。

つみたてNISAの場合

リスク資産に投資して、順調に基準価額が上昇する場合、つみたてNISAであっても投資期間が40年だと無税では終われません。非課税期間20年を終了したものが毎年課税口座に払い出され、そこから生じた利益には譲渡税が適用されるからです。つまり、投資期間40年の場合、つみたてNISA口座+特定口座での運用となるため、譲渡税の発生は免れません。

iDeCoの場合

iDeCoは非課税制度ではなく、一時金として受け取ると強力な退職所得控除が利用できるものの、課税対象は資産全体です。利益ではありません。(iDeCoは運用益が非課税という表現は間違っています。iDeCoにはそもそも運用益という概念がありません。)

一時金の場合の税額を求めるにはまず次の式で課税所得を計算します。

課税所得=(資産額ー退職所得控除額)÷2

  • 資産額はiDeCoの解約で受け取る全額のことです。
  • 退職所得控除額は拠出期間20年までは年40万円、21年目以降は年70万円です。

この課税所得に対して所得税が超過累進税率で、住民税が一律10%課税されます。次は超過累進税率表です。

超過累進税率表

引用:国税庁

Bさんの拠出期間は35年なので、40万円✕20年+70万円✕15年=1,850万円になります。

BさんにはAさんとの比較のために拠出期間を20年にし、その後運用指図者になってもらいたかったのですが、そうすると拠出期間が20年になり、退職所得控除額が800万円に下がってしまいます。それでやむなく、最初の20年間でしっかり積み立てて、残りの15年間は拠出期間を稼ぐのを目的としたのです。(とは言っても、毎月5,000円の積み立てを15年も続けると投資額は90万円にもなります。)

ではなぜその35年間で投資できる総額を均等割した金額を積み立てないかと言うと、できるだけ早く投資してしまった方が有利だからです。

また、Bさんは専業主婦なので、iDeCoの意地悪仕様を問題なく回避できます。

その結果、Bさんの退職所得控除額は1,850万円なので、投資期間40年(拠出期間は35年)における資産額が1,850万円を超えた分について課税されます。1,850万円以下なら無税です。

つみたてNISAの積み立てシミュレーション

Aさんが20年間に渡って毎月33,333円を積み立てた場合、投資元本は約800万円です。次は初年度の非課税枠の40年間の税引き後評価額の推移です。

つみたてNISAの積み立てシミュレーションの様子

黄色に塗ったところは特定口座での運用です。課税口座なので、赤のラインの上昇率が、非課税口座の頃より下がっています。

次年度は特定口座の運用年数が19年に、その次の年度は18年、と徐々に減ります。シミュレーションでそれらの合計金額を求めます。

期待リターン年率4%の場合

税引き後評価額は 2,568万円、税引き後利益率は221%です。税額合計は204万円、元本と利益で見た税率は11.6%です。

期待リターン年率5%の場合

税引き後評価額は 3,477万円、税引き後利益率は334%です。税額合計は338万円、元本と利益で見た税率は12.6%です。

期待リターン年率6%の場合

税引き後評価額は 4,729万円、税引き後利益率は491%です。税額合計は537万円、元本と利益で見た税率は13.7%です。

iDeCoの積み立てシミュレーション

Bさんが20年間上限の23,000円を積み立て、残り15年間5,000円を積み立てた場合、手数料を無視した投資元本は642万円です。1,850万円は元本の2.88倍なので、利益率188%以下なら無税です。

期待リターン年率4%の場合

次は投資対象が期待リターン年率4%の場合の、積み立てシミュレーションです。

投資対象が期待リターン年率4%の場合の、積み立てシミュレーション結果のグラフ

灰色のラインが元本で、20年経過後は拠出額が23,000円から5,000円に下がるので角度が小さくなります。解約時の資産額は2,065万円、利益率221%です。課税所得を計算します。

課税所得=(2,065万円ー1,850万円)÷2=107.5万円

課税所得は192万円以下なので所得税率5%+住民税10%での合計15%が課税されます。税額は16.1万円です。利益(資産額ー元本)に対する比率は1.1%です。

期待リターン年率5%の場合

次は投資対象が期待リターン年率5%の場合の、積み立てシミュレーションです。

投資対象が期待リターン年率5%の場合の、積み立てシミュレーション結果のグラフ

解約時の資産額は2,806万円、利益率337%です。課税所得を計算します。

課税所得=(2,806万円ー1,850万円)÷2=478万円

課税所得は所得税率20%で52.8万円+住民税10%で47.8万円の総額100.6万円です。利益(資産額ー元本)に対する比率は4.6%です。

期待リターン年率6%の場合

次は投資対象が期待リターン年率6%の場合の、積み立てシミュレーションです。

投資対象が期待リターン年率6%の場合の、積み立てシミュレーション結果のグラフ

解約時の資産額は3,833万円、利益率497%です。凄いですね。課税所得を計算します。

課税所得=(3,833万円ー1,850万円)÷2=991.5万円

課税所得は所得税率33%で173.6万円+住民税10%で99.2万円の総額272.8万円です。利益(資産額ー元本)に対する比率は8.5%です。

iDeCoで得する条件

つみたてNISAの非課税期間20年は素晴らしいのですが、投資期間(資産形成期間)を40年とした場合、特定口座で運用する期間が20年、19年、18年・・・と発生します。その結果、40年間で見た場合の、元本と評価額で見た税率は12%程度になります。

一方iDeCoは退職所得控除をフルに活用できれば(専業主婦はそれが実現しやすいです)、税率を低く抑えることが可能です。そのためには少額でもいいので、拠出年数を長くすることです。

専業主婦の場合、拠出可能額の上限は月額23,000円であることが自然と有利にしています。国民年金の第1号被保険者の場合は68,000円ですが、それでガンガン投資すると資産額が増えすぎて、退職所得控除を超えやすくなります。それで少々課税されたから損だということでもないところが、iDeCoの利用に関する議論の難しい面でもあります。

傾向として投信ブロガーも、iDeCoを評価する人としない人に分かれます。双方の言い分を良く聞いて、自分の場合はどうなのかを冷静に考えるのが良いです。

結論:iDeCoの可能性も捨てないで

つみたてNISAはシンプルな制度なので、分かりやすいし活用しやすいです。iDeCoはその真逆で、そもそも利用を考えていない人もそれなりにいると思われます。でも、それはもったいないです。特に専業主婦の場合は退職所得控除の意地悪仕様を避けやすいので、検討してみるのが良いです。

もちろん、つみたてNISAとiDeCoの併用も良いです。制度の特性、メリット・デメリットを理解した上で、自分に適した使い方を見つけてください。

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