東京海上円資産インデックスバランスはリスクコントロール型の3資産バランスファンドです。債券比率は70%固定なのでそもそも低リスクなんですが、国内株式と国内リートの投資割合を変化させる運用を行います。
でも、アクティブファンドではなく、つみたてNISA適格です。マジですか?
東京海上円資産インデックスバランス
2017年10月11日に税抜き信託報酬0.38%で設定されました。国内債券、国内株式、国内リートの3資産に投資するバランスファンドですが、リスク(変動率)を3%程度に抑える運用をするのが特長です。そのために、国内株式と国内リートへの投資比率を変更します。
であるにも関わらず、東京海上円資産インデックスバランスは「指定インデックス投資信託」で、つみたてNISA適格です。どうしてそんなことが可能なのでしょうか。理由は、配分変更を機械的に行う点にあります。あくまでパッシブ運用なのです。とは言うものの、このファンドにはベンチマークが存在しないと明記されています。正直、僕はこれでつみたてNISA適格認定をもらえたことに違和感を覚えます。
組成内容
国内資産のみに投資する、珍しい3資産バランスファンドです。債券比率が70%もあるので、そもそもリスク(変動率)を抑えた組成と言えます。
各資産クラスのベンチマークはスリムバランス(8資産均等型)などと同じです。
国内債券の比率は70%で固定ですが、国内株式と国内リートはリスクを年率3%程度に抑えるために比率を機械的に変更します。目論見書にはこうあります。
株式およびREITの資産配分比率の計算にあたっては、ファンド全体に対して債券の組入比率を70%に固定した上で、株式およびREITの指数を合成することにより算出された価格変動リスクが年率 3%に近似する株式とREITの合計の資産配分比率を逆算して求め、原則として均等に配分します。
株式とREITの合計の資産配分比率は30%~5%の範囲内とし、残りは短期金融資産を組入れます。引用:目論見書
ファンドマネージャーの意思で変更するとアクティブファンドですが、計算式通りに機械的に変更するならインデックスファンドで良い、という判断ですね。でないと、指定インデックス投資信託枠でつみたてNISA適格認定は取れないはずです。
次はリスクを抑えるための資産配分変更の様子を説明した図です。
引用:目論見書
国内株式と国内リートは最小で2.5%にまで減らし、短期金融資産(現金のようなもの)を最大25%にまで増やします。同様のことを行うリスクコントロールファンドはいくつかありますが、コロナショックによる株価暴落時には(ファンドマネージャーが)判断を誤り、基準価額を回復できないでいます。機械的に変更する東京海上円資産インデックスバランスはどうだったでしょうか。
運用コスト
次は運用報告書から計算した運用コスト(トータルコスト)です。
隠れコストは極小です。次は隠れコストの明細です。
投資対象資産のことを考慮すると妥当でしょうか。
株価暴落時の対応
東京海上円資産インデックスバランスは、コロナショックによる株価暴落時に国内株式と国内リートの比率を減らし、短期金融資産を増やしました。
出典:月次レポートを河童が加工
赤の矢印の位置で国内株式と国内リートの比率が激減しています。現在の比率はこうなっています。
引用:月次レポート
リスク推移
次は設定来のリスク推移です。月次で求めたリスクを年率換算したものです。
おおむね3%以下で推移していましたが、流石にコロナショックによる株価暴落時は抑えきれませんでした。でもこのグラフを見る限り、目論見書通りに運用されていると言っていいでしょう。
リターン比較
債券比率が高いことを踏まえて、リターン比較に相応しい商品を選択しました。
スリムバランス(8資産均等型)とのリターン比較
次はスリムバランス(8資産均等型)とのリターン比較です。東京海上円資産インデックスバランスの設定日直後を避けて2017年11月01日から2020年11月27日までです。
赤のラインがスリムバランス(8資産均等型)、緑のラインが東京海上円資産インデックスバランスです。青のラインはリターン差で、スリムバランス(8資産均等型)ー東京海上円資産インデックスバランスです。
株価暴落前は変動率が低く期待通りの値動きでした。株価暴落時の下落率も低かったです。が、その後ラインはフラットに見えます。
次は2020年年初からの比較です。
東京海上円資産インデックスバランスの基準価額、4月以降ほとんど上昇できていません。
リスクコントロール世界資産分散ファンドとのリターン比較
次はリスクコントロール型のアクティブバランスファンドである、リスクコントロール世界資産分散ファンドとの比較です。リスクコントロール世界資産分散ファンドの設定日直後を避けて2018年6月10日から2020年11月27日までです。
赤のラインがリスクコントロール世界資産分散ファンドです。高コストアクティブファンドの運用の効果なのか、株価暴落時の下落率が小さいです。が、どちらも株価暴落から回復できていません。
楽天バランス(債券重視型)とのリターン比較
次は債券比率が70%もある、楽天バランス(債券重視型)との比較です。楽天バランス(債券重視型)の設定日直後を避けて2018年8月1日からの比較です。
赤のラインの楽天バランス(債券重視型)は、債券比率が高いとは言え、東京海上円資産インデックスバランスより変動率(リスク)が高いです。でもコロナショックによる株価暴落時の下落率は互角で、その後見事に回復できています。ところが東京海上円資産インデックスバランスは株価暴落で下落したままです。
株価暴落前は悪くないと思います。楽天バランス(債券重視型)でさえ変動率が高いと感じる人には良い選択肢に見えるでしょう。でも株価暴落後は絶望を感じているのではないでしょうか。
ダイワ・ライフ・バランス30とのリターン比較
次は債券比率が70%もある、4資産バランスファンドのダイワ・ライフ・バランス30との比較です。2017年11月1日から2020年11月27日までです。
赤のラインがダイワ・ライフ・バランス30です。株価暴落前は東京海上円資産インデックスバランスの方が高パフォーマンスでしたが、株価暴落後は逆転されています。
もし株価暴落時に何もしなかったら
東京海上円資産インデックスバランスは株価暴落時に、機械的に資産配分を変更したために株価暴落から回復できていないとしました。本当でしょうか。次はeMAXISシリーズの、ベンチマークが同じ3商品を70:15:15の基本比率のまま合成したものとの比較です。毎月リバランスしています。
赤のラインが合成結果です。株価暴落前はほとんど差がありません。株価暴落時には同程度下落しますが、回復過程にあります。回復が十分でない気がするのは、比率15%の国内リートの回復が遅いためです。
売れていません
次は設定来の資金流出入額の累計の推移です。純資産総額は0.65億円しかありません。
資金流入は続いていますが、このペースでは絶望的です。つみたてNISA適格であっても、繰上償還リスクが心配になります。
評価:おすすめしません
リスクコントロール型は、配分変更が裏目に出た時のダメージが大きいです。リスクを抑えたいのであれば、自分のリスク許容度にあった、債券比率が高いバランスファンドを選択した方が良いと思います。資産配分が固定なら、暴落時の価格変動は大きくなったとしても、その後の回復は世界経済のありようそのままです。